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クラウドファンディングで5億円集めた男bambooさんの #CF勉強会 に参加してきました

クラウドファンディングどころか、エンターテイメント業界やクリエイションで何かやるための肝がぎゅーっと詰まった勉強会でした。

今回、私が参加してきたのは、渋谷CAMPFIRE本社にて6月1日に開催された「エンタメ系クラウドファンディングの使い方勉強会」の第一部と第二部。講師は美少女ゲームメーカー社長でもあり、ミュージシャンとしても活躍するbambooさん。

クラウドファンディングの予定はさっぱりないんですけど、勉強会の日程とたまたま別件で上京する機会が重なったことと、以前から「bambooさんのマーケティング術すごい」と思っていたこともあり、今回思い切って飛び込んできました。

詳しい実績などは以下参照で。ネット記事では「4億円を集めた」なんですが、勉強会の自己紹介では「5億円を集めた」になってました。一億上乗せ!

第一部:ゲーム&音楽業界向け講義内容

第一部では、基本的なクラウドファンディングについての知識と解説、過去に携わった実例を元にしたノウハウが主でした。

この回は事前に資料が配られましたが、パワポデータなのに60ページ超え。予め印刷して持っていこうと思ってたんですが、手にするととにかく分厚い……この資料だけでも既に勉強になること山の如し。これ、別途で新書とかにしてCAMPFIREで起案者全員に配った方がいいのでは。

この辺りについては、過去のインタビュー記事でも一部触れてるので、未読の方はまずこちらどうぞ。

仮に1億円集めても1200万円が差し引かれることを考慮する必要があります。「集めた額そのまま全部使えるんでしょ」って、たまに勘違いしている人もいるみたいですけど、いやいやそんな税法は日本にありませんよって。

プラットフォームのCAMPFIREの手数料も17%あるので累計29%、さらに成果物の送料と梱包費用を考えたら全体の4割ぐらいが手元に残らない。

つまり、制作費としてはプロジェクトで集まった金額の6割から7割しか使えません。その金額も試算した上で目標金額を設定して活用しないと、クラウドファンディングは詰むんですよ。
まめな活動報告も、進捗が遅れたときの説明も、すごく簡単な言い方をすると「誠実であるかどうか」なんですよ。

その上で、クラウドファンディングを成功に導くために必要な6つの要素が揃っているか。支援したくなる「ムード」、支援者であるパトロンへの十分な「メリット」、プロジェクト自体の「ロマン」、過程を魅力的に演出できる「ドラマ」、達成後も見越した計画的な「予算」、それらを第三者としてみて改善していくための「客観的な視点」。

約3時間にわたって、こういった基本情報を更に深く掘り下げ、実例を交えた解説いただきました。

基本になるのは、海外では寄付文化が発達しているので突飛な企画でも面白がってサクセスする可能性はあるが、日本ではなかなか難しく、代わりに「浪花節(=義理や人情を重んじる)にはお金を出す」という独自分析をもとに、どうやって支援者の心を動かすのか? こちらの熱意をどう伝えれば伝わるのか? という話をみっちりしていただきました。

それと「簡単にお金集めできるツールじゃねえから」ということも繰り返し強調されていましたね。準備や運用には相応の手間がかかり、ものによってはデメリットも生じうることから、普通に金融機関から融資を募る方が向いてるケースもあると。

これについては、後述する失敗したプロジェクト群でも準備不足・知識不足はもちろんのこと、既に一定の人気を得ている著名人主催のプロジェクトで失敗したものも数多くあることから、やれば集まる類のものではないとはひしひし感じます。

印象的だったのは「CAMPFIRE(をはじめとしたプラットフォーム群)のこの使い勝手が悪い」って話が出てくる出てくる。bambooさん自身、CAMPFIREの現役顧問であり、そもそもこの勉強会もCAMPFIREのオフィスでやってるため社員さんも多く参加されてる中で、です。

曰く「顧問をやる条件に、CAMPFIREの悪口いっていいことも含めた」とのこと。実際、CAMPFIREもまだまだ若い企業ということもあいまって、使う側としては実務に影響あるレベルで困ってることがあるんだろうなあとはひしひし感じる……。

そんな話も交えつつ、講義ではプロジェクト達成について熱い情熱を持つことと、それらを支える金銭管理や手間を惜しまないことについて、繰り返し重要性を語られていました。

関わったクラウドファンディングは9割がた成功させているbambooさんでも、その後のやりくりで赤字が出たり、炎上間近にもなった話も多数あったとのことで。

せっかく資金を集められても、計画内でそれを超える赤字を出せばクリエイション達成も危うくなるし、第三者からお金を預かる以上、炎上すればブランドイメージを傷つけることもあるわけで……それらを避けるためにはやり遂げる情熱と、誠実な応対、細やかな予算管理が肝であり、「これはやってよいこと。こっちはだめなこと」と具体例を交えて解説してもらいました。

詳しい話はもちろん勉強会に参加した方がいいんですが、こういう記事もしばしば公開されているので、興味ある方はまずこのあたりから参考にどうぞ。前に挙げた記事でも大事なことたくさんいうてはるで!

第二部:ブートキャンプ

第二部では、失敗プロジェクトへの実例レビューと、起案予定のある人を登壇させて実際にページを作成してみることに。

前半のレビュー対象は、マジで誰かが起案して失敗したプロジェクトの中から、選りすぐったプロジェクトページが講義の資料に。中には素人目にも「なんじゃこりゃ」というインパクトあるものも。

そんな失敗群ですが、大別すると「誰もほとんど支援しなかった」「支援はあったけど成功ラインに到達しなかった」があり、その失敗要因も様々。

「誰もほとんど支援しなかった」系は、サービス概要を知っただけの人がとりあえずお金が必要で立ち上げたものが多いのかなと。あと正直「何か別の詐欺に引っかかって、そのための資金集めなのでは……?」というものがあり、世間の闇を覗き見るような気持ちに。これ、プラットフォーム側も審査や啓蒙が今後必要になるやつでは……。

「支援はあったけど成功ラインに到達しなかった」系は、様々な失敗理由があって興味深かったです。これらは一定の支援者はみえるだけに、より実務的・複合的な失敗要因が集っていたように思います。

そして仮に失敗しても、要因や理由を見直せば次のプロジェクトに活かすこともできるし、最初の失敗は次のドラマになりうる。上手く使えば新しいプロジェクトに還元できる……というのは、今回教えてもらったノウハウのひとつです。

実際に、プロジェクト失敗から立ち上がった良い例としてたびたび触れていたのが、タニタのツインスティックプロジェクト。

当初は2億円という破格の達成額を設定しつつ、市場のニーズをつかんだプロジェクトを打ち立てるもあえなく失敗。しかしプロダクトや予算を見直し、2回目では4千万円、3回目では8千万を達成してプロジェクト成功というドラマチックな展開をみせました。

「支援はあったけど成功ラインに到達しなかった」系の話を聞いていると、「転び方が下手だと次もできない」もあるだろうなあ~と。失敗も見越して綺麗に転ぶことにも、起案者は向き合う必要があるのかなと。

後半戦では起案予定のある参加者に対して、即席のプロジェクトページを作っていくことに。

勝手ながら分別すると「まだ世間に知られてない」「すでに一定の実績があって顧客を抱えている」の2例です。基本姿勢は同じでも、概要説明に構造的な違いが出ていたのが興味深かったです。

あとこれ実質のキュレーションに相当するやつでは……めっちゃお得では……。

この第二部を通して、具体的なプロジェクトを前にbambooさんなりの改善点や「自分ならこうする」といった点が数多く聞けまして、インタビュー記事でもしばしば「CFには仕込みが大事」とおっしゃっていた中で「どの段階から、どういったものを仕込むのか」という話をたくさん聞けたのは収穫でしたね。

参加後の振り返り

第一部の途中で「優越感(あの人すごいになるリターン)と特別感(あの人だけずるいになるリターン)の違い」という解説があり、その実例として「コアメンバーと高額支援者だけが集まる会というリターンを企画したら、ファンの中で物議をかもして炎上しかけた=特別感を抱かせてしまった」という話がありまして。

話を聞いている分には「相応のお金を出した人にはそれくらい特別な機会があってもいいのでは?」と思ってたんですが、後から思い返してみて腑に落ちたところがありまして。

というのも、これが例えばアイドルや若手声優が核になってるプロジェクトで、ほんの数人の超高額支援金を出したファンだけが、当人らを囲んだ会を楽しめると考えたら……? と思うと、そりゃやべえなあと。

仮に、現実的ではない高額リターンだったりして誰も応募しなくても、めちゃくちゃガードを堅くしてスタッフもたくさんいる中での打ち上げ参加ですよ! みたいな内容だったとしても、自分がその人らのファンだったらやはりわずかながら企画者に対する不信感は抱いちゃうかも。

一方で、ゲームメーカーのクリエイターたちとプレイヤーが酒を飲む会だったとしたら、参加者の性別や年齢を問わずさほど問題にならないケースも多いのかなーと。

とはいえ直接会える系は強力なリターン手段だし、bambooさんも「使うとすれば三角形ではなく、台形にする」とのことでした。「数人だけの催し」じゃなくて、規模を広げて「最低でも百人だけの催し」にすることでヘイトを集めにくくするとのことでした。なるほどなあ。

もちろん詳細はどうだか第三者である自分にはわかりませんが、プロジェクトの性質によって機微は変わるし、常に想像力と客観性を働かせて見つめていく必要があるのだろうと思いました。

出会い編

ここからは個人的な思い出話です。

そもそも私がbambooさんを知ったのは、超A&G+で配信されていたラジオ番組「じゅうはちキン!自由ではちゃめちゃRockin' Radio」のパーソナリティとしてでした。

その後は主にアニソンアーティストとしてお世話になることが多かったんですが、決定的に印象が変わったのは鷲崎健さんのクラウドファンディングを担当されたこと。

鷲崎さんのラジオ番組でbambooさんのゲスト回を普通に聞いてたら、「わっしーのライブが見たいから一緒にやろう」「アルバム作ってそのライブをやる」「予算はクラウドファンディングを使う」とbambooさんが生放送の中で突然言い出しまして。番組後の決起ニコ生までリアルタイムで見てました。

数日後に本当にスタートしたと思ったら、なんと一晩で三千万円が集まりプロジェクト大成功。あれよあれよという間に数ヵ月後にはアルバムが作られ、最初の宣言どおりソロライブを開催。

その時に作られた一曲がこれ。

もうね、わたしこのMVが大好きで、特に辛いことあったら何度も見てるんです。もちろんアルバムも何度も聞き返してます。

また、プロジェクト成功からアルバム発売に至る数ヶ月の間に、鷲崎さん自身がラジオ番組内でちょいちょい経過に触れるんですね。その中で「ライブのスタッフが『長くこの仕事やってて、こんなに予算の心配がないなんて初めてですよ』といって取り組んでた」というエピソードを印象的に聞いていたのを覚えています。

たまたまプロジェクト起案から実施まで併走していただけの一リスナーでしたが、振り返ってみればこの勉強会で提示された構造に綺麗に乗っかっていたのだなあと、頭の中でつながってなにやら感動したのでした。

終わりに

めちゃくちゃためになったから、クラウドファンディングに興味ある人はもちろん、エンタメ業界で何かやりたい人は、次があるなら惜しまず参加した方がいいよ!