ライスコロッケ

私たち人類は約四百万年もの間、狩猟を行って空腹と戦ってきたのであり、定住し、農耕が始まったのは今からたった一万年前のこと。元来私たちの身体は脂質を燃焼するのに適してはいても、糖質を燃焼するのには適していない、云々。

近年の糖質制限ブームには目覚ましいものがある。飛ぶ鳥を落とし、生き馬の目を抜く勢いだ。猫も杓子も糖質制限。砂糖、炭水化物は悪の根源!全て駆逐されるに値するとでも言わんばかりだ。

とは言っても、巷のコンビニエンスストアからはパンもおにぎりもサンドイッチも、ブリトーもスナック菓子も消えてはいない。マクドナルドは相変わらず幅を効かせているし、街のパン屋からは相変わらずいい匂いが漂っている。むしろ、あの芳しい香りは平和の象徴とでも形容できるほど幸せに満ち溢れている。

そもそも私は生まれてたったの26年と少しなのに、農耕が始まってから今までの約一万年間を否定して良いものだろうかと言う話である。その一万年間で人類は糖質燃焼向けの身体に進化してはいないのだろうか。

兎にも角にも、炭水化物は美味しいのである。それに、炭水化物抜きの生活など、金がかかる。健康的な食事にかかる費用はエンゲル係数の高さとほぼ比例しており、我々庶民は懐と相談しながら、できる範囲内で健康的(と言われている)活動にいそしむより他ないのだ。

今回はこの糖質制限健康思考の真逆を地で行くようなレシピを紹介する。くれぐれも糖質制限中の者は以降を読まぬように。

ライスコロッケはその名の通り、ライスのコロッケである。ジャガイモの代わりにライスを使う。それだけだ。このライスコロッケの何よりも良いところは、余り物でできてしまうところと、人に作ると想像以上に喜ばれるところだ。

最低限必要なのは、ライス、ケチャップ、小麦粉、卵、パン粉くらいのものである。私はこれに、野菜室の余り野菜やクリームチーズを追加する。

ライスと炒め合わせる野菜はコンカッセ(みじん切り)にしておく。
フライパンにニンニクみじんとオリーブオイルを放り込み、いい香りがしてきたら具材やライスを炒める。ひき肉など、脂の多い肉などを加える場合はその脂で炒めると良い。

ケチャップで味をつけ、味を見ながら塩胡椒で整えよう。この時の味見は義務感からではなく、美味しそうだと思ってつまむこと。この時点で美味しくないものが、コロッケにすることで美味しくなる訳が、ない。是非とも美味しいケチャップライスを作ろう、という気概で臨んで欲しい。

出来上がったケチャップライスは、手で触れられるくらいになるまで冷ます。もう一度念入りに手も洗っておこう。

ケチャップライスを丸く形成するのだが、この時私はクリームチーズを中に埋め込む。クリームチーズでなくても、ブリーでもゴルゴンでもピザ用チーズでも何でも良い。何ならチーズでなくても構わないが、チーズが全面的にウケが良い。なぜかと言うと、酒のつまみにより適した味になるからだ。

全て形成し終えたら、小麦粉、卵、パン粉の順にまとわせて、油で揚げる。

中まで火を通す必要はないので、外側が綺麗なきつね色になったら取り出す。熱々を一口。チーズが床に垂れないように注意しよう。上顎の火傷はビールで冷やせば良い。冷えた赤ワインでも構わない。

熱々の一番美味しい頃合いは調理者がありがたくいただき、冷めないうちに誰かとシェアして食べる。ケチャップをカレー粉にしても良いかもしれない。外に持っていくなら、冷めても味が悪くならない具材を選ぶこと。

海辺でビール片手にかじるライスコロッケはまた格別なものである。
外で飲むのが美味しい季節になってきた。ビアガーデンなど、外で飲める施設は山ほどあるが、たまには自分で作ったものを外に持ち出して食べるなどすると、大変気分が良い。

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