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自治体の健康経営戦略の第一歩!「女性の健康課題」を知り職場環境を変える!藤枝市「働く女性の心とからだの応援ミーティング」の取組み

団体:藤枝市人事課 人材育成センター
担当:人事課 厚生担当係長(健康増進専門監) 藁科 仁美様

地方自治体における働き方改革が進み、各種制度が整備されてきました。しかし「育児休業取得率」「女性管理職比率」などは国内民間企業同様に男女で大きな差異が出ているのが現状です。その背景には、恒常的な長時間労働や男女における役割意識、組織・家庭内における日本の古くからの文化など
”目には見えない「壁」”が存在していると言われています。
そうした「壁」の一つ、「女性の健康課題」を知ることで取り除いていく、藤枝市の身近な取組をお聞きします。


藤枝市 働く女性の心とからだの応援ミーティングとは

藤枝市の現状について

藤枝市は、静岡県のほぼ中央に位置し、 北側には森林地帯が広がり、南側には大井川の一部が望める豊かな自然あふれる街です。 人口はおよそ14万人の静岡県の中核都市です。職員の女性比率は、正規職員:約4割、会計年度任用職員:約8割を占めており、女性が市政の中心として活躍しています。

健康経営戦略として令和5年度から取り組む新規事業

本事業は、これまで取り組んできた職員のワークエンゲージメント向上等を目指す施策に加え、女性の不安要素や生産性を阻害する要因となる、”女性ホルモンに起因するライフステージ特有の健康課題”に着目した新規事業として人事課、人財育成センターと連携して実施をされています。

事業の設計 ~古くて新しい「女性の健康課題」を丁寧に取り扱う~

ー事業実施の背景を教えてください

 女性は思春期(初経)から更年期(閉経)までの約40年間、女性ホルモンに揺さぶられながら生き、そのライフステージによって健康課題が変化していきます。そのため年代を「若手」「中堅」と分けて実施することで同じ立場、状況を共有・共感することをねらい設計しました。
 当初男性上司を想定して「管理職対象編」を計画し、相談しやすい環境づくりを狙ったが、募集をしてみると「私も参加したい」という女性管理職の熱い希望を受け、管理職編は男女の区別なく受け入れて実施しました。

 また、企業(研修会社)講師の依頼ではなく、この事業終了後にも個別に相談もできる身近な存在であること、また企画趣旨に賛同し継続的に関わっていただく方として、市内で助産院を開業している身近な助産師に依頼。 企画の段階から本市人財育成センターとともに協働して実施しています。

 研修の手法として、大人数に対して知識を付与するような手法も可能ではあるものの、少しずつでもいいので「女性の健康課題」について、当事者やアンテナの高い職員が参加し、庁内での「行動変容」につなげていくため、希望性・少人数の実施としました。

募集方法も各参加者に当事者意識を持ってもらえるように工夫

ー実施したミーティングの概要を教えてください

【20~30代女性対象】生理や妊娠・出産にかかる健康課題を知る

女性ホルモンの働きに関する基礎知識や月経前症候群・月経困難症など女性特有の疾患を知り、女性の健康と仕事、生活について、悩みや大事にしていることを共有しました。

【40~50代女性対象】ホルモンの変化と更年期症状・障害の対処法

40~50代になると女性ホルモンの働きにまた変化が訪れます。更年期特有の症状やその対処方法、女性特有の疾患について知り、職員同士が健康・職場や家庭での役割、今後の自分自身をどうケアしていきたいかを共有しました。

【管理職対象】女性の健康課題を知りマネジメントへ活かす

女性ホルモンの働きと変化、月経前症候群・月経困難症、 更年期症状・障害、女性特有の疾患の知識・不妊治療等を知り、管理監督職として、どう職場の女性職員や事業推進のマネジメントへ活かしていくかについて考えていただいた。

ミーティングのご様子

予想以上!反響の数々!

ー実際に参加された職員の皆様の反応はいかがでしたか?

女性職員の反応では、

同世代の声を聴く中で「私だけではなかった!」と共感する一方、症状には個人差があること、心とからだの不調には女性ホルモンの揺らぎが関係することに気付くことができたという意見が多く見られました。

20代・30代の女性職員は、日頃から健康を話題にすることが少なかったことに気付き、 「私のからだは頑張っている。もっと自分を大切にしたい」「基礎体温の記録から始めたい」「がん検診を受けよう」などの前向きな発言につながっていました。
40代・50代の女性職員からは、「若い世代にぜひ受講して欲しい」と言う声も多数あり、積極的に20代・30代、そして管理職の参加を促してくれていました。

男性職員(主に管理職)の反応としては、

受講動機に「女性への理解や配慮に疎かったことを反省し、まず知ることから始め、理解して配慮できるようになりたい」「定期的に集中力が落ちミスが目立つ女性職員への配慮の仕方を学びたい」「辛いと相談されても自身の対応能力がまだ低い」「妻に起きていることを理解したい」など、かなり具体的な反応がありました。受講後はまだまだ参加者で意識のバラつきはあるものの、理解すること、環境を整えようという気概が伺えました。

知ること・理解することから「行動」に向けて

ーご担当として、こういった「女性の健康課題」に取り組まれたご感想を教えてください

 「女性特有の健康課題」は当事者である女性職員においても意識や症状も個人差が大きく、男性職員にとってはほぼ学ぶ機会がないのが現状です。そうした中で、知識として、女性自身がライフステージに合わせた女性特有の健康課題を知り、性別を問わず共に働く職員が女性の特性を理解しようとする機運を高めてきました。
 それだけでなく、女性職員はもとより周囲の人・組織が積極的に働きかけ、環境を整えようと行動していく人・組織を継続的に拡大していくことを目指し取り組んでいる事業になります。

女性に特化した健康課題への対応として必要な視点として、これからも下記の視点を持ち事業を進めていきたいと感じています。
当事者である女性職員が健康課題について理解し、
 職場においてきちんと自ら自分の状況を周囲に伝える力を付けること
同僚や上司はまず傾聴し、すぐにわからなくても理解しようと
 努めること、そしてそこから配慮の環境や風土を作っていくこと

管理職や男性職員など幅広い職員が参加したことの気付きとして、
 女性は誰でも更年期を迎えるが、約6割の人に明らかな症状が現れ、3割弱が日常生活に支障をきたすほど大変で治療が必要になると言われ、月経前困難症や月経痛も個人により症状は様々です。
 そのため、女性の間でも共感的理解ができず、理解や配慮に行きつかない場合があることも確認ができました。
 男性もライフステージに合わせた研修の実施を望む声が聞け、疑問や思いを発言し合い、もっと深堀りしたいという希望があることが分かりました。

職員全員が自身のヘルスリテラシーを高めるために

※ヘルスリテラシー(健康や医療に対する正しい情報を入手し、理解して活用する能力)

ー最後に、これからの活動についてお聞きかせください

 自分自身も含めて、庁内で活躍している職員はある意味、心も体もそれなりに元気でここまで生き残ってくることができた人が多いのが現状だと感じます。しかしこれからは、仕事も家庭も子育ても、さらには親の介護、自分の健康課題等々、多くの事柄と向き合いながら働く職員が増えてくると考えています。
 女性の活躍推進といっても「仕事」だけでなく「健康課題」といった点にもきちんと目を向け、それをきっかけに職員全員がヘルスリテラシーを高め、対話を続けることで、良質な職場環境(=文化)づくりを行なっていきたいです。

 そうした中で、今後も職員一人ひとりの思いや生き方に丁寧に寄り添い、キャリア形成を支援する組織的活動としていきたいと考えています。

厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」より抜粋

インタビューを通じて ~「連携」は外部だけではない~

 今回インタビューを通じて、女性の活躍推進ということを表面上で行うだけでない、職員一人ひとりに寄り添った丁寧な施策の取組みをお伺いしました。また「連携」についても、「庁内での連携(人事課・人財育成センター)」「地域の助産師」「参加者」とが上手く相乗効果を発揮している持続可能な連携をされている点も非常に印象に残りました。
 決して大きな予算を使うだけでなく、庁内・地域の様々な力を結集し丁寧な設計をすることで、藤枝市ならではの事業になると感じました。厚生労働省の推奨する取組みを見てもすべての要素が組み込まれているような施策だと感じました。
 女性の健康課題が少しずつ、「組織の課題」として扱われ始めています。こうした持続可能な取組みが、多くの行政、そして企業・団体でも取り組まれていくととても素晴らしいと感じました。

 藤枝市 藁科さま、ご協力をいただき誠にありがとうございました!

(担当:柴田)

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