京アニ事件を通して見る「個人の実績」

先程警察から、京アニ被害者の中でご遺族の理解が得られた方々の氏名が公表された。同時にこれまで生死が不明という中でひとすじの希望を握りしめていた者たちから嗚咽が溢れ、わたしのタイムラインを濡らしている。

正直に言うと、今回の一連の事件発生を起点として、その先の寄付や支援、挙げられる声に違和感を覚えたので、わたしなりの整理を付けたくて炎上覚悟でnoteに綴る事にした。

簡略化

京アニという一つの企業がターゲットとなり、アニメーションという作品の制作陣が被害に遭った。極端に簡略化してしまえば、組織と構成員の関係と言える。
これまで大量殺人事件はいくつか有ったが、京アニほどの支援活動には至っていない。もちろん人数的な点では京アニがトップだし、計画的放火殺人という凶悪性もある。しかし、1組織という単位で見たときに、なぜこれほどまでにカバーされる存在だったのかという部分が謎だった。

我々一般人もなにかの組織に属していることがほとんどだし、クリエイター業でなくても大小様々なソリューションを開発する職業なんていくらでもある。冒頭で書いた違和感とはこれの事で、一般社会の中でもアニメーション業界がこうして特別な存在なのは、一体何がキーポイントになっているのだろうか?

個人技の集大成

結論を言うと魅力のある個人の集合体だからだ。正確には「多数の人が制作陣内の個人の能力の高さを知っている」というのがおそらくキーなのではないかと仮説を立てたい。

あのデカいビルを立てた人たちを知っているか?
この道路を引いた人たちを知っているか?
その決済システムを作った人たちを知っているか?
君が着てるTシャツのデザインしたのは誰?

おそらく、その道のプロではない一般消費者は誰も知らないし、たとえファンであっても調べ上げるのは難しい領域のはずだ。
だがアニメーションは違う。一般消費者でもそのファンなら声優はもちろん監督はおろか原画マンの名まで知っている。話の進み方で脚本家まで分かる。
あと、いくつか同じように思いつく業界がある。ゲームと映画、TV番組だ。
監督の名が分かり、脚本家が分かり、俳優がわかる…。

これらは何が共通しているのかと言うと、なによりスタッフロールがあることに尽きる。誰が何を担当したのかがいち消費者に分かるようになっている。

まとまってないけどまとめ

アニメほどの巨大文化とまでは至っていない我々一般社会で製造されているものだって実は素晴らしいものはたくさんある。こうした、スタッフロールのような生産者がわかるシステムというのは、おそらくこの先必要になってくる。その人が何を作ってきた人なのか。「あー!アレ作った人なんだ!」となると美味しい。

しかし、今現在は仕事で作ったものは基本的に口外無用。弊社としての実績は出せても個人としての実績はなかなか話せる機会はないのが実情だ。転職時のポートフォリオにだって入れられないから困る。

終身雇用自体が終身しはじめ、フレキシブルに会社を渡り歩くようなスタイルが増えてくるにつれ、こうした個人の実績というのがきちんと出せる土壌というのが必要になるはずだ。

少なくとも今現在エンタメに属しているVtuber界隈であれば、スタッフの名前を出しても不思議ではない。音響、映像編集、台本等々、それらに注目し機会があれば教えを請いたい人もいるだろう。ぜひ一歩踏み出してはくれまいか。

スタープレイヤー

シャペコエンセ」をご存じだろうか。サッカー好きなら2016年に起きたラミア航空2933便墜落事故が記憶に新しいところだろう。シャペコエンセはブラジルセリエAのクラブチームで、この墜落事故で元Jリーガーを含む71人が犠牲となった。この時もファン、チーム、その他ウィニングイレブン販売元のナムコなど世界中から哀悼の意と義援金が集まった。

京アニを始めとした国内トップアニメーターは、我々アニメオタクにとってはトップリーグのサッカー選手のようなスタープレイヤーに近いと言ったほうが近い。チームという組織の中で各人が与えられたポジションで全力を尽くしている。

京アニの皆様。
お亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げます。また、怪我をされた方が一日も早く回復されますようお祈りしております。
今回被害に遭われた方々を始め、京都アニメーションは間違いなく日本を代表するトップスターチームで、そこで活躍している従業員もまたトップスター選手です。今回の事件で多くのスター選手を失ってしまいましたが、先述のシャペコエンセは事故で選手とスタッフのほとんどを失いながら翌年奇跡の復活を果たし、チーム最高位のセリエA8位を勝ち取りました。
京都アニメーションには全世界にサポーターがおります。前途多難かとは思いますが、少しずつでも前を向いて前進してください。微力ながらわたしも応援致します。

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