Live2Dの未来(作業的な面で)

また、長くなってしまいそうなので結論から書いてしまおうと思う。
絵が描けなくとも個人でLive2Dモデラーとして活動できる未来が来る。

なぜいきなりそんなことを?

Live2Dがマーケティングデザイナーを募集、その説明会に参加してみたのだ。そこで時間めいいっぱい主張してきたが、まだ言い足りないのだ。

思うところの発端はこちらのツイート。

そして、もう一つそれに反応したイラストレーターさんがこちら

成果物として全統合された画像を納品するのが常であるイラストレーターにとって、編集可能データというのは自己を守る財産であって、それを最悪剽窃や改変の可能性もある状態を晒して他人にイジられたくないというのは著作人格権的にも至極まっとうだし当然である。

一方でわたしのような雇われデザイナーの場合だと、基本的に編集データは共有するものだという意識がベースにある。これはクライアントの契約先が会社であってデザイナー個人ではないことから来るもので、社員の休日や病欠などの場合に別の人間が対応できるようにするための危機回避策でもあるし、ロゴなどは名刺やウェブサイトなどの多方面に使ってこそ意味のあるものであり、チラシとウェブの意匠を合わせるのも戦略的に都合がいいのだ。また、編集可能データを残すだけではなく、構造をルール化したりなど複数人で扱うことを前提に標準化するのが定石になる。

ソフトウェアのように納品された画像を組み込んでおしまいであればいいのだが、イラストレーター等に比較的近い広告業からするとこの差が作業に影響してしまうことが多々あって、例えばクライアントが自社ロゴデータなのにJPGしか持ってなかったり、冊子PDFデータが全部アウトライン化されていたりと、再利用しづらい場合がやたらめったら多いのでトレース作業や目視タイピングなど当たり前に要求される。もちろん製作者側の気持ちもわかるので一応提供をお願いして断られたら渋々やるのだ。(費用割増しながら)

Live2Dとは

Live2Dというのは、静止画をグネグネ動かすツールである。一枚絵でもイイが、レイヤー分けされているとパーツごとにグリグリ動かすことが出来るので、キャラクターなどを動かす時は目や口、輪郭など細かくレイヤー分けしたデータを使って動きをつける。今回の説明会では学生向け無償ライセンスを発行していたり、一部専門学校では必修科目として採用されているなど、モデラー育成に余念がないことがわかった。それに加えてソシャゲや各種動画表現として動くイラストそのものの需要というのも確認できた。
また、Live2D自体にはそのベースになるイラストを描く機能はない。つまり、Live2Dはあくまで二次加工ツールであり、イラストレーターが米農家ならLive2Dは炊飯器なのだ。

さて、現状個人でLive2Dモデル制作をしているのは圧倒的にイラストレーター本人であることが多い。これはLive2Dで動いている状態のグラフィックという新しい形のイラストレーションとも言える一方で、細かく制御するには編集可能データが必要という、個人イラストレーターにとっては「自分でやるっきゃねぇじゃん!」という米農家が中心になって米を炊いている状態も一因としてあると考えている。とはいっても、Live2Dの習得は決して楽ではない。

一方でわたしのように「絵は描けないけどLive2Dでぐりぐりできる」という水田を持ってない和食料理屋のような存在も居る。先述の通り、専門学校でLive2Dモデリングを教えているとなれば、描くよりも動かすほうが向いているという人も今後増えていくだろう。

このチグハグな二者を繋いで米文化を広めて行こうと考えたときに壁になるのが、編集可能データに対する意識なのではないか?

もうちょっと精査してみると見えてくる

制作したデータを他人がいじる場合、イラストレーターが最も嫌がる事はなにかを考えると「別物にされる」が筆頭に上がるだろうか…。色を変える、書き換えられる、すげ替えられるなど意図していない改変が起こされたときに暴力にほど近いダメージを受けると思われる。

ところがLive2D側が要求する編集可能な「状態」とは何かと言うと、ぶっちゃけレイヤー分けのみである。調色も要らないし、データに入っていないデータは使わないからだ。もちろん解像度も必要な分さえあれば普段イラストレーターが描いている6000pxクラスのキャンバスなど要らない。

となれば、イラストレーターとモデラーの間でやり取りするファイルに求められるのは「レイヤー分けされた低解像度半統合データ」であって、ラスタライズやスタイライズされる前の状態が残っている巨大psdファイルは疑心暗鬼になるだけの無用の長物になる。

具体的には?

実際の所そこはLive2Dプログラマー陣の仕事なわけだが、個人的に思い当たるのがpngファイル

あなたは覚えているだろうか。Adobeに食われたMacromedia Fireworksを…。

Fireworksでは編集可能データとしてpngを使っていた。普段ウェブで見かけるあのpngである。pngの中でレイヤー構造はもちろん、レイヤーオプションどころかパスデータまで取り扱っていたのだ。当然ファイルサイズはレイヤーが重なれば重なるほど重くなるのだが、ブラウザやメーラーなどでそのまま画像として展開されるし、Brigeとかいうわけわからん糞重いアプリを使わなくてもエクスプローラー上でアイコンとしてサムネイルが表示されるスグレモノ。

例えば、グループを1レイヤーとして多グループのレイヤー構造化して、指定解像度に落としたpngファイルを吐くPhotoshopプラグインを開発して、そのpngをLive2D側でインポートできるようになればどうだろうか?まぁ多分穴は有るけど。

他にも、イラストレーターがされたくない事をカバーしたまま、モデラーが作りやすい構造を維持したファイル構造の方法があると思う。
そうすればイラストレーターからLive2Dが独立して二次産業として成立するので、Live2Dモデラーという職業が成り立つと考えられるのだ。

よって、
絵が描けなくとも個人でLive2Dモデラーとして活動できる未来が来る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?