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東京・滋賀まんぷく日記 65-66/369

 ウィーンに戻って数日経ち、面白い話も聞いたし本も読んだのだが、先に貯まっている分の日記を書かなければと思ってしまう。この日記を誰かが継続的に読んでいるとも思えないし、そんなことにこだわってるの自分だけだろうというのも分かっているのだが、一度はじめた習慣ということで……。

 東京後半戦はある媒体の取材からで、政治に関わることと「わがまま」、という内容だった。ご取材の中で(どれほど書いていいものかわからないが)興味深かったのが、記者の方もまた「個人」であることを求められる場面というかメディアの特質があって、発信することに伴う消耗感や負担感が確実に強くなっているという話、本の中で「アクティヴィストトラウマサポート」という団体を紹介したが、記者の方向けのカウンセリング機関みたいなものも必要なんじゃないかという編集者さんのお話だった。「社会運動」研究の知見はいろいろなところで使えることが取材をいただく中で分かってきたけど、「社会運動家」研究に関しても(アクティヴィストトラウマサポートのこととか)使えるものがあるかもしれない。
 ちなみに、「今日、オフィスにドラマの取材が入っているんですよ。(主役の)反町くんはいないんですけどね」と言われてつい「言いたいことも言えないこんな世の中ですねえ」と返してしまった(何を言っているかわからない若者は近所の大人に聞いてくれ)。多分私以外にも同様のことを言う人がいるんだろうなとなんとなく思った。

 その後はテレビ番組の収録で、「芸能人の政治的発言」という主題で、ゼミの研究をご参照くださったディレクターの方から連絡があり、ゼミを代表して(?)参加したが、興味深かった。どれほど書いていいのかわからないが、芸能人の方の「芸」を間近で見た感じ。雑誌や新聞、ウェブの対談やインタビューは後から編集者さんや記者さんが編集してくれる。もちろんそれはテレビも同じで、後ほど編集してもらう前提だが、それに加えて自然さというかお話感も必要になってくるわけで、予めそれなりに整ったインタビューや対談を早回しして実行する印象だ。作り手、演じ手それぞれの方にとって、言えることと言えないことがあって、それでもそのしがらみの中で言いたいことを言う、その難しさや工夫もあるんだろうと感じた。
 収録ともろもろで合わせて二時間ほどだったのだが、慣れないことをしたせいかホテルに着いてすぐに眠ってしまう。なにより、ゼミ生が自分たちのやっていることに社会的な意義があると喜んでくれたのが本当に良かった。上田晋也のサタデージャーナルという番組で、明日放送だそうです。

 翌日はある新聞社さんの取材で、これも「わがまま」入門についてだが、どちらかというと筆者にフォーカスをあてたものだったので緊張した。自分の答え方でよかったのかどうか不安だ(不安ばっかりだ)。私が長く過ごした地域の媒体で、これを読んだ誰かが私のことを思い出してくれればいいと思ってお受けした。実際どうなるかはわからないが、誰かがすこしでも思い出してくれればきっと嬉しいだろう。もう戻ることもないような気がするが、なんとかつながる方法があればと思ってはじめた研究でもある。
 帰りにどうしてもステーキを食べたくて偶然入ったお店がランチなのに8000円くらいして、でも席についちゃったし引き返すのも店員さんに悪いしなと思って払って食べて、緊張で味がしなかった。みんな領収書をもらっていたから自分のお金で食べるお店ではなかったのかもしれない。私も悪いと思って領収書もらったけど、多分何にもならない。虚しさが増すだけ。

 KITTEにある郵便局から民間助成申請の書類を出して、学会のある滋賀に向かう。もう最後の砦で、応募と論文投稿だけは何があってもちゃっかりやる。結果は知らないが。学会大会は明日からだが、「前夜祭」と称した飲み会に参加させてもらって、実務家の方や隣接分野の研究者の方の興味深いお話を聞く。ご心配をおかけして、もっと体調を万全にしていけばよかった。写真は差し入れのケーキです。

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