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ウィーンまんぷく日記 45-46/369

 朝起きてドイツ語の個人指導に行ったのだが、不思議な体験だった。まだかなり基礎なので、学部の講義と院試の勉強を思い出し思い出し話していて、宿題もしなくてはならないし覚えなくてはならないことも山積みなんだが、覚えた内容や話せた内容以上になんというか「安心した」。
 昔、占い師にハマる人の話を人づてに聞いたことがある。その人曰く「お金を払ってこんなに人の話を聞いてくれるのって占い師くらい」ということだったと思うのだが、それに似たような効用が得られた気がする。学生さん相手に話すのは権力関係が生じてしまって厳しい。同僚にも仕事相手にも当たり前に気を使う。じゃあ友達や家族に話すか。それだって躊躇してしまうことがある。ここではそれを母語以外でやらなければならないのだから、私の遅いスピードに時間を割かせるのも、間違っている単語を直させるのも悪い。だから、遅くても間違っていても話を聞いてくれる人というだけでありがたい。

 個人指導を終えた後は、アクティビストの方に教えてもらった自治会のイベントに行った。野外では自転車の修理ワークショップやお菓子・ご飯の提供を行っていて、のんびりとした雰囲気。室内ではいくつか学習会を開催するというので屋内のワークショップスペースに行ってみた。こういうところにビラとかポスターが貼ってあるのは結構いろんな大学でよく見るが落書きまでしてあるのははじめてだ。自由だなあ。アナキスト・アウトノミストあるあるだと思うがなかなかワークショップなどは開始時間に始まらない。
 とこういうとき、まったり待てるような感覚を持てるかどうか、というのが、まずアクティビストになれるか否かにかかわってると思う時がある。日本のイベントはそんな遅れないが、たしか台湾とオランダでイベントが遅れに遅れて、「これはちょっと...」と思って途中で離脱したことがあった。それは多分アクティビスト的に言えばビジネス的な身体で、よろしくないのだろうと思いつつ、多くの人は「時間を無駄にしたくない」(もちろんこの「無駄」という感性自体が運動にとってよくないとは分かっているが)と考える、だから待つことにも退屈することにも慣れていないし、社会運動的なイベントにはあまり合わないということになる。だいたい周囲を見てもまったりしている人はすでにアクティビスト友達とだべっていたりするので、そこに一人参加で加わるのは至難の業だ(私も、オランダでも台湾でも友達と一緒に参加した。それでもちょっと長いなと思って離脱した)。そうなると興味があっても足が遠のいてしまうことはあるのかもしれない。
 そういうようなことを考えながら帰って、新しくできたという新刊の販促用ポップについて編集者さんにお礼を書いたりした。これも多分私は直接目にすることがないと思うんだけど、ありがたいです。

 土曜日(きょう)は、たまっていたメールに返信をして、ぼんやり「空耳アワー」のまとめをネットで観ていた。自炊もしなかったし、ろくに本も読んでいない。いかにもダルい休日って感じ。おやつも、虫歯が気になってフェタチーズと蜂の巣をまぜたものしか食べなかったし。
 夜はお誘い頂いて、ウィーンにいらっしゃる日本人の方々との飲み会に参加してきたが、あまり元気がなく、お話についていけず申し訳なかった。

 朝日新聞デジタル(&M)で短期集中お悩み相談企画をやってたのですが、その最終回が更新されたので最後にひっそり宣伝します。悩み相談というテキスト特有の面白さというか、お悩みにお答えするということは、当然目の前にその方はいらっしゃらないわけで、それでも現実には絶対存在するわけですが、そういう人に想像をめぐらせながら、会話のようで会話でないテキストを作っていく必要があって、その過程がこの仕事の面白いところだと感じました。もしよければ読んでみてください。


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