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ウィーンまんぷく日記 49-50/369

 さすがにベルリンの報告準備を始めなきゃと思って、ここに来てから読んだ論文をまとめる。同時並行で論文も書けばスムーズなので、ワードを直しながらパワーポイントのプレゼンテーションを作る。あまり詳しいことを書いても退屈だと思うので書かないが、「社会運動論」ともうひとつ「◯◯論」を組み合わせた感じの論文にするんだけど、書いているうちに「社会運動論」の色彩を強めたほうがいいのかなと思ったりした。
 多分査読の方もこれでいいところまで行くと思うけど、でも「これを通してどうするか」ということも(取らぬ狸の皮算用ながら)考えるようになってきた。社会運動論みたいな木があって、その枝の枝くらいに貢献できたとして、この潮流ごと社会運動論の本筋に戻すにはどうしたらいいんだとか。多分、そこまできてはじめて、「社会運動論」ではなく「社会学」のジャーナルに載れるようなものになると思うんだけど、そこまででかい仕事が自分にはできないと思うし、前途多難だ。
 Web調査の分析結果もそろそろ出さねばと思う。こっちは24日の名古屋の報告に持ち越しかなあ。飛行機ではまた眠れない時間が続きそう、去年の「わがまま」くらいいいアイディアが出てくれると良いと思うけど。とりあえず骨組みが決まったところで帰って、鶏肉のしょうゆ煮を食べながら、同僚から貸してもらった「彼女の人生は間違いじゃない」という映画の前半を観た。苦しいけれどいい映画だ。

 昨日も寒かったけど、今日もすごく寒い。7度だって……。ドイツ語の教室に行って、いろんな冠詞について教えてもらった。だんだん複雑味が増してきて混乱してきた。数字も地味に難しいんだよな……。英語だって超できないのに、第二外国語できる人とか尊敬してしまう。社会運動の研究をしているという話と、オーストリアの社会運動事情、政権の批判などの話になった。
 お昼は、昨年の滞在でお部屋をお貸しいただいたりとご支援いただいたSさんとウィーン応用美術館内のレストランでお昼ご飯をごちそうになり、ここでもまた社会運動や政党の話になる。特に私が見たほうがいい活動として、学生の社会運動として #Fridayforfuture の活動を挙げてくださっていた。確かに、まだ見たことがなかった!ぜひ実際に見てみよう。Sさんはウィーン大学で政治学を学ばれていたので、政治学がリベラルだという事情についても聞いてみる。そもそも近隣の大国のように官僚も多くなく、政治エリートになるような道が安定して開かれているようなわけではないため、そこまでエリート意識が強くならないからではと言われた。リベラル・ラディカルな政党に関しては、SPÖが非常に強くて、緑の党も以前まで強かったと聞いていたけど、共産党はそうでもないのですね、と質問したら、社会福祉がわりに早く拡充されたので、革命というか、労使で対立するという感覚が薄いほうなのではというようなことを仰っていた。それは日本の社会運動などでもよく言われたことだと思う。
 そんなSさんは市議会議員として活動されてもいたので、政治家としての生活についても話した。いろいろ印象的だったが、最も印象的なお話の一つに「政治家はなることより、辞めることのほうがずっと難しい。元政治家であること特有のキャリアの難しさがある」というお話だった。私がお世話になっていた方もよくそんなことを仰っていた(そしてその言葉が今の私の研究の問題意識を形作っている一つだと思う)からか、記憶に残った。昨年私が滞在した奨励金は、SさんとSさんの御尊父の名前を冠したものだが「いつの間にか父よりもあなたのほうがウィーンに長く滞在しているのは不思議な気がするね」と言われて、またお会いする約束をして別れた。
 映画のお礼に、同僚にマカロンを買って大学に戻り、毎日新聞の連載しめきりがそろそろなので書きはじめる。あまりに寒いので早めに家に帰り、スーパーで見つけたわさびでソースを作ってステーキを食べた。桃も出てきはじめた(家主さんいわくスペイン産で、まだ相当早いものらしい)ので、フレッシュチーズと蜂の巣と和えて食べた。これ美味しいのでおすすめです。写真はウィーン応用美術館のロビーです。

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