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ベルリンまんぷく日記 54-56/369

 週末から週のはじめにかけては、ベルリン自由大学にご招待頂いてお話をしてきた。いまハマってる領域のレビューと日本の社会運動調査について、ここのところ書いたり消したり押したり引いたりしてさらにわけがわからなくなっている論文の話をするため、前日はずっとホテルでプレゼンテーションを作る。
 不安が強くなると、部分部分は何度か話していることにもかかわらず「そもそもこの英語通じるのか?」ということすら怖くなってきて(日本研究の先生もいらっしゃるから、いざとなったら日本語で話してもいいのかもしれないけど)、直前にもかかわらずまたプレゼンをネイティブチェックに出したり、やたらと何度も練習を繰り返すようになる。海外でご招待いただいてお話するときは(といっても、年に一度くらいしかないけど......)とくにそれが強くなる。なんかいっつも不安で心配だ。研究がうまくいってないぶん、他の要素にもそれが波及しているような気がしてしまう。見えない虫を追いかけているようなきりのなさがある。

 本番当日は、ありがたいご質問をいろいろいただいた。日本学の方が多くいらしていたこともあり、分析枠組みだけでなく事例のディティール(比較的な観点が強くて、それもありがたかった)の議論もあった。じつはこのあと名古屋でお話したこととも多少かぶるんだけど、研究対象というか調査対象をどう定めるかという話を考えていた。先行研究などをみてると、組織の所属者と定義するのが一番いいのかもしれないけど、そもそも対象が組織じゃないんですよっていう視点を強めにすると、あとは特性とか属性推しになってしまう。そうなると説明を何段階か重ねるようにしなければうまく通じなくなってくる。ここはプレゼンだから(そして英語ができない)というのもあって、論文でもっときっちり書けばいいのかもしれないけど。だから、お手本になるような論文をもっと探そうと思う。いつまでもぐるぐるしてないで、とりあえずどこかで見切りをつけて論文を完成させて査読を受けないといけないのもある。
 その後は社会運動論の授業にゲストで出させてもらった。ドイツの学生さんにとっての社会運動を知ることができるこれまた有難い機会であったが、センシティブになるあまり(学生さんに対して政治にかかわる経験を聞くことがセンシティブと思うこと自体すごく日本しぐさを内面化しているな)どこまで聞いていいもんかわからず、遠慮してしまって社会運動経験くらいしか聞けなかったのは残念だった。その後は飲み会で、欧州議会選挙やオーストリアで起こった汚職の話などをする。
 飲み会の後、ポスドクでこちらにいらしている方のご研究のお話をじっくり伺えたのも楽しかった。そういう話をしたり、先生方から質問を頂いたりすると、不安とか心配はとりあえず忘れられるので、とてもありがたい。

 あとはベルリン自由大学の雰囲気も良かった。といっても、ほとんど大学内のホテルの部屋にいたんだけど。ホテルのジムでラジオ体操してたら、掃除のお姉さんに「どういうダンス?」と訊かれて、あまりナショナリズムに陥るのもいやなので他に良い言い方はないかと考えて口に出たのが「村上春樹の小説に出てくるのですが」という説明で、なんかラジオ体操が村上春樹の考えたダンスみたくなってしまった(てっきり無料サービスかと思ってラジオ体操だけして帰ったのだが、実はジムは有料だった。なんかやればよかったと後悔した......)。
 ウィーン大学はとにかく都心にあって、洗練されているというかきれいでいようとする。京都の真ん中っぽい雰囲気だが、ベルリン自由大学は郊外にあり、ひろびろとして(いい意味で)大味なところがあって好きだと思った。準備をしているときも、外で草刈機がうるさく、気候のせいもあって、長く過ごした札幌の郊外をやたらと思い出していた。空港からタクシーで向かう道は大学時代の友人とのドライブのようだった。
 なんか虫歯っぽい感じがするのでスイーツ食べるの控えてたんだけど、ご当地グルメはどうしても気になるので、ポテトパンケーキだけ食べてみた。カリカリして美味しいけど、ご想像どおり、あんまり甘くはないです!ハッシュドポテトみたいな感じかな。


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