バブルヘッド人形を5万円で売る男

思うんですけど、携帯を横にして持っている奴が熱心に何かを打ち込んでいるとしたら、そいつはまず間違いなくゲームをしていると思われるはずですよね。しかし僕はというと、アルファベットをぴこぴこ打って、自分の頭のなかから文字を外へとひねりだしています。

いま僕は帰りの電車を待つプラットホームに立っていて、黒いダウンに、黒い靴。黒いバックという、とにかく黒い出で立ちでアスファルトに両脚で立っています。なんかまた全然役に立たないこと言いそうですよね。あたりです。

今日僕は全然この世界のだれのためにもならない、どうしようもない――そうだな。あなたのクローゼットの中にあるもう三年くらい着てないやたら派手なカーディガンみたいな文章を書きたいんです。だっていつも世間の役に立つこと、学びがあることを言うなんて、ひととして変ですよ。

人間として、僕はそういうことはできないですね。だから今日はここで好き勝手なことを書きます。そうしたい気分なんです。

いま僕は仕事の最中なんです。え? どんな仕事かって、それはひとを追いかける仕事です。そう、探偵業です。まだ言ってませんでしたけど、僕は副業で探偵もやってます。コピーライターの仕事だけでは半額になった刺身にしか手が出ないんでね。しかもあのカサ増しされて、大根のツマしか入ってないヤツ。え? 嘘つくなって。嘘じゃありません。



彼です。彼を追いかけているんです。彼はロシア人みたいな顔をしてますが、FBIの中では、ただ整形してるだけってばれてます。



そうなんです。僕はじつはFBI日本市局の外注を受けて彼を追っているんです。ほんとに。彼が何をしたかって? もうメチャクチャなことをしてくれました。簡単に言うと、彼はバブルヘッド人形を日本に持ち込んでいるんです。ええ。バブルヘッドです。



イチロー、松井、野茂。彼らのバブルヘッドをアメリカで買い付けてきて、それを5万とか6万とかでメルカリで売ってるんです。いや参りました。そんな海を越えた転売ヤーがこの東海地区にいらっしゃるとは。

僕はこの彼の悪行。普通なら3千円のバブルヘッド人形を5万円で売るという鬼畜めいた行動を止めないと行けない。なんなら銃で彼をバブルヘッド人形ごと撃ち抜かないといけないかもしれない。でも誰かはやらなきゃね。この国から転売を一掃するためには、誰かが汚い仕事をしなきゃならないんです。




まずいですね。いま標的はヴィレッジ・ヴァンガードに来てます。



なんだかゼルダの冒険にでてくるリンクのフィギュアを見たりしてます。あ、ほらやった。いま店員が「裏へ来てくれ」って顔で(髪の毛が半分金髪の中年男性です)、ほらほら裏に入って行きます。そこでこのヴィレッジ・ヴァンガードに輸入してきたバブルヘッドを流してるんだ。

なるほど。イチローの地元でひと儲け。この野郎。おれというこの国の守り人がいるからには、好きにはさせないぞ。



どうもふたりは裏口から出てったっぽいです。そしてここへきて、僕はあの男を追う気が失せてきています。いいんです。もういいんです。どうせFBI日本市局の人は、こんなチンケな事件は僕ら下っ端にやらせているんですから。

そんなわけで、なんの盛り上がりもない文章ができてしまいましたよね。でも思うんです。僕らの人生の殆どはこんな風だし、そしてそれでべつに構わないんじゃないかって。だって所詮人間なんて、ただちょっと言語が話せる動物にすぎないわけじゃないですか。

では。おやすみなさい。

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野宮 直喜

Φラヂオ

日々考えていること。 2018.12 〜 2019.7
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