企業経営に必要なほとんどの事は、RTSゲーム(Age of Empires2)が教えてくれた件④

ここまで、如何にAOE2が現実世界のビジネスというゲームにそっくりであるかについて、解説してきました。

簡単なAOE2の定義です。

自国の特性を生かして、資源を調達し、最適なバランスで消費し、兵隊を生産し、練兵して、勝てるタイミングを見込んで、他国へ攻め入る陣取り合戦をするのがAOE2。

簡単なビジネスの定義です。

自社のケイパビリティを生かして、資金を調達し、最適なバランスで配分し、人材を雇い、教育し、勝てるタイミングを見込んで、他社のシェアを奪いに行くのがビジネス。

陣の奪い合いというゴールが、全く同じのAOE2とビジネス。

これについては、「どこを?」「どのように?」「誰と?」奪い合っているか、その構造について説明しました。

特性、ケイパビリティを生かすという点については、「自分の強みを生かす」だけでなく「相手の弱みを生かす」ことの重要性について説明しました。

資源の最適な配分については、それらを最高に追及することの重要性を、複利の観点から説明しました。

最後は「兵隊を生産し、練兵し、勝てるタイミングを見込む」

についてです。

AOE2では、剣士、槍、散兵、弓、弓騎兵、散兵などの兵隊に加え 破城槌や投石器等の攻城兵器も生産することが可能です。

兵科ごとにコストも違い、相対する兵科との相性も様々です。
そして、全ての文明ごとに、その文明しか生産できない兵隊が存在し、文明特性を大きく支える存在になっています。 また、資源を消費しテクノロジーを研究することで、兵隊の攻撃力や防御力を上げたり、射程を伸ばしたりすることも可能になります。

状況に応じて必要な兵科を繰り出し、テクノロジーの研究をして兵隊の基礎能力を上げることで、敵軍に勝利することができます。

ということで、お分かりいただけたと思います。

人材の雇用、教育と完全に同じです。

兵隊の生産が、企業における雇用にあたり

テクノロジーの研究による練兵が、企業における教育や研修にあたります。

ただしAOE2プレイヤーと、AOE2をやっていないビジネスマンの間には、とてつもない認識の差が存在します。

なぜか?

ランチェスターの法則をとてつもないほど分からせられるからです。

ランチェスターの法則は、戦争における戦闘員の減少度合いを数理モデルにもとづいて記述した法則。一次法則と二次法則があり、前者は剣や弓矢で戦う古典的な戦闘に関する法則、後者は小銃やマシンガンといった兵器を利用した近代戦を記述する法則である。  これらの法則は1914年にフレデリック・ランチェスターが自身の著作L1916で発表したもので、原著ではこれらの法則を元に近代戦における空軍力の重要性を説いている。 ランチェスターの法則は実際の戦争においても確認されており、例えばJ.H.エンゲルは、二次法則に従って硫黄島の戦いを解析することにより、わずかな誤差でこの法則が成り立つことを確認している。
古典的な戦闘の場合には、個々人による一騎討ちの寄せ集めであるので、戦争による戦闘員の消耗は単純に味方の人数と敵の人数の一次式になる(一次法則)。それに対し近代的な戦闘の場合、戦闘員の消耗は味方の人数と敵の人数の2次式(双曲線)になることが示せる(二次法則)。よって古典的な戦闘とは消耗する人数が大きく異なり、近代的な戦闘では古典的な戦闘と比べ、人数が多い方の軍隊が大幅に有利になる。  なお、戦後になってからランチェスターの法則を導出した数理モデルは経営学にも一部応用されており、フォルクスワーゲンのセールス戦略をこれにより説明するなどがされている。経営コンサルタントの田岡信夫は自身の研究を踏まえてこれを優しく解説した本を書いており、日本では「ランチェスター経営戦略」と呼ばれている。

この言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。

特に重要なのはランチェスターの二次法則で

戦力差は単純な数値の足し算引き算ではなく、その総数の二乗の引き算によって導き出されるということです。

簡単な例を記載します。

5人の弓兵と4人の弓兵が同時に密集して戦闘した場合

5人の弓兵側が1人生き残って勝つのではなく

(5の二乗-4の二乗)の平方根である、3人が生き残って勝ちます。

5人側の戦力⇒5*5=25 4人側の戦力⇒4*4=16

戦力差=25-16=9

9の平方根=3

というわけです。

つまり実際の戦争では、微妙な戦力差が最終的に大きな差となってしまうということです。

これは人数だけでなく、練兵にも同じことが適用されます。1人で2人分の働きが出来る兵士であれば、さらに戦力差を広げることができるということです。

AOE2では、自国兵士が全滅し、かつ敵国に兵士がいる状態に追い込まれると、挽回するのがかなり難しい状況になってしまいます。

そのため、兵力が勝っているときに攻め、兵力が劣っているときには引く、という判断が勝敗に大きな影響を与えます。強いプレイヤーであればあるほど、押し引きの精度が高い傾向にあります。

だいたいのビジネスマネージャーは、10人のチームが11人になったとき、仕事量が1.1倍になったと勘違いしています。

確かに仕事量は1.1倍になっていますが、戦力としては1.21倍に増強されているのです。(10*10=100 11*11=121)

11人のチームから1人辞めてしまっただけで、戦力は17%もダウンしているのです。9%ではありません。倍近くの認識のズレがあります。

教育、研修に関しても同じです。教育コストに対して得られるリターンというのは、こなせるようになった仕事量の二乗なのです。

足し算引き算ではなく、二乗であるという前提があるのとないのでは、雇用や教育に対するコストのかけ方が大幅に変わります。

11人のチームから1人辞めてしまっただけで、戦力は17%もダウンしているのです。9%ではありません。倍近くの認識のズレがあります。

この事実を認識しているかしていないかでは、雇用についても教育についても、全くアウトプットが変わってしまうというのは、最早言うまでも無いでしょう。

やってて良かったAOE2。



さて、これが僕がAOE2から学んだ全ての事です。

自分たちの強みと弱み、相手の強みと弱みを生かした戦略立案。

敵がどのような存在で、どこをどのように攻めるべきか?というマーケティング的観点。

資源の最適な分配が大きな複利を生むという事実。

ランチェスターの法則を前提とした採用と教育。

言ってしまえばたったこれだけです。

全てAOE2が教えてくれました。

そして基本的に、これしか考えていません。

でも今のところ、多少は上手くいっています。

色んな人が僕に聞いてきます。

「どこで経営を学んだの?」

「優れた環境で働いたことがあるの?」

答えは…

全て、AOE2に、あります。

やってて良かった。AOE2。

これでAOE2最大の魅力のうちの一つである、ビジネスとあまりに似すぎている点の解説を終わります。お読み頂いた全ての皆さんに感謝するとともに、興味があればプレイしてみてください。僕で良ければ教えます。そして昔やっていたプレイヤーの皆さんも、良ければまた復帰してみてください。追加された新文明と、既存文明のバランス調整が本当に面白いです。

世界史を体験しながら、戦略的ゲームをプレイし、ビジネスまで学べることが出来る。こんな最高のゲーム、僕は他に、知りません。

以下は後書き。



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