札幌がいい塩梅だから。

東京から札幌に移住して、もう12年になる。
人生の28%を札幌で過ごしてきたわけだ。

東京に帰り住む気など全く無い。
おそらく札幌に骨を埋めることだろう。

街の機能も過不足もなく、東京が失った四季がここにはある。
便利、不便も含めて全部が揃っている。

冬。
雪は不便だ。寒さも不便だ。
歩きにくいし、灯油代もかさむ。
けれど、冬がないと寂しすぎる。
夜、雪道を歩く。
キュッキュッと雪を踏みしめる音がする。
車が通る。
その音は雪の中に溶け、静寂を如実にする。
スン、と。
5kmほど離れた街の上は明るいオレンジ色に光っている。
また、歩く。

春。
待ち遠しい季節。
雪は溶け水たまり、除雪車が削ったアスファルトのカス、土埃。
美しい初春ではない。醜い初春だ。
偶々の雪に落胆する。
溶けて降ってを繰り返し、一月すれば緑が芽吹く。
冬があるからこそ、春は待ち遠しい。

夏。
東京にはない、自然の夏。
昼は長く、夜は付け合せ程度。
ひたすらに明るい。
扇風機が温い空気をかき混ぜる。
水のシャワーを浴びて、引き締める。

秋。
短くて儚い。
目をそらせば気づかない。
あちらこちらで作物が収穫される。
北海道が一番忙しい、短い季節。
冬が来るまでの猶予時間。

季節ごとに街は顔を変え、広がる山々も表情を変える。
世界中を探したってこんな街はない。
その希少性。

日本のどこにだって行ける。
東京、仙台、名古屋、大阪、福岡。
飛行機ですぐだ。

人間が暮らしてちょうどいい塩梅。
東京の威圧感もなければ、沖縄の底抜けの明るさもない。
だからこそ日本で一番、地球を感じられる大都市。

それが札幌だ。

住みたいところに住める時代。
どうして皆、集中したがるのか。
この街には本当の答えがある。
成り行きだとか、仕事じゃない、在り方そのものがある。