AI幸福論の初回では、音楽することの意義をわかりやすく示した映画「陽の当たる教室」を取り上げました。また、長じて楽器を始めて世界第一級になったホルンのヘルマンバウマン氏と、フルートのクルトレーデル氏についても書きました。レーデル先生と新宿の炉端焼きやミュンヘンの酒場で1対1で親しくさせていただくようになった1990年台、彼は既にフルート奏者としてではなく、ミュンヘン・プロアルテ管弦楽団というバロック中心の室内オーケストラ主宰の指揮者としてこそ高名でした。

 大変な仕事をしているオーケストラの指揮者には敬意を表して、マエストロ!と呼びかけます。"Maestro Redel!"などと本人に直接話しかけたりです。Wikipediaの該当ページには、こうあります:

マエストロ(イタリア語およびスペイン語:maestro、Maestro):

芸術家、専門家に対する敬称。または称号。
・特に西洋クラシック音楽やオペラの指揮者、音楽監督、作曲家、師匠の敬称。
・巨匠

 先に、ブザンソン指揮者コンクールで、沖澤のどかさんが優勝。予想通りの順当な優勝だったようです。彼女は女性なので、マエストラ、と呼ばれます。昔と違って、女性の指揮者、多くなってきました。

 Wikipediaのマエストロの項は曖昧性解消の多義語ページになっています。小説、TVドラマがいくつかあり、また、音楽番組にそのような名前を付けたり、権威ある自動車のブランド名(オースチン・ローバー社)になったりしています。さそうあきら原作の漫画「マエストロ」は、偏屈な天才、少し音を聞いただけで奏者や楽器の欠点を見抜く鋭さで帝王のように楽員を支配するタイプの指揮者・天道徹三郎が登場しました。これが映画化されたとき、すぐロードショーを見に行きました:

自分の楽器ホルンについては、バイク修理屋が金属を叩いて往年の響きを復活させるシーンが大スクリーンで印象的でした。

 一丁田薫役: 斎藤暁:ホルン
 島岡脩三役: 嶋田久作:ホルン

叩くのでなく、加熱して焼きなましをするなどで金属の結晶配置を本来のあるべき姿にしてくれ、美しい響きや吹きやすさを復活させることができるようです。その手法で多くの楽器を復活させてこられている和田守弘さんに、近いうちにお世話になる予定です。

この他にも、映画「マエストロ!」には非常にマニアックなシーンが多々あります。指揮者と楽員の対立関係もテーマになっており、職場におけるリーダーシップ、部下のあるべき姿を考える良いきっかけにもなるでしょう。そうそう、英語で編集されたオーケストラ・ジョーク集には、楽員の視点で、ビオラ奏者はいくらいじってもいい、指揮者は敵だ、という大前提のようなものがあって、例えば「道路を運転していたら前に指揮者とビオラ奏者がいました。どちらを先に轢き殺しますか?」という問いへの回答は、「指揮者。その後、ビオラ奏者」とあります。その理由は、「(何事も)仕事が先。楽しみはその後。」というとんでもないものでした。
”A conductor and a violist are standing in the middle of the road. which one do you run over first, and why?
The conductor. Business before pleasure.”

令和の時代だと猶更罰当たりな酷いジョークですね!

素晴らしい原作や解説もありますが、機会があれば、是非映画版を観てみてください。


ps 令和はビオラの時代です:
https://www.youtube.com/watch?v=sq9-AnpVWGo

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?