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AIで仕事の種類、雇用は増え、消えるべき仕事を上回る。2030年は人手不足が激化

 「人工知能が変える仕事の未来」 を書いていた4,5年前は、フジテレビ、MXTVなどに呼ばれて、殆ど、孤軍奮闘で、2030~2035年に雇用大崩壊など起きません!と断言していました。生産年齢人口が13%減少することは確定しています(いまから仏国に追随するなどして少子化対策が成功しても効果が出るのは20年後)。かつ、Japan Taxiのようなサービスを見た消費者が、あらゆるサービスについて、その水準と、受益対象のカバレージを各10倍に増すというアウトプットの拡大を求めるようになってしまう。それには技術革新による劇的な生産性向上が不可欠です。

 そして、次のグラフにあるように、アクセンチュアとフロンティアエコノミクスの予想によれば、日本の生産性向上は、「AIを導入しない」シナリオでは先進国中で、イタリア、スペインを下回る断トツ最下位の0.8% 。これでは、人手不足は激化するばかりなのです。

 一方、上記書籍にも書いた、オックスフォード大学のオズボーン准教授らの数学的予想により、90%以上の確率で消滅するとされた仕事は、あれから6年経った現在、何一つなくなっていません。「AIに勝つ!」の第6章冒頭に記したように、むしろ需要が増え、仕事も、従事者も増えている職業さえ散見されます。

”2013年、英国オックスフォード大学オズボーン准教授らは、700ほどの仕事を機械に置き換えられやすい度合いでランク付けし、10年後にも約半数がなくなる可能性があると発表。世界に衝撃が走りました。

この試算から、2019年時点で6年がたちました。ところが、これらの仕事が実際に消滅したというニュースには寡聞にして接しません。機械に置き換えられやすい度合いが99%とされた電話セールスはますます栄えているように感じますし(仕事場にかかってくる売り込み電話の増加から)、98%とされた購買担当、融資担当など、オンライン購買、フィンテックで様々な比較手法が開発されるにつれ、より高度な思考と判断が求められる、やり甲斐のある仕事に進化しているようにさえ思えます。”

 2019年4月の入管法改正が無ければ人手不足で倒産した中小企業が多数に及んだであろうことは、改正に反対した人々も認めざるをえなかったはず。かように、どこを見ても、「いや前半6年は人手不足が激化したかもしれないがあと9年で、某書の題名のように9割が失業するんだ」という珍説が説得力をもつ状況にはなっていません。

 「いや、職種は減るんだ! AIに置き換わる仕事は無くなるんだ!」との反論に対しては、「AIに勝つ!」では、こう書きました:
”一人の仕事を細かく分解して単純作業が多くを占めるとされた職種、ポジションであっても、実際には総合的な能力を駆使し、多彩な複数の作業を連携して行うことが多い。これが理由で、今日の(2019年時点で実用化済の)AI、ロボット技術で代替できるのは、多くの場合、その1人の仕事の3〜30%程度にとどまっているのではないでしょうか。AIの導入コスト、保守コストまで考えたら、この数字を達成するにもまだまだ5年、10年とかかるでしょう。

 また、創意工夫の余地が大いにある、いわゆる「雑用」の多くや例外的な事態への対応については、人間の作業をそのままAI、ロボットに置き換えられる目途は立っていません。・・・・”

 そして本題です:                               ”今日のAIは道具です。人類、ホモサピエンスの歴史を通じて、新しい道具の誕生が、新しい働き方、新しい仕事を生み出してきたのと同じく、AIも次々と新しい仕事を生み出します。そして、AIという単一の存在、技術があるのではなく、何千、何万種類のAI技術があり、中でも有望株の機械学習によるAIを個々の現場に適用するためには、トレーニングデータを作成、整備してトレーニングするコスト(時間、費用)がかかります。AIの精度を評価し、データを追加したら精度が下がったりするのでその原因を追究して、改修や運用の工夫で問題を解決するような仕事もしっかりこなしていかなければなりません。こうして、AIの開発、保守自体が社内外に多くの知的な仕事を生み出すわけです。 ”

”新しい道具の登場は多くの新しい仕事を生む              ~雇用は新しい産業によって吸収される
 馬を乗りこなすようになった時代には、鞍や蹄鉄を作り修理する職人、そして、もちろん飼育係や餌となる牧草を作る人、屎尿の処理をする人などがたくさん必要となりました。ガソリン車をはじめとする内燃機関による自動車という道具が生まれた時代にも同様に、製造、保守、燃料の輸送と供給(ガソリンスタンド)のシステムが必要となりたくさんの仕事が生まれました。自動車普及の過程で、馬による輸送関係の仕事は減っていったわけですが、実際に馬車の御者が自動車の運転手に鞍替えしたように、雇用は新しい道具が生み出した大規模な新産業によって吸収されました。例外的に余ってしまった人もいたかもしれません。老齢で新技術を習得できなかった人はリタイアしたり農業などの家業を手伝ったり、残りは、マニア的な少数の乗馬人口に奉仕する道を選んだことでしょう。

 新技術による大きなコストダウンは、馬車の時代よりも桁違いに大きな需要を喚起し、桁違いに多くの人が長距離移動、馬車時代以上の高速移動の恩恵を受けるようになりました。乗客一人の単位時間あたり必要な保守人員が馬車時代より減ったとしても仕事の絶対量は増えたでしょう。
・・・
徐々に自動化率の高まる自動運転車やMaaSの時代で失うものは何でしょうか。・・後略・・”

 同書では以下、生産性の定義から、AIという何万種類もの複雑な道具の集合体の出現、それを利用する5G,IoTというビッグデータの瞬時流通のインフラの登場という(自動運転車、MaaSなんてごく一部に過ぎない)自動車の出現以上の劇的な変化は、確実に、無くなる(べき)仕事より、はるかに多くの仕事を生み出す、と立論しています。

 以上の主張は、4,5年、孤軍奮闘でした。国内ではもちろん、おそらく国際的にも。それが最近、私と同様に、【仕事は増える】と明言する人が出てきました。一例は、6章末のコラムに記したこちらです:

「ある有名な経営者が、「幕末は9割が農民だったのにいまや農民は1%もいないが、みんな何か別の仕事についている」と語ったそうです」

 もう1例は、ガートナー社のテイさん:

 さて皆さん、以上を、引用先までご参照の上、いまでも、2030年に9割の人がAIに仕事を奪われ、失業する、という主張に賛同しますか? もし賛同されないのでしたら、そのような主張をした論者達を堂堂と批判されることをお奨めいたします。

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