2016/5/19の近未来予想:残る会社、消える会社

 こんなタイトルの記事が、3年4か月に書かれたものなのに、週刊現代さんのサイトで、本日のアクセス1位に輝いていて目を引きました:

刺激的な小見出しでアイキャッチするのは仕方ないとして、半導体で起きたこと(いくらハイテク素材が今は日本製とはいっても完成品半導体の売り上げ1/10の下請けの地位に下がり、官民タッグの日本チームが半導体で韓国に完敗した事実は否定できません)が、自動車で起きないとも限りません。それを象徴する「トヨタがグーグルの軍門に下る日」という小見出しですが、後半の、日本企業の競争力採点表をみると、実際、現在の部品メーカー、部材メーカーが高得点となっています。知恵と、国際営業力の要る(ここがダメだからと、民生品の国際競争諦めて原発輸出などの政治商品に走って日本はおかしくなりました。かつてトヨタ、ホンダ、そして家電メーカーが世界制覇した頃の競争力を、個人の才能、ベンチャーの力で、別の形で復活するのに失敗。

 こんな現状を認めつつ、現在就活中の学生さんも目を皿のようにして参考になりそうな、「347社の「通信簿」を公開する。(表は5ページ目から)」は、一読に値します。Industry 4.0企業が大きく加点されるなら、
・企業間取引はAPI化し1000倍速とする覚悟が出来ている  

・需給の調整をIoTとローカル5G活用でリアルタイムで行い利益最大化するビジョンを全社共有している(まだそこまでの企業は滅多にないか)

・3Dプリンタで遠隔少量生産できる部品の活用はもちろん、自社製品の出荷形態や、サービス提供も(サービス輸出も!)遠隔、デジタルの力で強力に推進

などなどのウェイトを大きくしたい、と個人的には思います。

 フィンテックでは日本は負けそう、金融業界が抱えられる従業員数は1/3に減ると書かれています。生損保も、人間のライフログ、日々の行動や遺伝子等の解析、あらゆる地点てのIoTセンサーによる事故検知・予防により精密に死亡確率が算出、修正できるようになれば、生保、損保への加入意義自体が減る。20年後以降の生産年齢人口減少には歯止めかけようと(その手前はもう手遅れなので)少子化対策待ったなしとなり、完全男女平等、家父長制の名残の粉砕、婚外子差別の撤廃などが進めば、家父長=大黒柱が倒れたときのための手厚い生命保険など不要となるので、生保はさらに厳しい。自動運転の普及に楽観的な人なら、自動運転で事故確率が桁違いに減って、損保もお先真っ暗、と考えるのが普通でしょう。

 では成長市場は??となると、実際に健康寿命を延ばす、「味の素など食品業界が大躍進」とつながります。「「すでに動き出している企業が、ここから10年で果実を得ることになる。たとえば富士フィルムHDやオリンパスは自社技術をヘルスケアや医療機器へ応用して、競争力の高い製品化に成功している。明治HDは乳酸菌などを活用した健康事業へのシフトを加速中。サントリーHDも良質な水資源を確保し、今後高まる良質な水への需要に応える準備が整っている」(中田氏)」なかなか説得力があります。

 後半は、部品、工作機械・産業ロボットなど、既に日本企業が最強となっていたのをさらに強める話で、そのためには、これらの企業がAI企業の支援を受けたり、AI人材を獲得するのに成功するのが一番である、と示唆されています。その通りなら、私のメタデータ株式会社は大発展を遂げるはずですね(笑)。この記事は噛めば味が出てくるので、また、続きを近いうちに書こうと思います。

 最後に、1983~4年に少しだけタイムスリップ。計数工学科という、工学屋としては抽象的な応用数理の学科を卒業しようとしていた私は、結局選んだNECを含め、借金などの財務体質をみたりすると将来倒産の危機があるのでは?と不安を実家の親に語ったりもしました。当時就活という言葉はなく段ボール3箱送られてくる大企業からの勧誘の束から選んで「行きます」といえば三顧の礼で迎えられたのを懐かしく思い出します。そのとき健在で、明治以来の伝統ある財閥系東証一部上場企業の役員をしていた父は、「会社なんて、巨大タンカーみたいなもので、つぶれるとしても30年くらいかかるのが普通。だから文字通り大船にのったつもりで、技術(今の言葉でいえばスキル)を身に着けて大暴れしてみれば、そのうち周りに取り立てられることもあるだろ」、と言いました。まぁ、経験者にしか語れない言葉だったといえます。

 それで安心して、というわけではありませんが、入った大企業の中では、ベンチャー的な研究所で、沢山学ばせていただきました。ユニークで優れた上司、仲間(様々な会社から機械翻訳の実現に集ってきていました。20代後半では第五世代国家プロジェクトに出向しライバル電気メーカ7社の「仲間」と楽しく一緒に仕事しました)に囲まれ、先般引用したアラン・ケイの言葉を、個人でなく、会社やチームで実現、達成せんとしていました。幸福な時代でした。

 そして、機械翻訳チームの究極の目標は、皆で、言語の壁=バベルの塔を打ち崩し、それによって戦争の無い世界を作って、我々技術者と、普及に貢献してくれた営業マン、経営者ともども、「ノーベル平和賞を獲得するぞ!」と本気で口にしていました。「AIに勝つ!」に書いた3人の石工の中で、明らかに、最後の、「人類が見る最も美しい大聖堂を作っているのです」と答えた者と一緒でした。毎月のように100時間以上残業(ピークは160+180 = 340時間)働いても、全然苦にならず、脳内麻薬が出続けていたわけです。
  気持ちはベンチャーそのもの。「働きたい!」というのを止めずに、組合から必死に守るのが、上司の仕事だったなぁ(と遠い目)。昭和は昔となりました。当時、海外留学の志望者なんかも現在の3倍はいたと思います。


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