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悪魔の辞典、虚構新聞、妄想国語辞典で笑えるAI、これらに執筆できるAIは作れるか?

   2019年1月13日に出演した、ビートたけしのTVタックルでは、たけしはもちろん、梅沢さん、大竹さん、と、AI時代にお笑い芸人はどうなるんや?という話題になりました:

激しく脱線する筋書のない収録の最中に私は何回か、「その場で初めて出てきた新ネタについて、常識的な解釈、陳腐な言い草とは微妙にずらしたり、様々にわざと予想と噛み合わないボケとツッコミを組み合わせるのはAIにとって至難。究極の課題であり、人間なみに近づける目途はまったくたってない。」と主張。したがってAI時代には、お笑い芸人こそ至高の職業の一つになることでしょう、と。

 「AIに勝つ!」の中では、「文字どおりコミュニケーション」でお笑いがとれることを第1章「人は働いて幸福になる」に書きました。そして、音楽に勝るとも劣らない、お笑いの効用として脳がリフレッシュする効果があるのはもちろんです。第4章の冒頭では、欠点のように見えることまで人間を完全に模倣するAI(=強いAI)ならこうなってなければ、という例として、「気まぐれ、飽き、不真面目、笑い。何かを見て正確に認識できず、歪んで見えたり、凹凸が逆に見えたり、同じ長さが違って見えたりといった錯視・錯覚現象」を挙げました。

 p.255では、生身の人間のためになるお笑いとして、「ピンポイントの回答で、快く、目の前の問題解決知識を分けてもらったら、すぐにその知識を使って、対話、議論を次の水準まで高めていきましょう。それが相手への恩返しです。ヒートアップした議論に疲れたら、お笑いの出番です。笑いには病気を治癒する効果もあるらしいくらいですから、論理展開に疲れた自分や相手の頭をほぐすべく、なるべく目下の議論の内容や表現をもじったジョークを言ってみましょう。」これに続けて、グライスの会話の含み理論(格率)をまとめ、対話から創造を生むコツを示しています。

 第6章の5「なぜ?」を5回問う ―人間ならではの能力を活かして働くために、でも、笑いを活かしたコミュニケーションの重要性に触れます:
「働いて幸福になるため(第1章)、AI時代に自分の価値を高める知能労働へのシフトを行い(第2章)、意味を読み取ってアウトプットに活かし(第3章)、AIに勝つべく切れ味鋭い論理でお手本のない新しい問題を定式化して創造的に解決し、そのためにもAIやITの長所も理解しマネしましょう(第5章)、そして、AI時代に次々と生まれる新しい仕事を楽しみましょう(第6章)と論を進めてまいりました。第6章の最後に、改めて人間が生来もっていて、子どもの頃ならだれでものびのびと発揮できていた好奇心を仕事に生かすことを考えます。」
 「自然な好奇心から生まれる「なぜ(お空は青いの)?」という問いを突き詰めたり、常識とのギャップから生まれる笑いを活かしてコミュニケーションしたりする。そして、自発性、主体性、リーダーシップ、それに伴う責任感を原動力、動機として仕事をする。意欲や感性さえもコントロールすることで、ゼロから発想し、前例のない問題解決を行う。こうすれば、これからのAI時代に有能な人間であり続けることができるでしょう。」

 続く本題で、「なぜ?」を6段階掘り下げて問うてくる架空のAIを登場させたときにも「(笑)」が登場します。Xさんが人間でYさんがAIです。

Y:「それはどうやって確認できますか?」
X:「それがわかれば苦労しないよ(笑)」
Y:「なぜ簡単に確認できないのですか?」 (6段階目)
X:「いいかげん怒るぞ!(笑)」

Y: 「(笑いながら)ごめんなさい。確認する方法が見つかればいいなと思ってご協力したかっただけですので許してください」
X: 「わかったよ。いや、ありがとう。怒ってみせたのは、よもや、私が怠慢だったからではないかって、あてこすられたのかと思って。半分冗談だと思ったからこそ、そんな態度を言葉にしてみただけ。それと、理由を考えるための時間稼ぎの意味もあったと思う。自分を見つめてみるに」
Y:「さすがですね。でも急ぐ必要はありませんよ。また次回にしますか?」

 相手の発話から文字列を拾い、深層学習をかますにせよかまさないにせよ、データベースを検索し、類似度の高い事実情報を返すチャットボットは、上記「Y」の水準には、遥かに及んでいない。この意味で、人工知能応用の1つ、対話ロボットの課題、マイルストーンとして、大きなチャレンジを描いてみせたつもりです。

 同書エピローグ p.420 より:「「笑って、そして、考えよ」
日本人は、2018年9月に、12年連続でイグノーベル賞を受賞しました。個人的に印象的だったのは、イグノーベル「音響学賞」を2012年に受賞した
SpeechJammer(スピーチ・ジャマー)です。」
「SpeechJammerは、図書館などの静かな所でおしゃべりをしていたり、持ち時間をオーバーしているにもかかわらず喋り続けたりする人のスピーチを阻害して強制終了させる発話阻害銃です。他の受賞作品や研究成果も、どれも確かに役には立ったり、これまでの常識を覆したりするものではありますが、笑いを呼び、「とほほ」と脱力するようなものばかりです。その場の状況に応じて周囲を笑わせる。または、普遍的に、世界を笑わせる。この、AIにとっては絶壁のように高いハードルを超え、楽しく技術開発していく資質を、日本人は十分に備えているのです。」

 補足すると、イグノーベル賞受賞者を特殊扱いせず、どの職場のエンジニアでも目指すべき1つの理想の姿、として尊敬するムードを日本中に漂わせれば、創造性溢れるアウトプットの量が2倍くらいにはなりそうな気がいたいします。

 やっと標題の内容ですが、今にして思えば情報処理の草創期、今は無き「bit」という月刊誌の連載、「bit悪魔の辞典」は毎号欠かさず読んでました。毎月、IT系の1単語を見出し語に選び、皮肉たっぷりに、いろいろとIT屋の自虐的なジョークが上手に書いてありました。比較的最近も、マイクロソフトジョークなど、1強となってしまった相手をおちょくるジョークだけで1冊の単行本がでたりしていました。そんのを見つけると欠かさず買うようにしています。

 妄想国語辞典。これは、上記を一般社会人向けに広げたものですね。

悪くありません。しかし、キツいジョーク、強い共感を呼ぶ、おちょくりネタは、得てして狭い業界の中でだけ通じる内容だったりするもの。その意味では、bit悪魔の辞典に軍配があがるように、個人的には感じます。

 虚構新聞も大好きなのですが、これはどちらに近いでしょうか。

総合新聞、全国紙の体裁で、

社会 政治 経済 スポーツ 国際 科学 文化 エンタメ

と紙面がわかれているため、bit悪魔の辞典のような専門分野に特化したキツいジョークのテイストも感じられます。そして多くの人が注目した時事ネタをとりあげるので、腑に落ちる笑いが多いですね。「令和生まれ500人アンケートで、将来なりたい職業について男女とも全員無回答」など、論理的な基調を貫き、大げさな形容表現を排除しているところも笑いを増幅します。はい、一流の芸人は決して自分自身では笑わないものですね。こんなことも板について実践し、時には爆笑もしてくれるAIの開発、、夢ですねぇ。。



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