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SR600紀伊山地① ~油断大敵~

ロングライド、特にブルべはゲームだと思っている。出発する前から勝負は始まっている。どれだけ手札を用意できるか、そして状況に応じて相応しいカードを切るセンスが問われる。SR600はコースは決まっているものの、スタート時間は自分で決める事ができ、今まで参加した先人たちのレポートを見ると三者三様でバラエティに富んだ旅を楽しんでいるようだ。新宮、龍神で一泊ずつ投宿するのが定番のようで、季節を選べばナイトライドを経ずに完走する事も可能だろう。今回の予定は、384km地点にある通過チェック「近露王子」で面白そうな宿を見つけたので、ここでたっぷり休憩時間を作る事から逆算して、1日目はお昼の12時にスタート。七色ダムに下るまでの169号線は完全に日が暮れた後に通る事になるが、この辺りは何度か走行したことがあり、そこそこ交通量があり道の整備状況も良いことから、野生動物にさえ気を付ければリスクは高くないと判断。

今回は白RITTEで出動。荷物はウォーマー類と輪行袋を中心に補給食を。道中に商店や食堂は点在しているが、通過するタイミングが悪いと、100km近く食事が出来ない可能性がある。山間部の天気は変りやすい。念のためにリアのみ泥除けを装備。


スタート朝はゆっくりと自宅で朝食を取ったあと、輪行でりんくうタウンまで移動。このコースの獲得標高は10,756m、SR600の規定ギリギリだ。最高地点も1,300mほどしかなく、はっきり言ってSR600にしては易しいと言っていいだろう。と、いう甘い考えは最初の葛城山で打ち砕かれた。まず上り、オープニングブローのような急勾配とギラギラと照り付ける太陽が初っ端からダメージを蓄積させる。6月というのに暑すぎる!しかも、通過チェックを過ぎてからの下りで、ギャップを見落としてリム打ちパンク。まだ40kmも走ってないうちにやってしまった。幸い予備チューブを2本持っていたので、1回くらいのパンクは許容範囲内だ。かなりの衝撃だったが、幸いリム重量が500gオーバーの手組ホイール、まったく触れも出ていないので問題ないだろう。そう、コースの難易度は高くなくとも、これはSR600だ。この先にも何が待っているか分からない。ここでパンクしたのも、油断するなよ!というブルベの神さまからの警告だろう。

いきなりのパンクで先が思いやられる。あと500㎞以上もある、まだまだ先は長い…。


パンクの後は特にトラブルもなく、順調に通過チェックでの写真撮影をこなしていき、"貯金"をこつこつと積み上げていく。169号線に入る頃には辺りは真っ暗になったが、ライトの照度を上げれ全く不安はなく、日中の暑さに比べれば何と走りやすい事か。あっという間に上北山村を下って、七色ダムも通過。予定していたタイムスケジュールよりも3時間ほど早い。しかし、丸山千枚田に向かう辺りから、道路の脇から野生動物が蠢くのが感じられる。まるで飼育小屋か動物園か、というような匂いが立ち込める。何が起きるか分からない。五感を研ぎ澄ませて走るしかない。そんな危険な一夜?を無事に明かして、無事に新宮まで抜ける事ができた。ここ数年、紀伊半島一周をたびたび走行しているが、ちょうど同じルート上にある新宮のすき家はリサーチ済。ここで夜食を食べてほっと一息。なかなか良いペースだ。このまま中盤の山場”玉置山”をクリアしてサクッと宿までたどり着ければ良いのだが...。

この先に何が待っているのか。この先に起こる”何か”を予感させるトンネル。ど深夜に来るところじゃない。非日常感に期待と不安で複雑な気分に。


通過チェックの丸山千枚田。おそらく田植が済んだ後の初夏の棚田が広がっているのだろうけれど、こう真っ暗では何も見えやしない。

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