見出し画像

SR600紀伊山地②~血か露か

新宮のすき家で夜食を食べた後は、PC9を目指して那智の滝へ向かう。新宮~勝浦あたりにはコンビニが点在しており、中盤へ向けての補給の要点となっている。今回の水分補給は、自転車にセットしたボトルは予備で、メインは背中のハイドレーションから。スタートから初夏を思わせるような暑さに晒されていたので、この装備は大当たりだった。道中のファミリーマートで天然水を購入して準備は万全。

ドイターのロードワンに2Lのハイドレーションを装備。それ以外は宿泊中の短パンとTシャツ、予備チューブに補給食を収納。反射ベストはカバンの上から着るスタイル。

PC9の那智大社までの緩やかな登坂を淡々とこなしていくと、遠くに瀑布の音が聞こえる。どうやら早くも大滝に達したようであるが、予定より4時間近く早いため、日の出はまだまだ先。棚田に続いてここでもSR600の絶景には見放されたか…。

通過チェックを過ぎたところの展望台。ちょうど日の出を迎える事ができたので、ここで一休み。

ここからは次の通過チェック・玉置山に向けて、熊野川へ向けて下り基調の道が始まるが、色川あたりは道が荒れており、先週の雨の影響もあって油断ができない。ましてや、昨日の昼から走り続けて集中力が落ちているうえに、予備チューブは前半で使ったので、残り一本しかないときた。いつも以上に慎重に、安全マージンを取って下る。

道中で通過した集落の商店でおやつ休憩。おかみさんから頂いた梅干しが寝不足の身体にいい刺激になった。

風光明媚な瀞峡を抜けた後は、いよいよ中ボスの玉置山へ。ここの登りでいよいよ眠気がマックスに。夜通し走り続けたサイクリストなら、みな経験しているのではないだろうか?日が差して、暖かくなってきた時間帯に眠気がやってくる。これはイカンと思って、上り坂の途中で自転車をおりて道端で横になって数分、もしかしたら20分くらいだったかもしれないが、居眠りをキめた。普段なら絶対にしないが、疲労と眠気で相当に判断力が落ちていたのだろう。今夜は宿をとっているので、暖かい布団で眠るのを夢見て、淡々とペダルを回し続ける。正直、玉置山単体で見ると大した登りではない。しかし、これはSR600の最中で、ここにくるまでに200㎞以上を走っているし、ここから先を考えるとここで消耗する訳にはいかない。この"ゲーム”を楽しむためには、頑張りすぎないように頑張るのがコツだ。運動強度とペースをモニターしながら、この先の通過時間を計算する。非常識な走り方(笑)をしている割には、サイクリングに関する事は頭が冴える。

ようやく到着した通過チェック。ちなみに、集落を抜ける前に放し飼い?の犬に追いかけられた。もう少し先のポイントにも放し飼いのポイントがあるそうだが...

通過チェックを過ぎた後も眠気は取れず、道中で休憩も挟んだが、ピリッとしない騙し騙しといった走りで、今夜の宿がある近露王子跡へ到着。予定より早く午後3時に到着。明日は4時に出発すればよいので、12時間以上ここで休憩ができる計算だ。ひとまずお風呂で汗を流した後は、近くの資料館やコミュニティセンターでゆっくりと時間を過ごす。近露(ちかつゆ)というのは、「血か露か?」という時の法皇の発言が元になったそうである。今回宿泊したのは通過チェックの目前にある「月の家」という民宿。令和という新時代に、昔からずっと変わらない年季の入った佇まい。1泊9,000円と安くはないが、食事のボリュームは満点、事前に依頼していたウェアの洗濯や、翌朝は朝食ではなくお弁当を用意してもらえたりなど、この宿はアタリだ。

起床すると、テーブルの上にはお弁当が。ご主人からカリカリの梅干しも頂いた。ちょっとした心遣いが体と心に沁みる。

建物自体は江戸末期に建てられたもので、宿としては100年以上営業しているそうだ。かなり古いが、汚くはなく、どこか懐かしさを感じる。ご主人と奥さんの人柄もあって、SR600に限らず再訪したい宿だ。

晩御飯のあとは、布団にはいると7時間半ぐっすりと一度も目が覚めることもなく眠りに落ちた。これで明日への鋭気は満タン。残りの道のりは220km、大ボス護摩壇山を含めて一気に駆け抜けなければならない。というのも、明後日は朝一から健康診断があるので、夕方までにはゴールしないと、ゴールした瞬間から絶食タイムが始まってしまう(;´д` )

風光明媚な瀞峡。絶景に心が洗われるが、頭の中は眠気とタイムスケジュールの確認で精一杯。また余裕のある時にじっくりと訪れたい場所のひとつ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?