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大学5年間、ずっと同じ人に髪を切ってもらっていた話

髪は、その人の印象を作る、いわば ”額縁" みたいなものだ。

額縁を、年に数回お手入れしてもらいに美容院に行く。
その予定が、私はすごく好きだった。 

そして、私の髪は大学5年間、ずっと同じ人に託していた。

まおぴーさん。

そう呼んでいる美容師さんと出会ったのは大学1年生の時。
まおぴーさんに髪を預けてから、私の学生生活には髪を切るタイミングで節目が生まれるようになった。

大学5年間で、まおぴーさんが働く美容院は2回変わった。
でも私はまおぴーさんに切ってもらいたかったので、まおぴーさんのいる美容院に通った。今はおしゃれなカフェのようなところで、店長さんとして働いていらっしゃる。とても忙しそうだ。

まおぴーさんの美容室で、先日髪を切ってもらった。そのあと、いつものパーマもかけてもらった。

「もうすぐ社会人になるんですね、おめでとうございます!おまけでトリートメントしちゃいました!」っておちゃめに笑うまおぴーさんに、涙がちょちょぎれた。

住む場所や活動を常に変えていたように感じる大学5年間。少なからず、自分自身も周りの環境と一緒に変わっていった。

そして、ずっと同じ部活やサークルに入っていたわけでも、ずっと同じバイトをしていたわけでもない私は、どこかで「変えなかったもの」「変わらないもの」に憧れていたような気がする。

大学5年間、変わらなかったもの。

あったっけな。って考えていた時、それが、大好きな美容師さんだった、ということに気づき、社会人になる前にやっぱり心機一転、まおぴーさんに髪を切ってもらおうと思って私は美容院に足を運んだのだった。


芋からの脱却

大学生になったら絶対髪を染めるぞ!
と決めていて、高校の卒業式の後に明るく染める予定だったけど、結局その予定は流れてしまった。
「大学デビュー」しそこねた お芋は、なくなく大学の入学式を迎えた。

雑誌を買ってパラパラと読むものの、自分に合う髪型はよく分からない。服も、聞いたことないブランドばっかり。大学生になって、メイクもちゃんとしなきゃいけないのか…と紙面いっぱいに広がるキラキラしたメイク道具たちを見て、呆然としたのを覚えている。
女子校出身(制服)で、校則でメイクが禁止だった私は、毎日メイクをして私服を選ばなければいけない向こう4年の大学生活に、おろおろしていた。
とりあえず、メンソレータムのリップを、色付きのかわいいリップに変えるところから、メイクは始まった。マイナスからのスタートである。

入学式でスーツに身を包んでいた周りのぴちぴちの1年生は、ものすごいスピードで垢抜けていった。やっぱり、髪の毛の色でだいぶ印象は変わる。
1年生の夏には、入学式で見た黒髪は素敵な色に染められていて、大学初めての夏休みをカラフルに彩っていた。

染めてみたい…でもそんな勇気はない。
黒い地毛が生えてくるともれなくプリンになるし、
それにまたお金を払うのは大変そうだし。

そう思って、私は髪にパーマをかけることにした。
私の直毛が、なんだかとても真面目腐ってるように見えたので、耐えられなくなったのだった。

そこでいつも行っていた地元の美容院ではない、ドキドキしながら行った初めての美容院で、私はまおぴーさんに出会う。

まおぴーさんはとっても気さくな方だった。髪の毛のことや、まおぴーさんが美容師になった背景、美容学校の生活、など色々なことを話した。

初めてのパーマ。ツンと鼻にくるパーマ液のにおい。頭にゴテゴテ盛られていく、色とりどりの筒。目の前の鏡に映る、てるてる坊主みたいになっている自分は、なんだかパリコレに出てくるような独創的な格好にも思えて、顔は不安でちょっと引きつっていた。

そして、髪の毛についた筒を取られた途端、

「え、ひっくり返したラーメンじゃん!」 と絶句した。

髪がぐるんぐるんのうねうねだ。ナルトかメンマがひっかかっていても、全然おかしくないレベル。

でもちゃんとパーマ液を落として、乾かしてもらったら、普通にふわふわになった!よかった!!慣れないからちょっとベートーベンみたいにも見えるけど!!安堵のオンパレードだった。

髪型で、だいぶ印象変わるんだなぁ。って感動したのを覚えている。

そこから5年間、まおぴーさんに切ってもらった後、鏡の中にいるのはとても嬉しそうな自分だった。

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切って始まり、切って終わる

私が美容院に行くのは、何かが始まる時と、何かが終わる時だった。何かを始めたい時、そして何かを終わらせたい時でもあった。

スウェーデンに留学に行く前には、きっと向こうにいる1年間は切らないから、短めに切って下さい!と言って、肩につかないくらいの短さにしてもらった。新しい生活に飛び込む心の準備は、髪を切ることでできたのかもしれない。

タンザニアから帰ってきた後の髪の毛は、現地の水とすこぶる相性が合わず、ご臨終なさっていた。ケラチン飢饉が起きている部分をすべてぶった切ってもらった。新しい髪型で、これから日本で頑張ろうと決心できた。

インドに半年間行く前も、カットとパーマをかけてもらい、インドの日差しにも負けないようにと、まおぴーさんはUVカットできるトリートメントをおすすめしてくださった。インドでシャワーを浴びたあとに、そのトリートメントを両手で髪にゆっくり染み込ませていた。それが、明日も頑張るぞ、とおまじないのような役割を果たしていたように思う。

5年間定期的に通い、毎回数時間お話しているので、まおぴーさんは私の恋愛遍歴をばっちり覚えていた。

恋が終わった時は「邪念も一緒に切り落としちゃって下さい…」と頼んでバッサリ切ってもらったり、新しく恋が始まった時は「応援してます!」ってパーマをかけてくれたり。途中で出してくれる甘い紅茶とお菓子を食べながら、友達のように話せるその時間がとても楽しかった。

ありがとうございました!って言いながらお店を出た後、髪が一気に重力を失う。風にふわっとなびく。気分がとても軽くなる。あの、わくわく感。

明日もいい日になりそうだって、満たされていくあの瞬間が、とっても好きだ。

きっと、誰しも経験したことある感覚なんじゃないかなぁ。

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髪の毛でつながったご縁

結局髪の毛は一度も染めないまま、学生生活は終わりを迎えそうだ。一回くらい金髪にしてみたかったなぁ、って思ったけど、でもまぁいいや。

Life is more beautiful when you meet the right hairdresser.
「とても上手な美容師に出会った時、人生は輝く。」

まおぴーさんの技術的なうまさだけでなく、人柄であったり、お客様への思いやりが、5年間ずっと私を惹きつけていたんだと思う。

「いろんな節目に髪の毛を通してかのんちゃんに関われたこと、とっても嬉しく思います😊」ってメッセージが来て、もう髪の毛がパーマのウェーブを超越して踊りだすんじゃないかってくらい、嬉しかった。

Invest in your hair. It is the crown you never take off.
「自分の髪にお金をかけなさい。絶対に脱がない冠なのだから。」

たしかに。社会人になってお金溜まったら、極上のトゥルトゥルトリートメントいっちょお願いします、まおぴーさん!!

髪を切ってもらうことで、自分の生活は明るくなるんだってことを、まおぴーさんに教えてもらったなぁと気づいた。そして、どこかで背中を押してほしかったんだろうなぁ、とも。

他の季節よりも「始まり」と「終わり」が多く詰まっている春という季節に置いてかれないように、髪を切って、新しい生活への準備を整えられた気がします。

5年間、本当にありがとうございました!

明日もいい1日になりそうです!ありがとうございます😊

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