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チコちゃんは叱られない―公共放送におけるコンニャク問答

オンラインでゆるゆる続けてきた大学院での取り組みの一端を、Googleサイトを共同編集してアウトプットしてみました。

学生が特設ホームページにつけたタイトルは、「矛盾する問答」です。(ぜひご覧ください)

国会の「ごはん論法」が学校教育に由来するものではないかという妄想のもとに書いた、「国会答弁と文学教育」という駄文の延長線上に位置する授業の記録です。

今回は、国会でも学校教育でもなく、NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる!」も取り上げてみました。

たとえば、こんな問いがあります。

どうしてパンダは白と黒なの?

いい大人のゲストたちは答えに窮するわけですが、5歳児のチコちゃんはこう答えます。

笹を食べているから〜( ̄^ ̄) ドヤ

答えにはなっていないので、岡村隆史もゲスト出演者も困惑するのですが、チコちゃんの「解答」はただちに専門家によって「すごいね〜、5歳なのによく知ってるね〜」と全面肯定されます。

チコちゃんの答えを聞いた視聴者もおそらく「???」という感じなのですが、番組ではすぐさま「解説」が始まり、最終的にはスタジオの出演者も視聴者も納得させられるという構成になっています。

チコちゃんの解答が、質問に対してまともに答えられていないということについてツッコミが入ることはありません。

質問に対してまともに答えていないのに、その答えが専門家とNHKによって権威づけられ、「正解」として扱われるという段取りで番組が構成されるわけです。

こうした番組の作られ方について、受け止め方は大ざっぱに言って2つあります。

「チコちゃんに叱られる!」は、基本的には娯楽番組である。だから、まともな解答とは言えないとしても、5歳児という設定のチコちゃんの解答として許容されなければならない。5歳児のトンチンカンな解答がじつは本質をずばりと見抜いたもので、それを専門家がフォローするという構成である。娯楽番組として視聴者を「ん?」と思わせて興味を引く演出をするのは当然のこと。目くじらを立てるのはヤボというものだ。視聴者も、そんなことは百も承知で受け止めている。
「チコちゃんに叱られる!」は、家族そろって視聴できる教養番組である。少なくとも教養番組として視聴され得る内容になっている。そして、メインキャストのチコちゃんは、5歳児なのに何でも知っている天才児として扱われ、専門家も彼女の解答を全面的に肯定している。チコちゃんの「解答」の異様さについて批判的な意見を持つことができないまま、それを「正解」として受け止め、問答がねじれていることを認識することができない視聴者がいてもおかしくない。少なくとも、この番組を見て知識を学ぶ子どもたちは、チコちゃんの答えを「正解」として受け止めるかもしれない。そうだとすれば、NHKが全国放送を通じて、問答の矛盾に気づくセンスをそこなう「教育」をし続けていることになる。

まあ、目くじらを立てるのはヤボ、というのが穏当なところなんでしょうね。



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