私は将棋を観るのが好きだ。
そして山崎八段ファンです。

どういうことですか、チーム山崎…　あれだけのメンバーで５連敗を喰らうとは思いませんでした。期待していただけに辛さが募ります。中村八段が七段なんて呼ばれていましたから、対局の収録時は随分と前のよう。順位戦も佳境の頃で昇級がらみの中村八段としては調整が難しかったのだろうと自分を慰めています。それにしても、山ちゃんの二敗…　０－５でのチーム敗戦なので今晩の結果によっては予選通過が相当に厳しいものになってしまいました。

こうなると今日はチーム羽生を応援せざるを得ない。羽生九段も斎藤八段も同じくらいに応援している棋士ですが、私の中では山崎八段だけが図抜けています。チーム斎藤の皆様には大変に申し訳ありませんが、今週来週は不調でお願いしたいところです。

そんなチーム斎藤の動画が上がっていました。なんてことはない、決起集会の名の下に肉と酒を嗜みながら、楽しそうにお喋りをしている。当初は斎藤八段と黒田五段が同門なのでプラス冨田誠也四段という関係性でのお喋りになるかと思いましたが、同門二人が共に控えめ。話の盛り上げ役を一手に引き受けていたのは冨田四段のように見えました。

正直、冨田四段のことはそんなには知らないんです。昨年の出場で初めて知ったくらい。明るいね、陽気だね、そんな見たままの印象しか抱きませんでした。そして今回の動画。いい子でしたね、本当に良い人。空気を読んで気を遣って、そしてお上手。人柄が好きになりました。明るく陽気はそのままですが、決して出しゃばっては来ない。ただ控えめな人を近くにすると、その人が出て来れるまで自然と場を繋ぐ。出易いように温めては、何気ない素振りでお伺いを立てて、それでいて無理には引っ張り出さない。喋り易く、入り易く、上手に繊細に場を作って終始気遣っているように見えました。

発言も優等生的なものばかりではない。どちらかといえば調子のいい物言い。でも根っからのお調子者には見えない。所謂、ガサツではないもの。距離感測って、少々くだけて、時には「おっ！」という合いの手ひとつで先輩の喋りを促していた。照れくさい話題だからこそ、後輩に言わされたという言い訳の逃げ道を作らせた絶妙な一声。振り飛車らしい、美濃囲いの端歩のような一手でした。そんな絶妙手を絶えず出しているような印象が続く。斎藤八段に対しても黒田五段に対しても、動画スタッフも含め分け隔てなく。

それにしてもお上手です。上手なんて誉め言葉、上から目線で失礼なのですが、それでも言いたい。本当に上手い。一見、突き出しの歩のような、ちょっかい喋りに見えるのですが、それが話題を膨らます為の継ぎ歩だったり、ここまでにしておこうと守る金底の歩のような技ありの話術に聞こえます。自分はお道化て見せておいて周りの人に損はさせない、気遣いが振り幅が飛車の如く見えました。

中盤で気分の良くなった斎藤リーダーがメンバーの活躍にはオーダースーツをプレゼントすると口を滑らした。俄然やる気になって条件を詰めて行く弟弟子の黒田五段。これはこれで素直な態度で可愛らしく思います。リーダーも本気のようでしたし。でも、こういう時は意外と囃し立てない冨田四段。相槌や笑いこそ挟めど、言質を引き出すようなことはしません。ノリの発言でしたで済むようにもしつつ、斎藤先輩の本気度を伺います。発言が本気と判れば判るで「カッコイイ」と立てることを忘れない。しかもまた、ボソッと言うのがいいんです。声を張り上げたりしない。照れ屋な斎藤八段の気前良さを妙に粒立てたりはしないけれども、しっかり際立たせている。気遣いの手合いは九段の腕並みだと思いました。

こうなると人柄だけでなく将棋の方にも期待してしまいます。応援をしたいのはやまやまですが、今回は応援すべき山が別にあるという事情が…　冨田四段に場を託したらチーム斎藤が勝ち上がってしまうし、私の空気を読んで欲しいと念じたところで通じそうにありません。結局はチーム山崎の奮起に期待するより他はなさそうです。

冨田四段にはアベマトーナメントではほどほどに、今後の公式戦では大いなる活躍を期待しています。オーダースーツは贈れませんけど。