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斎藤慎太郎八段【将棋のこと】

私は将棋を観るのが好きだ。
そして山崎八段ファンです。

西の王子と言えば山崎八段でしょうか?それとも斎藤慎太郎八段?元祖が山崎八段で次が斎藤八段というのが正解な気がしますが、真に王子と言える男は斎藤八段だけのような気がします。ファンの言葉ではありませんが、山ちゃんに王子の称号は荷が重過ぎる。ご本人もお姉様から勘違いしないようにと忠告されていたくらいなので、失礼はないかと思っております。

整った顔立ちでスラッと高身長。全方位に気を配っては、はんなり口調で周りを立てる。実力も実績も折り紙付きで、まさに咎める隙の無い男が斎藤八段ですが、今年のアベマトーナメントに限っては少し違和感を感じています。斎藤ファンの方からはそれこそが咎められる私感になりますが、感じてしまったものは仕方がない。その違和感を素直に書きたいと思います。

ドラフトでは意図して後輩二人を選んで、導くように率いている斎藤八段。動画といい予選といい、良きリーダー、良き先輩ぶりを発揮しています。昨年、同じチームだった木村九段の影響でしょうか、それとも優勝をさらわれた稲葉先輩の姿勢に刺激を受けたのか、とにかく後輩を鼓舞しては、どっしり支えようとしています。この素晴らしい立ち振る舞いが私には少し引っ掛かってしまった。私の好きな斎藤八段の魅力は下の立場で居る時の、無類の愛され気質でしたから。

私が斎藤八段に強く惹かれたのは電王戦でのApreyとの一戦に挑む姿を観た時からでした。静かに現れても目を引く若さ弾けるルックス。加えて穏やかで優しい雰囲気の受け答え。期待されて選ばれた棋士なのに自分はその役を担えるほどにファンから認められているのかと自問し苦悩する謙虚さ。その全てが初々しくて、実力に反して自信なさ気に控えるその姿に応援するしかないと思いました。そんな斎藤当時五段が大盤会場でソフトとの対局への意気込みを聞かれて、いつもの模範的な応えではなくファンの懐に飛び込んで来ました。

「私はこう見えて自分では褒められて伸びるタイプだと思っていますので、私では不安という将棋ファンの方々も大勢おられるかとは思いますが、応援していただけると嬉しく、よろしくお願いします。」

ゆっくりと伏し目がちにして、そんな可愛らしいことを言ってくるんだと思いました。長身を屈めて下からグイグイと応援をせがんで来ているようだ。控えめ一辺倒でなく、こういった踏込みが出来る所に私は愛され気質の片鱗を感じ取りました。思えば師匠の畠山八段も「悔しい」と言っていた。出来の良い弟子ではあるが、悪いことをしない訳ではないと。二度ほど大目に見ておいて三度目こそ叱ってやるぞと楽しみにしているのだが、三度目はどうしてもやらかしてくれない。心を読まれているのか、まだかまだかとヤキモキだけさせられていつも終わってしまう。結果、叱らせてくれませんと全然悔しくなさそうに笑っていました。出来が良いだけでなくヤキモキまでさせるという特殊能力。咎める隙は無くとも、目には入ってくる隙があるといえばある。それでいて畠山師匠が目に入れても痛くないという愛弟子が、斎藤慎太郎という男なのです。

そんな斎藤八段が今回は漢をやろうとしているのではないかと見えてしまう。ご褒美を気前よく出してみたり、後手も責任も一手に引き受けてみたり。「後輩の成長に期待したい」「育つきっかけを与えられたら」と自分は援護に回る発言ばかりだ。本格居飛車党の読み深き棋士です。関西将棋界の未来までをも見越しては先を深く読んでいるのかもしれませんが、本人もまだ30歳になったばかり。そんなに先を急いで中堅の役回りを担わなくても良いように思います。後輩も増えたと思いますし自身も十分な実績を積み上げていますが、下の成長に想いを馳せるには少し早いと思ってしまいます。私の願望だけを言えるのであれば、今はまだ主役のリーダーでいて欲しい。柱となる脇役を演じる姿は、もう少し後の楽しみに取っておきたいのです。

長身端正ながら可愛げまである男前。優雅で繊細なのに滅法強い優男。
そんな斎藤八段が畠山師匠のような漢に成長する姿は、大河のような長い物語で観たいと思います。チーム名の由来である漫画キングダムも長い長い成長物語なんですから。

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