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大橋貴洸七段【将棋のこと】

私は将棋を観るのが好きだ。
そして山崎八段ファンです。

久しぶりに将棋連盟のホームページを見る。王座戦の大一番、藤井ー豊島戦の対局日が知りたかったからです。対局予定のページを開いては下へとスクロールしていく。なかなか出て来ない。私の大好きな山崎八段の対局も全く出て来ない。そんな中、予期せぬ写真と言いますか色が目に飛び込んで来て思わず笑ってしまいました。大橋貴洸七段です。

赤メガネに赤ネクタイ、ジャケットも赤というコーディネートまでは見たことがありましたが、背景までもが赤になっていたのには正直驚きました。棋士紹介の写真をいつ撮り直したのでしょうか。最近のことでもないのかもしれませんが私は初めて見たので衝撃。プロと名の付く商売をしているからこそ、ここまで自分に色を付けようと努めている姿には感服いたします。

大橋七段のことは三段時代から気になっていました。次の四段は誰だろうと時より調べるリーグ表を眺めると決まって必ず好成績を上げている。じゃあ次は大橋君かと予想するのに、あともう一歩が届かない。「貴洸タカヒロ」と読めなかった名前にも惹かれました。次点を一つ持って勝ち上がった新人王戦。決勝の三番勝負で先勝しながらも、最後の1勝だけがまたも掴めなかった。黒髪が顔に掛かって静かに俯く対局後の写真を見る。当時、カラーで見たのかモノクロだったのかが思い出せない。ただ何故だかモノクロとして記憶に残っています。落ち着いた大人で色気と雰囲気を纏いながらも妙に陰が似合ってしまう三段。魅力も実力も兼ね備えながらプロにはなれないのかもしれない儚さが漂う。どうしてもこの若者を棋士として見てみたいと思いました。

そんな大橋七段がようやくデビューしたと思ったら途端に色を帯び出した。赤だけに留まらず原色を基調とした色とりどりのスーツを着込む。苦労を重ねた三段リーグを抜けたのですからモノクロの魅力を望んでいる訳ではありません。でもなかなかにカラフル。ひょっとして私が感じた魅力は幻想で、ただの目立ちたがり屋なのかと思いました。しかしインタビューに応える大橋七段はひたすらに控えめ。静かで穏やかで、むしろ目立つことを拒んでいるかのような人柄でした。

どういうこと?

そんな疑問が自然と湧き出ます。人柄とは釣り合わぬ派手な衣装を纏い、色柄とは釣り合えぬ控えめな人物を貫く。大橋七段にとって、あの色スーツは鎧なのだと私は思っています。大人しく控えめな大橋七段は、あのスーツで人目を惹くことで控えていられない状況を作り出しているのだと思う。これだけ派手にぶちかましたのだからと逃げ場を無くして強い勝負を挑む。三段が長かった苦労人だから、実力がありながら最後の一歩が遠かったから、そんな自分を引き上げてくれるアイテムとしてあのド派手なスーツを着込んでいるのだと私は思っています。

もし本当にオシャレとして着ておられるのならば単純にゴメンナサイ。私の勝手な思い違いは、趣味の違いと合わせてお許し願いたい。でも時より上だけを替えた、そんな着回しを見てしまう。それでも色だけは変わらず一際人目を惹く。だからこそ注目と自身への鼓舞の為と思えて仕方がないのです。

大橋七段といえば執筆した戦術本のタイトルが長かったことでも有名。少しでも違いを出しては手に取って読んでもらいたいとご本人が提案されたタイトルと聞きます。それが目論見通りでヒット。本が売れた後から戦術が流行り、結果、升田幸三賞まで受賞するという偉業まで成し遂げます。常識人であるからこそ人が注目する突飛な行いが解る。何が普通であってどうやって外すべきかをいつも考えているプロだと思います。それでいて戦術は評価を受けるほどに独創的。その実力だけはもう控えてはいられないのです。

藤井七冠が無双状態の今。唯一、勝ち越してるともいえる同期の大橋七段。通算4勝2敗は、番勝負であっても勝ってしまうスコアです。順位戦はB1、通算勝率も7割。もはやスーツの色関係なく注目される棋士となりました。でも、せっかく付けた色という個性は大事。近く見られるであろう色鮮やかな着物とド派手な結果を大いに期待しています。プラスその格好で話す控えめなスピーチも。


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