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【リライト記事】RPGへの愛が注ぎ込まれたSFC・PSライクの快作『アライアンス・アライブ』というゲームの話を聞いてくれ。

ノンジャンル人生です。
自分が一推ししていたニンテンドー3DSのRPG『アライアンス・アライブ』がHDリマスター化されてPS4、Nintendo Switchに移植されることが決定しました。

本作は賛否があった同スタッフの前作「レジェンドオブレガシー」と比べ、シナリオや探索を強化しつつ遊びやすいゲームバランスに仕上がっており、万人にオススメしやすいタイトルとなっています。

しかし、「PS4版ドラクエ11」や「FF15」、「ゼノブレイド2」や「ニーア オートマタ」のような大作RPG、あるいはGOTYを総なめした「ブレスオブザワイルド」と比較すると、3DSの規模で中小メーカーが作ったゲームである以上、どうしても見劣りしてしまうのも事実。

ですが、いや、だからこそ、このRPGの魅力をちゃんと語るべきだと思っています。たしかに、アライアンス・アライブは最新鋭のグラフィックも数百時間遊べるボリュームもないタイトルです。しかし、長いRPGの歴史の中で“失われつつあったもの”を掘り起こし、かつ現代風のプレイフィールに仕上げた本作は、単に優劣だけで終わらせてはいけない魅力があると思っています。

今回は、当時のブログに本気で書いた紹介記事をリライトしたものを載せます。先に言っておきます。この元記事は6,000文字と、アホみたいに長いです。ですが、この熱量自体は削るべきではないと判断し、大幅に短くしたりはせずに校正し直して掲載します。

※今回のnoteは3DS版を元にしており、リマスターでは内容が変わる可能性があります。

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2017年にニンテンドー3DSにて発売された群像劇RPG、『アライアンス・アライブ』。発売元はフリュー、「サガ」シリーズのバトルデザインを手がける小泉今日治氏や作曲家の浜渦正志氏など、前作「レジェンドオブレガシー」のスタッフが引き続き参加し、それに加え「幻想水滸伝」シリーズの村山吉隆氏がシナリオを手がけています。開発はキャトルコール。こちらの前身はデータイーストで、過去には「メタルマックス」「ヘラクレスの栄光」などを手がけています。

先に結論から言うと、めちゃくちゃ面白かったです

純粋でまっすぐな物語とキャラクター、ロマンあふれる世界観とBGM、ゲームテンポの早さ、フィールド探索の楽しさ、駆け引きが熱い戦闘など、RPGの魅力がバランスよく丁寧に作り込まれています。そして何より、スタッフのRPGに対する愛が注ぎ込まれ、「自分が遊びたかったRPG」を叶えてくれた作品でした。

本作は発売当時、SNSを中心に高く評価をされており、ツイッターのハッシュタグ「#アラアラ」ではスクショや感想やイラストが飛び交い、小売では売り切れる店舗が出るほどでした。有名なスタッフが参加しているものの、けして開発・販売規模の大きくない、しかも前作の評判が著しくなかったゲームが口コミで評価されたのか、このタイトルをよく知らない方にとっては不思議かもしれません。

アラアラの名物、COMG!中条店。激推しの結果、松浦Pが来店したり、キャラデザの平尾先生のサインをもらったり、電撃に取材されている。

さらに付け加えれば、本作は近年の大作RPGのトレンドとは逆のスタンスを取っています。例えばボイスの類いは一切なく、クエストも非採用、ゲームボリュームも多いわけでなく、シナリオの大筋はびっくりするほどベタです。しかし、そういった本作から垣間見えるのは、スーパーファミコンからプレイステーションにかけての「RPG黄金期」にあって、今に至るまでに“失われたもの”を取り戻そうとする試みです。

アライアンス・アライブは一体どんなゲームなのか、じっくりと紹介したいと思います。今回はだいぶ長いですが、ぜひお付き合いくださいませ。

空が閉ざされた世界にて、種族も価値観も違う仲間達が集結する

アライアンス・アライブの世界は、「魔族」によって人間達が支配され、「黒き流れ」という海流により分断されています。魔族に仕える「妖魔」の圧政に苦しむ「雨の都スヴァルナ」では、人間達が彼らにて抵抗すべく秘密裏にレジスタンスを結成しています。

レジスタンスのリーダーに育てられた「ガリル」「アーシュラ」は、最近見つかった「閉鎖美術館」と呼ばれる遺跡に、人間達が支配される前の“青い空”が描かれた絵があるという噂を聞きます。ふたりはこっそりとその遺跡へ忍び込みますが、遺跡で見つけた“あるもの”がきっかけで、彼らの運命が大きく変わっていきます。

「群像劇RPG」と名乗る本作では明確な主人公はおらず、物語前半部では操作キャラクターがシーンごとに切り替わっていきます。物語の導入となる少年少女のガリルアーシュラ、レジスタンスの一員として彼らを支えるレンツォと妖魔のバルバローザ、魔族でありながら人間に興味を持つビビアンと彼女の執事であるイグナス、12歳の天才発明家のティギー、人間でありながら魔族に与するジーンと用心棒のレイチェル、この9人が主な操作キャラクターです。本作では操作キャラによってイベントや調べた物に対する反応が変わるので、自分の好きなキャラを自分の物語の主人公として遊ぶことができます。

本作が群像劇を名乗っている理由はこれだけでありません。ゲーム中盤以降、世界各地でギルドに加わる人材をスカウトできるようになり、拠点へ人が大量に乗り込んでくるようになります。ここの部分は幻想水滸伝シリーズの宿星集めにかなり近いです。彼らは「テレグラフ」という機能を使いメッセージを送ってくるので、今まで助けた人や関わった人と共に冒険しているような感覚を味わえます。世界中の人達と協力して、分断された世界を皆で繋いでいくのは、本作の大きな魅力のひとつだと思います。

ギルド員はプレイ次第では150人以上仲間になり、主人公たちを支援する。ギルドを建ててリンクさせことで支援効果も強力になっていく。

また、背景となる世界観こそ暗いですが、キャラクター達が明るいのも本作の特徴です。キャラ同士の掛け合いはユーモアがあって可愛らしく、仕草や表情がコロコロ変わるので見てて飽きません。個人的には女性のRPGファンにもおすすめできます。

◆ゲームテンポの良さと、自由で密度の濃い「遊び」

アライアンス・アライブのプレイ時間は、シナリオをクリアするだけなら30時間、寄り道をしながらクリアするなら60時間ほどと、100時間を超えることが多い近年のRPGとしてはかなり割り切っています。なら遊べる要素が足りないかというと、むしろ長いイベントシーンや戦闘演出を徹底的に省くことで、RPGとしての面白さを短時間の中に凝縮させています。

本作ではフィールドマップの至る所に寄り道要素が散りばめられており、メインシナリオより強いユニークモンスターがいたり、寄る必要のないエリアにサブイベントが配置されています。シナリオ進行具合によって様々な乗り物が登場するので、それまで踏み込めなかったところまで探索範囲が広がっていきます。フィールド以外にも、以前行ったことのある街やダンジョンに新しいイベントが隠されていることがあり、プレイヤーの「もしかして?」に応えるような作りになっています。

本作の象徴とも言える「オーニソプター」。滑空と羽ばたきで探索範囲が広がる。

またサブイベントでは二者択一の選択肢が多く、選んだ選択によって後々の結果が変わってきます。細かな反応や報酬が変わるため、プレイヤーごとに少しずつ違う展開が用意されます。3DSでは珍しいスクショ機能も相まって、自分がどんなプレイをしたかをSNSに投稿したくなる作りになっています。

探索やサブイベント、ギルドの強化や後述の戦闘と育成も含め、本作はとにかくプレイヤーが自由に選んで遊べる要素が多いです。また、シンボル式エンカウント、戦闘スピードの2倍・4倍速への切り替えなど、ゲームを遊ぶペースを自由にコントロールすることができます。様々な遊び方をプレイヤーに投げかけ、手探りで自分のプレイスタイルを組み立てることができる本作は、とても「ゲーム」らしいRPGであると思います。

◆プレイヤー自身がドラマを生み出す、駆け引きが熱いバトルと育成

アライアンス・アライブは前作「レジェンドオブレガシー」同様、サガシリーズ系統のターン制バトルシステムを継承しています。サガのひらめきにあたる「覚醒」によって戦闘中に技を覚えるのはもちろん、装備武器の自由度の高さ、陣形による役割分担、戦闘後のステータス成長などおなじみのものが多いです。

武器ごとにどんどん技を習得していくが、サガのように戦闘回数での敵強化はないので、安心して育成できる。

本作の戦闘難易度は、サガシリーズや前作レジェンドオブレガシーと比べると、メインシナリオを突破するだけならそこまで高くはありません。しかし水辺に生息する「水魔」など、脇道に逸れると凶悪な敵が生息しています。しかも定期的に強力な大技を使って来ることが多く、闇雲に挑んでも返り討ちにされるでしょう。

そんな状況を打開するのが「イグニッション」と「ファイナルストライク。ダメージを受けたり味方が戦闘不能になるとイグニッション状態になり、武器ごとに秘められた必殺技を叩き込むことができるようになります。ただしリスクもあり、一度使うと武器が破損し、その戦闘では再び使うことができなくなります。

このバランスが絶妙で、大技を食らってパーティ壊滅の危機に陥った時に発動するケースが多く、土壇場でファイナルストライクを当てれば勝てるか、それとも立て直した方が良いか、ギリギリのラインを見極める駆け引きが非常に熱い!!ピンチからの逆転劇をプレイヤー自身が作り出すことができ、BGMやシナリオの盛り上がるシーンと合致した場合は最高にドラマチックな戦闘が繰り広げることができます。

ファイナルストライクはまさに“最後の切り札”。ここぞという時に役立つ。

育成面では、戦闘することで溜まる「タレント」を「資質」に振り分けることができます。資質には武器ごとの新技覚醒率を上げたり、SPの消費量や敵から狙われる確率を減らしたりと、それぞれのキャラへ個性付けすることができます。適正はある程度あるものの、お嬢様のビビアンをパワータイプにするなんてことも可能です。

総合的な戦術性も高く、陣形を組むことで敵の狙いをコントロールしたり、盾役に攻撃を引き受けてもらったりと、プレイヤーが自ら作戦を考えて実践する楽しさがあります。覚醒、ファイナルストライク、陣形、バフデバフ、装備の防御属性、ギルド支援など、ありとあらゆる戦術が用意されているので、遊ぶ人の想像力によってまったく違う戦い方が生まれると思います(ちなみにゴリ押しでも全然行けます)

◆“あの頃”のRPGファンにこそ、このゲームをオススメしたい

間口が広いので、年齢性別問わず多くの人にオススメできる本作ですが、RPGのトレンドとは逆のスタンスを取っているゆえに、誰しも合う作品でないと思います。特に、RPGにおいてコンプリートを一番の目標にしていたり、完璧なプレイを求めるプレイヤーには、本作は合わないと思います。

電撃のインタビュー記事で松浦Pが語っている通り、強力な装備を手に入る代わりにギルド員が仲間にならなくなるなど、サブイベントでは何かを得る代わりに何かを失うケースが数多くあります。取り返しがつかず、結果が出るまで時間がかかるため、最良の結果を得ればなくてはいけないプレイヤーにとっては遊びづらいかもしれません。かといって最初から攻略情報を見ながら遊んでしまえば、探索要素の強い本作の魅力が大きく落ちると思います。気楽に自分の好きな選択をできる方のほうが、アライアンス・アライブをより楽しめるでしょう(ちなみに取り逃しをしても育成と戦術で大半なんとかなりますし、NEWGAME+で2週目をすればコンプは可能です)

また、合わないとは言わずとも、「PS2以降のRPG」の方が好きなプレイヤーはあまり満足できないかもしれません。ハード性能が上がったPS2以降の日本のRPGは、「シナリオの強化」、「解像度の高いグラフィック」、「プレイ時間の増加」、上記の「コンプリート性」を高めてきました。シナリオ・グラフィック・ボリューム・やり込みと言う人気要素に特化したRPGに比べると、アライアンス・アライブは平均点の高い優等生ではあるものの、突き抜けたRPGではないかもしれません。

それでも自分が本作を強く推す理由は、「あの頃のRPGの楽しさって、こういうことだったよね」という部分が惜しみなく詰め込まれているからです。

例えば「FFX」が発売された頃、グラフィックやシナリオに満足したけれど、飛行艇による空の旅がなくなって残念だった人は少なからずいたでしょう。他にも、次にどうなるかわからない行き当たりばったりの選択肢、本編とはまったく関係のない寄り道、どんどん進んでいくテンポの良いシナリオと戦闘、ゆるく砕けた台詞回し、デフォルメで可愛らしいキャラクター造形、こういった要素は時が経つにつれどんどん削られていきました。ですが、記憶に残らないような小さな魅力の積み重ねこそ、RPGが広く愛された理由のひとつだと思うのです。

本作はこういった要素を再び取り上げただけでなく、ちゃんと現代向けに最適化した上で形にしています。例えば3D化されたグラフィック、ワンボタンによる戦闘高速化、バフ・デバフなど現代的な戦術性、資質などの自由なキャラカスタマイズ、デスペナルティの低さ、クイックセーブなどなど。それらを踏まえると、アライアンス・アライブは『現代の技術で再現されたSFC・PSライクのRPG』と言えると思います。

大作傾向にある近年のRPGの中でも、物語や遊び心地が軽やかなのが本作の強み。

3DSのパッケージ版だと、今では珍しい「紙の説明書」が付いてくる!

◆物語は幕を閉じ、いつの日かの再会を願う

ということで、このゲームのおかげで最高に楽しい時間を過ごせました。楽しすぎて、物語の終わりが見えた時は結構ショックでしたね。ゲーム終盤が駆け足気味であったり、いくつかの伏線が散らかったままだったりしたのが本作の欠点です。ですが、それを差し引いても満足度は高かったですし、終わりを惜しめる作品は良い作品だと思います。物語も綺麗に終わりますし。

あらためて考えると本作のスタッフは、今まで「王道」とは別の道を歩いていた人達ばかりなんですね。サガ、幻想水滸伝、メタルマックスやヘラクレスの栄光など、鋭い作風ばかり。じゃあそういった人達があらためて万人向けの王道作品に挑んだ時何かできるのかを、本作は示してくれました。

確かに今時のRPGではないかもしれないけれど、謎の散りばめられた世界観と前向きで明るいキャラクター達、どこか懐かしくも穏やかで心地よい空気感、ドラマを自分で生み出すバトル、そこにあるのはRPGに対する愛が注ぎ込まれた快作でした。

グラフィックも3DSの解像度ながら色彩豊かに表現されている。

最後の言及になりましたが、浜渦正志氏のBGMが本当に素晴らしく、世界ごとの雰囲気作りや激戦での盛り上がりなど、この世界に何時間でも居たくさせてくれました。特に「飛翔」という楽曲は、“もし浜渦氏がワールドマップでの飛行BGMを作ったら”という問いに答えてくれた、最高の楽曲でした。これが流れた後、直前の激闘も相まってか、泣ける場面ではないはずなのにボロボロに泣いてしまいましたw BGMはもちろん、足音や雨音などあらゆる「音」の使い方が丁寧なので、イヤホンなどでのプレイをオススメします(3DSのスピーカーだと拾ってくれない音もありました)。

以上です。ここまで自分と波長の合ったRPGは本当に久しぶりでしたし、楽しい時間がずっと続いて欲しかった作品でした。興味を持った方はリマスターの発売を待つか、3DSの体験版を触るのが良いと思います。

またいつか同スタッフによる次回作が発売することを願いつつ、今はリマスターされたことを喜びたいと思います。素晴らしいRPGをありがとうございました。ではでは。

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