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回想録:「クロノ・クロス」 Ⅰ.失われた時の記憶は水底に眠る

かつて星のみた夢が、闇をしりぞけ、ひとつの未来を生んだ。しかしそれは新たな悪夢の幕開けでもあった…。
伝説の「凍てついた炎」をめぐり、龍と人と運命の、時空を越えた最後の闘いが始まろうとしていた
…。
星のみる夢は、まだ終わらない……(クロノ・クロス 体験版より)

ノンジャンル人生です。
早い段階でこのゲームの話はしたいなと思っていました。思い入れのあるゲームは多々あれど、自分に多大な影響を与えたのはこのゲームを置いて他にありません。

しかしながら「クロノ・クロス」厄介なゲームでもあり、巷の批判に関してもうなずけてしまう自分もいます。今回は、未だ最高のRPGとしてよく挙げられる「クロノ・トリガー」の血を継ぎながらも、全く異なる道を辿った本作について語ろうと思います。

「クロノ・クロス」の舞台は平行世界

まず本作を知らない人向けに簡単な概要でも。クロノ・クロスとは1999年にスクウェアから発売されたRPGで、名作クロノ・トリガーの世界観を引き継いでいます。トリガーがタイムトラベルという"縦"の時間軸がテーマなのに対し、クロスは平行世界という"横"の時間軸をテーマにした物語です。

あらすじは以下の通り。

ーあらすじー
アルニ村に住む主人公セルジュは、ある日コドモ大トカゲのウロコをプレゼントするため、幼馴染レナが待つオパーサの浜へと向かった。だが彼女と話している途中、不気味な波に飲まれて気を失う。

目覚めたセルジュは村に戻るも、親しいはずのレナや村人たちが何故か自分のことなど知らないと言う。そしてレナが告げたのは、セルジュという名の少年は10年前に死んでいるという事実だった。

真実を追うため自分の墓に向かったセルジュだったが、噂を聞いてやってきた「アカシア竜騎士団」に亡霊と呼ばわりされて捕まりそうになる。その危機に現れたのが、自らを盗賊と名乗る少女「キッド」だった。

セルジュとキッドの出会いをきっかけに、2つの平行世界を巡る壮大な冒険が始まろうとしていた……。

・・・めちゃくちゃ面白そうな始まりですよね??

ただ、このあらすじから分かる通り、クロノ・クロスは大人向けの物語です。クロノ・トリガーの「少年ジャンプ」的な空気感は鳴りを潜め、代わりに"生"と"死"の哲学がより強くにじみ出ています。

その結果トリガーの続編を望む人達とのミスマッチに合わせ、前作でプレイヤーが救った世界に対する容赦ない展開によって、クロスは20年経った今でも賛否の分かれる作品として語られています。

クロノの名を冠しても作風が全く異なるクロス。それもそのはず、本作はトリガーの続編と言うよりも、古代魔法王国ジール編の補完の意味合いが強いのです。

幻の作品「ラジカル・ドリーマーズ」との関係

かつてスクウェアには、幻と呼ばれるタイトルがありました。それはスーパーファミコンのサテラビューでのみで配信されたサウンドノベル「ラジカル・ドリーマーズ~盗めない宝石~」です。

本作はヤマネコ大君の館に潜入した3人の盗賊の物語です。そして主人公の名前は「セルジュ」、ヒロインは「キッド」です。

そして、そこで語られるのはトリガーで行方不明になったジール王国の王女サラにまつわる物語であり、このラジカル・ドリーマーズをベースに作り上げたのがクロノ・クロスなのです。

(※3人目の盗賊仲間「ギル」も非常に重要なキャラですが、本論から大きく外れてしまうので、コラムでの説明は省きます……)

クロスが歩んだ「愛と憎しみ」の物語

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スクウェア・エニックス ゲーム紹介ページより

古代魔法王国ジールという、トリガーの中でも核心的かつ異質な部分から生まれたクロノクロス。セルジュとキッドの出会いから始まる物語は、2つの平行世界の話だけでは留まれず、プレイヤーの選択肢で決まる種族の存続と滅亡、トリガー後に起こった悲劇、殺された過去からの復讐と、鋭利な刃を持ってプレイヤーを刺しに来ます。

特に中盤からの展開は衝撃的でしょう。自分が死んでしまった世界に投げ出されたプレイヤーに対し、本作ではもう一段階アイデンティティを揺るがす事件が待ち受けています。(ここに関しては次回ネタバレ込みでガッツリ書かせて頂きます)

終盤では物語が核心に迫るたび、複雑に張り巡らされた伏線が露呈し、プレイヤーをさらなる謎の渦へと飲み込んでいきます。一方で、よく分からないままラスボスを倒して呆気にとられた方も少なくないでしょう。自分もそうでした。実はラスボスには正しい倒し方があり、ちゃんと物語を理解していないとトゥルーエンドへたどり着けない構造になっています。

その物語を理解するための重要なキーワードとして、クロス全編を通してプレイヤーに突きつけられる「愛と憎しみ」というテーマへと繋がってゆきます。


……このように、続編と名乗るにはあまりにも違う道を選んだクロノ・クロス。受け入れがたくて拒んだ方はけして少ないと思っています。

しかし自分のように刺さったトゲが抜けなかったからこそ、真実を求めて何周もプレイし、その深淵を垣間見たゆえに、今でもこの作品を深く愛している人も中にはいるかもしれません。実際、本作単独での20周年ライブは大盛況で幕を閉じました。

クロノ・クロスがプレイヤーに語ろうとしたものは一体何なのか。回想録は次回に続きます。

それではまた。

©1999 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. ©1999 結城信輝
※本noteは2018年5月に投稿したものを、2020年に再校正して公開しています。

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