日本はフューチャーを考えられなかった土地柄なのかもしれないって話。

 面白い記事を読みまして。

 盛岡市の隣にあるベッドタウン、岩手県矢巾町。この人口2万7000人ほどの町で、2023年度までのまちづくりの方針を定める「第7次総合計画(後期)」をつくる作業が本格化している。
 2019年5月16日、住民代表の60人が計画について意見を述べる委員会の初会合が公民館で開かれた。自治体がこうした計画をまとめる時、さまざまな形で住民の意見を集めるのはふつうのことだが、矢巾町は一風変わった手法を取り入れている。
「あなたは2060年の矢巾町にタイムスリップしました。2019年当時の人たちが、これからどのようにインフラ整備を進めようか考えていたことを知って、さまざまな感情が芽生えているものとします。2019年の矢巾町の人たちにどのようなメッセージを送りたいですか?」
 こんなメッセージが正面のスクリーンに映し出され、30分ほどの間、住民は数人ずつ10班に分かれて話し合った。
「私たちがいまガマンすれば、未来の人たちにメリットがある」。いまの民主主義のシステムのもとではそのような政策は先送りされ、「現世利益」につながる政策が推し進められがちだ。
 もちろん自治体だけではない。国レベルでも費用対効果が怪しいインフラの建設は止まらず、年金や医療費の「効率化」や、地球温暖化を防ぐための環境規制の強化もなかなか進まない。一方、借金は雪ダルマ式に膨らみ、先進国で最悪レベルの財政は悪化を続け、豪雨被害など気候変動の影響は深刻さを増すばかりだ。
 持続可能な社会を未来に引き継いでいくためにはどうすればいいのか?その方策を科学的に追求するのが「フューチャー・デザイン」と呼ばれる研究領域だ。
 2012年に大阪大学の研究者らが提唱。ほかの大学やシンクタンクの経済学、倫理学、脳科学といったさまざまな分野の研究者も加わり、広がりを見せている。
 フューチャー・デザインの代表的な手法が、矢巾町で実践されている「今を生きる人たちが仮想将来世代になりきり、意見を述べる」というものだ。
「私たちの目標は、民主主義のあり方を変えることです」
 研究グループの中心となって活動する、総合地球環境学研究所のプログラムディレクターで高知工科大学教授も務める西條辰義さんはそう話す。
 例えば国レベルでは、霞が関に将来世代の立場から政策を立案する「将来省」を設立する。または、各省庁にそうした役割を担う「将来課」を設ける。参議院を衣替えして、議員たちが仮想将来世代として議論する「将来議院」にする——。そんな具体的な提言もしている。
 とはいえ「将来世代の立場から意見を述べてください」と言われたとして、人々は本気でそうするのだろうか?未来人を演じるフリをして、今の自分にトクになるような意見を言うのでは?そんな疑問を持つ人も多いだろう。
 研究グループによる実験や矢巾町での実践の結果によれば、趣旨をきちんと説明するといった手順さえ踏めば、大半の人はちゃんと「仮想将来世代」の立場から発言するようになるという。ただ、人がなぜそのように行動するのかを調べようとしている脳科学者もいるものの、詳しいメカニズムの解明はこれからだ。
「自分の現在の利得が減るとしても、それが将来世代を豊かにするのなら、そうした意思決定や行動、さらにはそのように考えることそのものが幸福につながる。もともと人間にはそんな性質があるのだと考えています。
ただ、いまの民主主義や市場経済の仕組みのもとでは、そうした性質は覆い隠されてしまいがちです。それをアクティベートしようという取り組みが、フューチャー・デザインなのです」(西條さん)

 なるほどフューチャーデザインねえ。最近はフューチャーセッションなんていう言葉もナウいみたいっすね。

フューチャーセッションは、現場の多様なステークホルダーに加え、想像力を働かせて「未来のステークホルダー」も招き入れることで、創造的な関係性を生み出します。お互いが尊敬の念をもって傾聴し合い、未来に向けての「新たな関係性」と「新たなアイデア」を生み出します。その結果として、それぞれのステークホルダーが認識と行動を変化させ、協力してアクションを起こせる状況を生み出します。

 以前、劇作家の岸井大輔さんが、「日本の民主主義は、死者にも一票与えていることが特徴」とおっしゃっていたのを思い出す話で。死者にも一票与えるっていうのはどういうことかっていうと、「ここはおじいさんが開拓した土地だから、譲れない」とか「先代が始めた会社を自分が潰すわけにはいかない」みたいに、死人の顔を立てますが、あれですね。本来、これからのことに発言権がないはずの死者が、あたかも発言しているかのようです。少なくとも、生者が死者を代弁している。生者が死人を代弁して権利を語るわけですから、いわばフューチャー・セッションならぬ、パスト・セッションですね。フューチャー・アンド・パストっていいますけど、ノットフューチャー・バットパストなんすよね。

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