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vol.5 不実な恋愛の行く末…

彼女との初夜を明かし、何とも言えない高揚感を感じていた。
いつもと同じ時間に目は覚めたものの、まだ昨夜の感触がハッキリと私の手が、身体が覚えている。

越えてしまった一線

帰宅してからシャワーも浴びずに眠ってしまった。
私の身体から彼女の芳りがするのを感じ、妙に興奮してしまっていた。
ついさっきまでこの腕で彼女を抱き締めていた。
ほんの数時間前に彼女を全身で感じていたんだ。
そして彼女も私を全力で求めていた…

ダメだ、このままでは膨張が治るどころか溢れてしまう。
余韻が名残惜しくはあったが、とにかくシャワーを浴びて気持ちを父親モードへと戻さなければとベッドから這い出した。

まだ春先の朝は少し肌寒く、冷たいシャワーを浴びるには時期が早過ぎた。
それでもあえて冷たいシャワーで気持ちを切り替えた。切り替えようと努力した。
しかし、いきり立つ身体はその緊張を解こうとはしなかった。
確かに私自身は果てていない。
そっと触れるだけでも脳天を打たれたかのような快感が襲う。
20代後半にもなって、2人も子供を持つ男にもなって、童貞が初体験を迎えた時のような青さだ。
軽く爪を立てただけで果ててしまった。
それほどまでに張り詰めていた。
しかし、これで緊張が治るだろうと思ったのは甘かった。
そもそも体力には自信があったし、通常のSEXであっても一度で終わるようなことはない。
結局シャワーを浴びながら3度の空撃ちでようやく身体の緊張が解けた。
これではまるで高校生だ…

シャワーを終えリビングに行くと、子供達がテレビに齧り付いていた。
私のDVDボックスからお気に入りの映画を持ち出して楽しんでいる。

「おはよ。」
「パパ、お腹空いたよ。」
「さんどいっちたべたい。」

まだ2歳の息子の要望に応え、タマゴサンドとハムチーズサンドを手早く準備した。
慣れたものだ。
普段の日はダスティン・ホフマンばりにフレンチトーストを作る。
サンドウィッチで済む日は時間もかからずラッキーだ。

「今日はアンちゃんの家に行かないの?」

彼女の娘のことだ。
昨夜は特に約束もしないで別れたが、どうしても遊びたいと切望する娘に負け朝食を食べたら連絡すると伝えた。
この頃は正直遊ぶ約束など必要もなかったのだが、今思えば子供を口実に会うことの正当化をしていたんだと思う。

-今日も遊びに行って平気?-
-私が午後から美容院だから娘お願いしてもいい?-
-OK-

子どもを預け合うのも慣れたものだ。
信頼の一言に尽きるのだろう。
以前旦那に子供を任せた時には、食事もロクに作ることができずワザワザ都内の有名レストランまで空腹を訴える子供を連れて2時間も離れた店に電車で行っていたと言う。
私はそもそも料理が得意だということもあり、娘からも「みいちゃんパパのご飯が食べたい」と聞いていたそうだ。

-少ししたら行くよ-
-早く来てね💋-

こんなやり取り1つで、自分達が会いたがっているという気持ちを子供達の遊びたい欲求を満たすための行為として挿げ替えていた。

キスって…こんなに気持ちが良いものなの…?

午前中は彼女の家でゆっくりと過ごしていた。
玄関を開けると目の前には二階へと続く階段があり、その先にあるダイニングキッチンが丸見えとなる作りになっていた。
ダイニングに座ると二階の様子も伺えるのだが、リビングスペースは全くの隔離スペースでブラインドを閉めると完璧なデッドスペーストなる。
そこのソファに2人で座り、コーヒーを飲みながら彼女をマッサージしていた。

「何でこんなに万能なの?」
「さて、何ででしょう。」

はっきり言って私にできないことは少なかった。
流暢にピアノを弾くことと出産以外であればほとんど卒なく熟すことができたのだ。
マッサージなど朝飯前だ。
それこそ自ら鍼治療することもできるほどに。

「パパはこんなことしてくれないよ。
むしろ私に頼むくせに下手くそだからいいなんて言って怒ってふて寝しちゃう。」
「まぁ人それぞれだからね。」
「貴方と一緒にいたらこうやって触れ合う時間がたくさんあるんだね。」

そう言って私に笑顔を向けた彼女は、昨夜の出来事を思い出したかのように目を見開いて顔を伏せてしまった。

(今日は我慢してね。)

耳元で囁くように言うと、私の吐息を感じたのか目を閉じ大きく顎を持ち上げ息を飲んだ。
顕となった首元に指を這わせると、掴むところを探すかのように私の太腿に手をやった。
彼女の呼吸が荒くなるのを感じる。
首元から指を口元に移すと、彼女は私の指を舐った。
彼女の体温が上がるのを感じていた。
見た目でも分かるほどに彼女の胸元には2つの突起が浮き出てしまっている。
擦り合わせる太腿がやけに淫らで、目の前にある頸には薄っすらと汗が滲んでいた。
この芳り、女性が上気している時に発する芳り。
私は頸に顔を埋め大きく吸い込んだ。
良い芳りだ。
鼻先から後頭部に抜ける様な強い刺激が走った。
女性ホルモン、男を惑わす魅惑の芳りだ。

(続きはまた今度だ。)

時計を見ると11:35だった。
彼女は美容院へと向かわなければならない。
私は子供達と少し離れた公園へと出かけるつもりだった。
立ち上がろうとすると、背中から彼女が抱き着いてきたので、振り返り彼女の顎を持ち上げ溶けるほど熱いキスをしてやった。
首に手を回そうとしてきたが、それを押さえ私は彼女の耳を塞いだ。
音というのは興奮を盛り上げる効果がある。
絡め合う舌の音が彼女の鼓膜に直接反響するのだ。
それはまるで大型スピーカーの前で重低音の音楽を大音量で聴いているかの様な衝撃が伝わる。
サッと身を引くと、彼女はその場にへたり込んでしまった。
腰が抜けてしまったのだ。

「キスって…こんなに気持ちが良いものなの…?」
「さて、どうでしょう?」

笑顔で首を傾げてみせた。
跪きもう一度、今度はとても軽いキスをして私は子供達の元へと向かった。

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