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vol.8 不実な恋愛の行く末…

日曜にクラス全体の親が集まり謝恩会の案を練ってから2日が経った。
私は何も変わらない毎日を過ごしていたのだ。
だが、彼女の生活は大きな波乱を迎えていたことを後から知った…

anti group

保育園生活の中で、私は彼女とは違う別グループの中に属していた。
皆子供が2人以上で、上下の年齢が同じという今後も付き合い続けなければならない面子が揃っていたのだ。
かなり賑やかなグループだったし、自己主張の塊というか目立つ存在であったのは確かだ。

彼女との付き合いとグループでの付き合い、これの両立は難しくなかった。
グループの面子は私よりも迎えが早かったし、園行事後の食事会や二次会以外での絡みはほとんどなかったからだ。

公園の集まりから3日目の朝、私はある事件に巻き込まれることになったのだ…

珍しく寝坊した私は、彼女への連絡もできずに子供達の準備に駆け回っていた。
何度かLINEが飛んで来ていたのは分かっていたが、出発15分前に起きた私に余裕はなかった。
だが、電話の着信となれば話は別だ。
一旦手を止め、相手も確認せずに鳴り出した携帯に出た。

「はい、神永です。」
「あ、たっちゃん?」
「若菜ちゃんか、どうした?」
「朝…ちょっと話せない?」
「分かった。寝坊して急いでるからまた後でね。」
「うん、ごめんね。後で。」

電話を切り、大急ぎで子供達の準備を済ませ髭も剃らずに家を出た。
彼女が話したいこととは何なのか。
それを考えながら保育園に向かっていたが、きっとまた旦那の愚痴なのだろうとこの時は然程深刻に思っていなかったのだ。
いつもの場所で彼女の車が後ろに来ない。
もしかしたら既に送った後なのだろうかと思いながら保育園に到着すると、既に彼女が待っていた。

「おはよ。」
「うん…」

何だか元気がない。心無しか目の下にクマがあるように見えた。
とにかく子供達を預けて外に出ると、すぐ近くのコンビニに行こうと言う。
確かに朝から保育園で旦那の愚痴なんて不味いよなと思ったので車を走らせた。

「待ってて。」

彼女がコーヒーを買って来てくれた。
これは少し長い話になるのだと察した。

「どうした?」
「うん…この前の謝恩会の集まりしたでしょ?」
「ああ、上手くまとまってるんでしょ?」
「それなんだけど…」

全てを自分から引き受けてこの2日間様々な手配をしてきたと言う彼女は、なぜか涙を流し出した。
これに狼狽えるなと言うのであれば、君は感情がない人間なのだろう。
私はもちろん狼狽えた。
訳の分からない突然の涙なんて、何をどう慰めれば良いのやら…

「ごめん…あのね、美園ちゃんママ達って仲良いよね?」
「そうだね、俺も一緒にいるけど。」
「…昨日も一昨日も夜に電話が来るんだ。」
「電話?」
「自分達に仕切らせろって…」
「いいんじゃない?やりたいならやらせれば。」
「そうじゃないの…」

この2日間彼女が作り上げた土台をそのまま使わせろと言うことであれば構わなかったのだそうだ。
完成形にするまでを彼女にやらせ、当日前に自分では仕切りきれないから実権を譲ることを宣言しろということなのだと言う。
やりたいなら全てを任せたいと彼女は泣いた。

「勝手にシフトチェンジはできないの?」
「美園ちゃんママって、上の子の時に謝恩会仕切ろうとして虐められたんだって…」
「だから?」
「その人達の目が怖くて自分から前に出るのが怖いんだけど、私がお願いした形になれば仕方なくやってるって見せられるからって…」
「なに?その学生の虐めみたいなしょうもないやつ。」
「私、そんな宣言しなきゃいけないの?
他にも嫌なことを言う人はいるんだけど、それは金銭的な話とかだから協力してもらえば済む話なの。
でもこれは…」

なんてくだらない…正直面倒臭いと言う言葉が相応しかった。
だが、愛しているこの女性が苦しんでいる姿を見て放っておけるほど無神経ではいられなかったのだ。

「ちょっと話してみようか?やりたいなら一緒にやればいいって。」
「…私もそう言ったの。でもね、前の人達の目がって譲らなくて。」
「まぁ聞いてみるよ。」
「…仕事中もその話がメールで何度も来るの。」

10分、13分、14分…何だこれは?
間髪を容れず5人のママ達からメールが引っ切り無しに入っている。

「えと…暇なの?」
「知らないよ。でもこれは凄く困る。私は仕事で電話も使うし、メールの返信をしないと電話が来るから…
昨日なんて商談中に電話が来て本当に困ったし…」
「それは酷いね、後で話してみるよ。」

45分だ。
この話を事細かに説明された時間。
そして、旦那にも相談したが相手にしてくれず勝手にしろという返答しか来なかったという不安を20分聞き続けた。
寝坊した私にしたらかなりの時間のロスだった…

antiとの対話

-江藤さんから色々相談されたんだけど、謝恩会の仕切りやりたいなら一緒にやればいいんじゃない?
全員の前でしたくもない宣言をさせるのは強要だよ?
美園ちゃんママが前に謝恩会関係で虐められたらしいけど、一緒にやりつつフェードアウトしてもらえば済む話ならそれで良いと思うんだけどダメなの?-

仕事中に美園ちゃんママに送ったLINEに返信してきたのはグループの中で最も不良色の強い海野さんだった。

-美園ママが前に虐められたの知ってて何でそんなこと言えんの?
私達が美園ママ守ったらいけないの?
皆に私達が仕切るって伝えなかったらしゃしゃってるって思われるじゃん。
それがまた虐めてたママ達に伝わったら美園ママがまた虐められるんだよ?
ちょっとぐらい協力してくれたっていいんじゃないの。-

…何て自己中な考え方なんだと思った。
私の中には無い考え方だったし、誰かを吊るし上げる必要がある問題ではないということが理解されないこと自体が私には理解不能だった。
しかも、なぜ私が送った相手ではない海野さんから返信が来たのかも意味が分からなかった。
そして、ここから私のストレスフルな日々が続くことになったのだ…

-仕事中だから長くは話せないけど、その宣言はどうしても必要なの?
それをするくらいなら-

返信文を作っていると、美園ちゃんママ以外の4人から引っ切り無しにLINEが入る。読んでいる暇がないほどにだ。
この人達はそんなに暇なのだろうか。
このペースで送りつけられていては対応なんてできるわけがない。

-仕事中だからごめん。帰りに話聞くからそれでいい?-

それまで鳴り続けていた通知音がピタッと止んだ。
これで仕事ができると思ったのも束の間、今度は海野さんから電話が掛かってきた。

「はい?」
「私達だって仕事中なんだけど。腹立ったから電話した。」
「帰りじゃダメなの?」
「美園ママが可哀想だと思わないの?」
「可哀想とか分からないけど、やりたいなら仲良くやらばいいんじゃない?」
「だから、他のママから責められたら困るでしょって言ってんの‼︎」
「そのママって今年いるの?」
「上の子の保護者会とかで会うんだよ。その時に攻撃されて精神病んだらどうすんだよ‼︎」
「いやいや、今海野さん達が鬼の様に送ってきてたLINEで俺が病みそうなんだけど。」
「しゃしゃって来るからじゃん。」
「俺はまぁいいよ。でもさ、江藤さんもこの2日間でかなりやられちゃってるみたいなのよ。
折角の謝恩会なのに揉めてたら楽しめないじゃん?」
「アンタじゃ話にならないね。」
「仲良くすれば良いだけなのに、それができないで吊るし上げて権利奪おうとするって結構凄いよ?
俺も片方からしか話聞いてないけど、揉めてるわけじゃいなら仲良くやれば良いでしょ。」
「じゃあ帰りに全部話してやるよ。」

一方的にキレられたが、私が何をしたと言うのか。
それっきり連絡は来なかったが、何となく私の中では憮然としない気持ちで溢れていた。

早めに迎えに行きanti達を待つことにしたのだが、着いた時には既に全員が揃って私を待っていた。

「こんなに待たせてどういうつもりなの?」
「いや、時間言わなかったしこれでもかなり早いんだけど。」
「それでさ、何でみいパパが出てくるの?」
「相談されたから。仲良くやれば良いじゃん。ダメなの?」
「美園ママが虐められてたの知ってるの?」
「うん、聞いたけどさ。
相手は今ここにいないし、誰も出しゃばりなんて思わないでしょ。」
「ママってのはそう簡単じゃないんだよ。」
「パパじゃ分からない世界だからね。」

何だこのアウェー感は…
そして進展を一切見せない無駄な時間に苛立ちを感じていた。

「まあ虐め云々はここでは関係ないと思うのね。
一緒に作り上げていくことはできないの?」
「待って、そもそも私達に助けを求めたのは江藤さんなんだけど。」
「それは初耳なんだけど。」
「そんなことも知らないのにしゃしゃって来んじゃねぇよ。」

これにはさすがに腹が立った。

「あのさ、何でそんな喧嘩腰なの?
俺に何の文句があるの?
仲良くやれって言ってるだけだよね?
誰もやらないから仕方なく前に出た江藤さんが邪魔なら全部やれば良いじゃん?
つか、そもそも自分らが前に出れば良かった話だよね?
虐められるのが怖いって言っておいて、今現在同じことを自分達がしてるって事も分からないほど馬鹿なの?
ねえ?馬鹿なの?
助けを求めたとかそんなのどうでも良いんだよ。
仲良くすれば良いだけなのに何でそんな簡単なこともできないの?」

他にも何か言ったはずだが覚えていない。
一気にまくし立てられたことで引いてしまったanti達は独自の見解を喚き立てたが、私の欲しい情報なんて一つもなかった。
ただ馬鹿と罵られたことを取り上げて文句を言うばかりであった。

「はぁ…感情的になりすぎて馬鹿と言ったのは謝るよ。
でもさ、人に何かを強要するのはやめなよ。
自分の周りでそういうことをする人間がいると俺が困るから。
先に言っておくよ。」

そう言って子供達を引き取り私はそこを後にした。
彼女には-話にもならなかった-とだけ伝え家に戻ることにした。

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