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vol.11 不実な恋愛の行く末…

とうとう謝恩会の実権を手に入れたanti groupだが、美園ママが突如として言い放った[謝恩会放棄]に驚く竜也。
皆が楽しめる想い出に残る会にすれば良いと伝える竜也だが、美園ママの怒りは会をぶち壊す方向へと向けられていた…

口の利き方に気をつけろ…

「仲良くすることはできないの?」
「そんな価値もないね。」
「それでどうするの?自分で皆の前で私が引っ張るって宣言したのに、言ったそばから逃げるわけ?」
「は?逃げるなんて言ってないじゃん。
私達は謝恩会に出ないって言ってるだけ。」

なんて大人気ない人なのだろう。
仮にこのままこの人達が謝恩会の準備をしなかったらどうなるのか、そんなこと考える必要もないほど明らかなことだ。

「準備はしてくれるんだよね?」
「そんなのこっちの勝手でしょ。」
「アンタいい加減にしろよ‼︎」

荒木さんが凄い剣幕で叫びながらこっちに歩いて来た。
私が落ち着いて話しているのに、遠くで話を聞いていただけであろうこのお父さんは怒りを剥き出しにしている。

「アンタ‼︎人として恥ずかしくないのか‼︎」
「は?何でそんなこと言われなきゃなんないの。」

何一つ自分には非がないと感じている相手に正論を説いても意味がないことは重々承知していた。
私は、今にも飛び掛かりそうな荒木さんに笑いかけ一瞬彼の時間を止めた。

「あのね、美園ちゃんママはどう考えてるかは分からないんだけど、今から俺が話すことをよく考えてみて。」
「何よ。」
「あの文章を皆の前で江藤さんに宣言しろと強いた行為ね。それって強要罪っていう犯罪に繋がるの。
俺が宣言をさせなかったのは、美園ちゃんママ達全員を守るためにしたことなの。
仕事上さ、自分の周りで問題が起きると不味いことになるからちょっと出しゃばったけど、全てを円満に進めるためには皆が協力するのが大事なんだと思うよ。
誰かを引きずり下ろすとかじゃなく、手を取り合って作り上げればいいんじゃないかな。」

犯罪という言葉にやたらと驚いた表情をしたが、美園ママはまだやめようとしなかった。

「強要罪?誰かが訴えなければ罪にはならないよね。
それにそんな証拠もないし。」
「アンタそんなことばっかり…」

本当に荒木さんは熱い男なのだろう。
私が怒り出す心配よりも、この人が手を上げないかヒヤヒヤしていた。

「江藤さんは訴える気はないみたいだけど、証拠ならここにあるよ。
今この瞬間も全部録音してるし、さっきのホール内の会話もここに入ってる。
強要の訴えはないかもしれないけど、俺に対する名誉毀損ぐらいなら幾らでも打つことができるかもね。
美園ちゃんママだけじゃなく海野さんとかの罵倒とかも全部持ってるからね。
人としてこんなこと言いたくないけど、口の利き方に気をつけろ…」

私自身は決して品行方正に生きてきてはいない。
むしろこっちの方が地に近い。かなり抑えてはいるが…
これ以上長引かせると荒木さんが心配だったので、私は切り札を美園ママへ打ち明けた。
彼女はかなり動揺していた。
唇は震え、焦点はブレている。
言葉が出てこないのだろう。その気持ちは分かる。

「俺も何かをしようって気は今のところないよ。
だから、皆で仲良く楽しい謝恩会にしようよ。ね?」

返事は何もなかった。
だが、さっきまでの強がった態度は一切見えなくなっていた。

「じゃあ何かできることがあったら遠慮なく言ってくださいね。
俺達にできることは喜んで協力しますから。」

そう言って荒木さんの腕を掴み、施設内で待っている彼女の元へと歩き出した。

「神永さん、アンタ堅気じゃないね。」
「ははっ、思い切り堅気の一般人ですよ。」

ただ、他の人より色々な経験をして生きてきただけの話だということまでは口にしなかった。

anti 再び…

しばらくは私も彼女も平穏な日々を送ることができるようになった。
一つ予定外なことがあるとすれば、anti groupが仕切りをするのをやめてまた彼女が任されたことだろう。

-じゃあ食事の手配はしておくよ。-
-お願いね。アレルギーの子もいるから間違えないで発注しておいてね。-

そして、私もそれを手伝うこととなった。
花の手配や食事の手配、先生方に時間を割いてもらうなどの連絡を任され、同時に他の保護者からの提案をこちらで受け付けていた。
だが、antiからの参加連絡が取れずに悩んでいた。

「神永さんも大変ですね。」
「最後のことだから皆で楽しくやりたいんですけどね。」
「私からも聞いておきますよ。」

協力的な保護者ばかりだった。
私に文句を言いにきた方でさえ買い出しを手伝ってくれていた。

「みいパパ、ちょっと。」

珍しく美園ママ以外のantiが私の迎えの時間に合わせてやってきた。

「あ、参加の連絡が取れてなかったから会えて良かった。
全員参加でいいよね?」
「それよりも、私達が犯罪者ってどういうこと。」

なるほど、そこが心配で連絡一つ寄越さなかったのか。

「何でアンタにそんなことまで言われるの。」
「みいパパ、あんなに優しい良いパパだったのに…」
「美園ママあれ以来家からも出られない程病んでるの。どう責任取るの。」

やれやれ、どうしたものか。
今度は私を脅しに掛かってきたのか。

「あのさ、犯罪者だなんて言ってないよ。
あのまま江藤さんに宣言させてたとしたら強要罪が成立してたってだけ。
本人もそんな宣言したくないって言ってたでしょ?
それをさせた場合、皆は強要した側になるし、俺はそれを知ってて止めなかったって事で幇助の罪に問われる恐れがあったから動いただけ。」
「じゃあ私達は犯罪者なんだね。」
「だから違うって。江藤さんには一言も喋らせなかったでしょ。
だから罪に問われることもないし、何も心配ないの。
皆で仲良く謝恩会を盛り上げれば良いんだよ。」
「でもアンタには名誉毀損なんだよね。」

なんて面倒臭い…いや、中に入った以上身から出た錆と諦めよう。

「今何かをしようって気は一切ないよ。
俺はただ皆で仲良くしたいだけ。
仕事中とか真夜中に連絡をされ続ければ分からないけど、現状皆に何かする気なんて毛頭ないよ。」
「じゃあ美園ママの件はどうする気なの。
精神的苦痛を与えたことは罪にならないの。」
「別にそれを訴え出るなら構わないよ。
その時は俺も全部を提出するだけだから。
そうなれば俺と美園ママだけじゃなく、江藤さんも皆も巻き込まれることになるんだけどね?」

何か言いた気にしていたが、ここで畳み掛ければ私はかなりの悪者になってしまうだろう。
そんなことより、今は謝恩会の成功を皆で成し遂げる方が大切だった。

「もうやめよう。いがみ合ってても楽しくないよ。
それより、謝恩会は参加でいいよね?」
「…」

誰も返事をしなかった。
寺川さんがずっと黙ったまま私を睨みつけていたが、まるでコメディホラー映画のキャストのようだと考えていたら笑いが込み上げてきてしまった。

「何笑ってんの。」
「いや、ごめん。思い出し笑いだから気にしないで。」

その顔やめてくれ。まるでギャグだ。
幾ら待っても返事はもらえそうになかったので、参加として頭数に入れてしまった。
食事代などは私が立て替えてしまえば良いことだ。

「じゃあもう話がないなら帰るけど。」
「まだ終わってないよ。」
「何?時間勿体無いから早くしようよ。」
「謝ってよ。」

何か悪いことをしたのだろうか。
一瞬真面目に考えてしまったが、相手は怒り狂った自己中集団だったのだ。
頭一つ下げるだけでことが収まるのであれば安いものだ。

「何に謝るのか分からないけど、とりあえずごめんね。」
「アンタ舐めてんの?」
「じゃあ何に謝るの?」
「私達をコケにしたこと。」
「コケにした覚えは全くないけど、そう感じたならごめんね。
何にそう感じたのかは分からないけど、気分を害したなら謝るよ。」
「土下座しろよ。」
「それはしない。する気なんて更々ない。
それでもしろというなら、今第三者を連れてくるから証人になってもらおう。
したくもない土下座を今からするから、この人達の強要罪を証言してくれって。
それで良いよね?」

なぜ学ばないのか…本当に馬…いや、やめよう。
anti達は口を開こうとはしなかった。
ただ、全員が私を睨みつけ車へと戻っていった。
さて、私も家に帰ろう。

「あのー、神永さん?子供…」
「あっ…」

迎えにきた子供を忘れて帰るところだった…

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