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引っ掻き傷にも薬にもならないような文章を(ある日のカフェ)

「わたし、お茶がすごく好きでさ」

ー うん。

「あ、今はジャスミン茶と金木犀のお茶(これは台湾でハマって買ってきたやつ)がマイブームなんだけどね。事務所にいる時も家にいる時も大体お茶飲んでるのね」

ー うんうん。

「チャイもすっごい好きなんだけど、この子は朝とおやつ限定。おりゃ!って気合い入れるときに飲むの」

ー 狂ったようにチャイ飲んでるもんねいつも

「で、ね。そんなにお茶を飲むのに、特にお茶の知識はないんだよね」

「だから別に特別美味しいお茶淹れられるわけじゃないの。でも、飲んだ瞬間体がぽっと温まって、ぽわ〜ってするあの瞬間が好きで。ああ、明日も飲むか、ってなって毎日飲んでるんだよね」

ー うんうん。

「だからさ、特別衝撃的に感動するわけでもなければ、胸がムカムカするほど嫌な気持ちになることもないのよ。」

「普通の味の、なんかいつもそばにあって、安心して飲めて。適度に美味しくて、ほんわ〜ってする」

「あのお茶の感じがすごく好きなんだよね」

ー うんうん。

「で、わたしはそんなお茶みたいな言葉を生涯書きたいんだなあって最近気づいて」

ー え?あ、言葉?

「うん。いまね、仕事の話」

ー ああ、なるほど。お茶から。うん。

「降ってきたんだよ。なんか、ああ、そういう言葉書きたいなって」

ー 降りてきたってやつ?

「降りてきたってやつ」

ー ふふっ

「あ、いまバカにしたでしょっ」

「でね、すこぶる心に残るでもない、傷つけるでもなくて、”あ、なんかちょっと寒いな。のちさんの言葉でも読むか” みたいなさ」

「そんなさ、特別じゃないけどそばにあったら安心するようなものを書きたいの、多分」

ー うん。降ってきちゃったからね。

「そう。降ってきちゃった。ってまたバカにしてるでしょ。もー」

ー してないしてない。ただお茶からいきなりその話になると思わなかったわ。

ー そして前置き長くない?お茶の例え、いる?(笑)

「え?わかりやすかったでしょ? お茶と同じなんだよな〜わかるかな〜。わたしはスペシャルじゃない平凡なお茶みたいな言葉を綴りたいの」

ー むしろ例えがあったせいでわかりにくいよ(笑)

「うそー。わかりやすいと思ったんだけどな」

ー まあ、なんでもいいからデザートにケーキでも食べようよ

「食べよっか。すいませーん苺ショートくださーい」






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