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写真と言葉で残したい未来のこと / 和語と写真

母が亡くなって今日で1ヶ月経った。実感はなんだかまだ追いついてこないから(どこか長い旅行にでも行っている感じ)こうして「母が亡くなった」という言葉を綴るたび、嘘でもついているような、違和感ともやっとした不安が押し寄せてくる。だけれどいつか心と現実に折り合いをつけながら受け入れなければいけない日がくる。もう少し先になりそうだけど。


そんな、ふわふわと現実と夢の間のような日々を漂っていた時に、ニュースが流れてきた。大好きな雑誌「nice things.」を運営する出版社・ミディアムが突如倒産したニュースだった。普段ほとんど雑誌を買わない私が、ずっと楽しみに買い続けた雑誌。美しく慎重に編まれた余白と写真と文章が呼吸しあい「日本は美しい」「日本語は美しい」を全身に流し込んでくれる時間が好きだった。

母の介護や闘病生活で、国内外に出られなくなった時期中、刺々しく荒れる私を癒してくれたのもnice things.だったから「ああ、また一つ大好きなものを失ってしまったな」の残念な気持ちと「わたしはnice things.に変わる癒しの時間を見つけなければ」の気持ちが私の中に半分個ずつやってきた。



そこではじめたのが「美しい和語と写真を編んで自分で作品を作ってみること」だった。大和言葉や漢語、禅語、季語など日本の言葉の本をパラパラとめくりながら、雰囲気や意味から写真を選び編んでいく。右側の「説明」にあたる言葉は自分なりに解釈し、噛み砕き、説明的ではない「情緒を感じるような」言葉で編み直す。この馴染ませていく作業が楽しくてたまらない。

口に出して滑らかな口当たりのものや、字面が美しいものに出会うたびに心が震えた。遠い昔に置いていかれた言葉達が現代の写真と出会う時、ふんわり気持ちが癒された。


花の雨、朧月、朝寝、雪間草。
少しずつ変化していく季節や情景に丁寧に名前が付けられている。
ページをめくるたび知る、昔の言葉たちの美しさ。「私が暮らすこの国はこんなにも美しいのか」と改めて知ることの楽しさ。

こうして言葉と写真を編んでいる中で「使わなければいつの間にか消えてしまうかもしれない本当に古い言葉たち」と幾度となく出会った。それらを写真と編んでみると「こんな言葉があったんですね」と喜んでくれる人や「日本は美しい」と、nicethings.を読んでいる時の私と同じ感想を持ってくださる方がDMやリプライを沢山いただいた。


「写真と言葉で残せる未来があるかもしれない」だなんて大それたことは言えないし、あまりにも図々しい。(タイトルには書いたけど)

だけれど身近な誰かがこの作品を通して「日本って美しいな」「この国に生まれて良かったな」とふんわりでも思ってくれるきっかけになったら嬉しい。

そして私自身も単に世界にシャッターを切っている毎日よりずっと、わたしは日本語と写真と、そしてこの国が好きになれそうな気がする。

なのでしばらくゆっくりと。自分を癒す為に。
紡ぎ続けていきたいと思います。


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