月嶋 真昼

生活への姿勢。 文章を書いたりしていますが、ずっと気恥ずかしいです。

月嶋 真昼

生活への姿勢。 文章を書いたりしていますが、ずっと気恥ずかしいです。

マガジン

  • 祈りにも似た自己療養

    書くことで、自分の輪郭を保とうとする私がいます。

  • 短篇集

    創作をまとめておきます。

最近の記事

泥濘の中より生存報告

こんにちはこんばんははじめまして、お久しぶりです、生きています。 ぐちゃぐちゃになってしまった。毎年冬が密やかにやって来て私を呑み込む度に、今年の冬こそ越えられない、だなんてことを凝りもせずに思ってしまう。もっとも、これまでの冬を越せてしまっているから今年の私が吐きそうになりながらこれを書いているのだけれど。 思考はまた霧の中に紛れ込み、私の目は遠近感を失って目眩を起こしている。 何を書きたいのかも分からない。 心の中にふつふつと湧いた自己否定の念が溜まり、ヘドロみたいな悪

    • 信ずるべくして光る

      その日、近頃では珍しく調子があまり良くなかったのかもしれない。起き抜けのふわふわとした頭で、寝ぼけてるのかなぁ、なんて思いながら大学へ向かう。二限を受けてもお昼を食べても、ゼミが始まっても何となくふわふわふわふわふわ、現実味のない感覚が私の輪郭線をぼわぼわと乱していた。 あの時少しおかしかったな、調子が悪かったな、と思うのはいつだって、その波が過ぎ去ってからである。現実感の無い水っぽい時間の中をその日、私は流されるがままに漂っていた。 ところで我がゼミは、こればかりは自信

      • 春、一マス進む

        ずっと前から、私ではない別の人に(それは誰でも構わないんだけれど)言ってもらいたかったことがあった。 2021年からの冬は記憶がない。2020年からの冬はもっとだ。 冬は寒くて、全てが凍りつく。文字通り全て。冷気は、末端から私を染め上げるかのよう。私の指先は青紫色に変色し、日に焼けることなく真っ白なはずの太ももは青や赤の斑模様になる。私の外部で生起する現象を感知する為のバロメーターが、その針に氷柱を作る。氷漬けだ、私の心のあたたかくてやわらかなところが全部。全部。 生活その

        • 『待合の丘にて虹を聞く』

          プロローグ  特別ピアノ曲が好きなわけでも、ピアノを弾くことに憧れがあったわけでもなかったと思う。ただある日を境に、それまでは多目的室の中の景色でしかなかったピアノが、幾度となく目に留まるようになったのだった。そこには似た者同士にしか分からない引力が働いていた。幼かった私の目にはそれが、誰かが弾いてくれるのをじっと一人で待っているかのように見えたのだ。 私が初めてピアノの前に座り、人差し指でそっと鍵盤に触れた時、ピアノは定められた音をひとつ、私に向かって真っ直ぐに返し

        泥濘の中より生存報告

        マガジン

        • 祈りにも似た自己療養
          21本
        • 短篇集
          10本

        記事

          23.4度の憂鬱

          地球は、その公転軸に対して約23.4度傾いたまんまで、自転している。 その傾きを正す術を私たちは持ち得ないし、地球はまだしばらく、私からすればほぼ永遠とも思われるような長い時間、自転しながら公転し、公転しながら自転する。それはつまり、非常に現実的な問題として、私がこの地表で生きる限りずっと、1年の中で変動する気温だとか日照時間だとかに振り回され続ける、ということを意味する。私はもちろん抗いようもない。 その回転は今年も変わらず、冬を連れて来た。 私はこの数年特に、巡る季節

          23.4度の憂鬱

          引力、反発、大気圏外

          21歳、私は初めてまっすぐな失恋をした。 確信と共に人を好きになって、少し思わせぶりな彼に浮き足立って、初めてきちんと告白をして、振られた。 今、書いていて凄く恥ずかしい。それでもちゃんと言葉にしておきたいと思った。 人と向き合うということ。こんなにも難しくて、上手くいかなくて、自分はいつもちょっと下手くそで、だから悔しい。でも私はこれまでに無いくらい、自分の心に対して素直で“いようとする”ことが出来た。それは自分の中で、書き留めておきたいくらいの大きな成長なのだ。 1年

          引力、反発、大気圏外

          手を伸ばす

          ずっと気恥ずかしい。文章を書くこと、物語をつくること。それでも私は、書いている。 生き方について、これからの日々や生活について、真剣に考えられるようになった時に気持ちの根底にあったものは、恐怖だった。ただ怖かった。奥底にわだかまる曖昧な感情が、言語化し得ないまま目の前で消えていくこと。その時その感情を抱いていた自分の存在すら証明できない、あまりにも無力な自分。回り続ける社会の中に組み込まれて、生活の波に呑み込まれて、私の中の感情を置いてけぼりにしてしまいそうな自分。 そんな

          手を伸ばす

          『家族の灯』

          夏の初めに書いた、ごくごく短かい小説です。少し手直ししたのでこちらにあげてみます。 どうしようもないままならない状況のなかで人は、自分の感情といかに折り合いをつけていくのだろうか。最近はずっと、そんなことを考えています。  さてどうしたものか、と円(まどか)は思った。  一歳の弟、陸は朝から機嫌が悪かった。一口サイズに握ったおにぎり、それの何が気に入らなかったのか、食べるでもなくべたべたとこねくり回した挙句、洗面台で手を洗わせようとするとそれを嫌がって泣き喚いた。散々泣い

          『家族の灯』

          大学の講義、外部講師として来た方が「人間、頭の中で想像出来ることは大抵実現出来る」とおっしゃっていた。 信じてみようかと思っている。

          大学の講義、外部講師として来た方が「人間、頭の中で想像出来ることは大抵実現出来る」とおっしゃっていた。 信じてみようかと思っている。

          恵まれているが心底どうでもいい

          私はそれなりに努力をしていたのだった。 すべてが冴えなかった、悪くはないが良くもなくって、愛すべき日々ではあったが通りすがりの誰かのくしゃみで吹き飛んでしまいそうなくらいどうでもよかった。そして時折、胃袋が捻じ切れそうなくらい腹が立った。 勉強をしても上の下だった、楽器を吹いたら努力だけが認められた、人と精一杯関わろうと努力をしたら都合の良い人間になっただけだった。人生を通して何かとタイミングが悪かった。我慢強く努力出来たのに、自分の努力そのもののことを信じきれなくてあと少

          恵まれているが心底どうでもいい

          2021-06-11/日記

          思考の記録。 ・ ・ ・ 相変わらず私は、ちいさなことでクヨクヨと悩む割に突発的な行動力だけはあって、その辺りがどうもアンバランスだと自分でも思う。「今」この瞬間に抱いた意欲と決断を、逃したくない。そういう気持ちだけは、強い。そして、自分のキャパシティとスケジュールとを見比べながら生活するのが下手くそだ。突発的な決断と、それに振り回される自身の生活。そんなことをまた、反省した。お金を稼がねばならないけど、就活をそろそろ始めなければならないし、サークルは私たちの代が頑張らないと

          2021-06-11/日記

          『糸車と春、そして電話がなる』

          かかってくる電話のことは好きにはなれないけれど、――だって私にかかってくるのは大抵つまらない電話だから―― 点と点を繋ぐ電話線のことならなんだか好きになれそうだと思う。 しにたいと思った日に電話をする、そんな約束を交わした過去がほしかった。約束はなかったから、街を歩いた。世界のことがどうでもいいとき、地球のことが愛せないとき、歩く街には記号しか落ちていない。記号の海からいくつかすくいあげて、撚りあわせて、糸にして、布を織って、服にして、遠くの何処かの私みたいな誰かを、温めら

          『糸車と春、そして電話がなる』

          鬱/循環

          目が覚めるとひだりの手の甲にものすごい掻き傷があって、何本もの赤い線が表面でひりついていた。 生理2日目だか3日目だか、身体が重い。気持ちは本当に死んでしまいたいのに、身体は排卵してそれを血とともに体外に出して次の卵子の準備をしているというその事実が心底気持ち悪いと思う。 手の甲がひりついている。 世界の何が面白かったのか、過去の私が何を求めて本を読んでいたのか、何に笑っていたのか、なんにも分からない時に、肉体は本当に気持ち悪いなと思う。 何故勝手に胸が脈打つのだろうか。赤

          午後3時に化粧をする話

          ところで私は目が悪い。 ものすごく悪い訳でも無いが、裸眼ではとても日常生活が送れないくらいには悪い。 寝付きも寝起きも最悪な私が朝、それが朝じゃないことも多いけれど、とにかく起き出して、 昨晩は眼鏡をどこに置いたのか、あああその前に点鼻薬はどこだ、鼻呼吸が出来ない(鼻炎持ち) と机の上を手探りしている時間が一日のなかでいちばん嫌いだ。 目がろくに見えていないと、なんだか全てが億劫になる。コンタクトのある時代に生まれて良かったと心の底から思う。 夏は体調が芳しくないが、冬は精

          午後3時に化粧をする話

          真夜中にお菓子を焼く

          2020年、思うようにならない10ヵ月程を過ごす中で、真夜中に沈みきってしまった自分の気持ちを少し、ふわっと浮かび上がらせてくれたのが、お菓子を焼くことだった。 別に真夜中でなくてもいいんだけれど、日中は授業があったり働いていたりする関係で、どうしても真夜中にお菓子を焼くことの方が多かった。深夜、キッチンで何かをせっせと作っていても文句をひとつも言わなかった家族には感謝しなきゃいけない。許してもらえてなかったら、けっこうしんどかった。 去年つくったのは ・パウンドケーキ(プ

          真夜中にお菓子を焼く

          ハッピーエンドしか書けない。

          今年に入ってから、私の書いた短編を読んだ人に、あなたはハッピーエンドが書ける人だ、と言われた。 ハッピーエンドをえがこうとすれば、その幸福を強く印象付ける為にも、展開に緩急を持たせる為にも、その前の段階で悲劇や不幸、なにかつらく悲しいこと、強い負の感情を描くのがひとつのセオリーである。けれども、例えば5000字という制限の中で短編を書こうとすると、その不幸を収束させ幸福に転じさせるだけの尺が足りなくなってしまう。 たまたま私の大学には、5000字前後を基本とした短編を持ち寄り

          ハッピーエンドしか書けない。