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『電話線とミルキーウェイ』

真夜中にしんと沈んだ街、街灯はどこへ導いてくれるわけでもなくぼんやり白く光る。

電話ボックスの四隅には、真昼間にも夜が澱んでいるんだよ、とマスターは珈琲豆を挽きながら歌うように言っていた。本当かな。

今電話ボックスには、たぷんと夜が溜まっている。

コインを入れて受話器を取れば、私と同じように夜を啜る、誰かも分からない貴方に繋がる電話があれば良い。私は貴方に約束を取り付ける。
星と星を結ぶみたいに線と線でふたりを繋いで、丁度真ん中あたりの喫茶店。そこで待ち合わせをしよう。そう、珈琲の美味しいあの店だよ、と。

湯気のたつ珈琲カップ、匂い立つ夜をふたりで啜る。
苦い苦い夜にほんのり浮かんだ油の虹は夢。
夜に落としたミルクは貴方と私とを繋ぐ道。

今は胃袋で、夜を飼ってる。

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