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『彼岸』

布団に投げ出した体に部屋に積もっていた冷たさが染み込んできて薄い硬い膜を張る。
食べること眠ること話すこと笑うこと泣くこと、瑞瑞しい瞬間の彼岸にある感覚。
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今は私の弱い所が煮詰まっておりますが、御容赦願いますこれを読む貴方へ。
夜の静けさに紛れて、数時間前よりもゆっくり息を吐(つ)いてそれを数えております。五感が鈍ってゆく音だけが唯一、耳の奥でひそやかに鳴るのです。そしてその音は、明日(あす)の朝日がその薄く硬い膜を溶かすその時までしっかりと、私の耳に残るのであります。
実在性の見当たらない夜で御座います。今さっきまで私の本能がてのひらで握っておりましたそれが、掌の中でぬるりと消えた気が致します。私の目の前におられる貴方は、じゃんけんぽんでぱーの手を出せば良いのです、さすれば私に勝てましょう。私は怖くて握った拳を宙にひろげる事も出来ぬのです。
てのひらの中が空っぽであるのを知ってしまうことが怖いのであります。空っぽの空気に愛を見いだせぬ私が居るやもしれぬ事実に、たじろいているのであります。

#お昼休みに戯言など

2019,3,13

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