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『マーケティングの仕事と年収のリアル』感想と活かし方 #マーケリアル

『マーケティングの仕事と年収のリアル』(ハッシュタグ #マーケリアル )という本を読んだ。発売日はついこの間、18日だったが、事前の期待通りに興味深すぎて一気読みした。普段は読みたいと思いつつ積読になるばかりなので、こんなに早く読み切るのは非常に珍しい。

自分のキャリアとの照らし合わせとともに、主に中小の事業会社、支援会社を見てきた視点で感想をまとめる。


このnote筆者の属性について

感想に偏りが出ることを鑑み、はじめに私自身の属性の話をする。

私は、中小企業の広報担当である。30人ほどの会社なので広報のみならず、人事、経営企画などにあたる仕事も行っている。
ややこしいのだが、勤務する会社はいわゆる「中小専門支援企業」のカテゴリに入る。だが私自身はクライアントのマーケティング支援はしていない。クライアントのマーケティング支援をしている社員に向けて、自社のマーケティングや人事など含めて様々な側面から支援をしている。
4年前に入社し、バックオフィス発想のないところから広報を立ち上げ、紆余曲折してやっと理想に近づいている実感が湧いてきた。この本に書かれている成長ステージにおいて、今やっていることは自称レベル3〜4くらいであろうか。「マーケティング」という言葉のどの範囲かは後述する。

その前に5年勤めた前職も、ITサービス(支援事業ではない)の広報WEB担当。今の会社よりは大きく数百人規模、外資系でも大手でもなかった。
当時はマーケティングとも言い難い、もっと部分的、施策ありきなことしかしていなかった。キャリアを積み始めた時期だったこともあるが、全体を把握した上で動けてはおらず、そういう意味では国内資本企業の事情に近かったかもしれない。

マーケティングにおける専門範囲は、この本の冒頭に書いてある4Pのうち、Promotionを中心としている。残りのPについては、今はどちらかというと経営企画的な側面から意識はしているが、専門性を持っているわけではない。

おまけとして、マーケティングの流派では、PDCAサイクル派、ストリートファイト派が近い。加えてブランド派の要素が少し。この流派はnoteにて無料公開されているので是非ご覧いただきたい。きっと、どこかで見た覚えがあるな、という読後感であろう。


一読をお勧めする職種

事業会社の広報担当者

支援会社(PR会社)は経験がなくわからないのでここには含めない。

広報は、4Pで言うところのPromotionをやる仕事だと社内外で捉えられがちである。ただ実は、経営判断に基づき、コンプライアンス含めた会社の人格を整えた上で、会社の価値を最も高めるやり方で社内外に発信(コミュニケーション)をしていく仕事である。いち製品のプロモーションを超えて企業の根幹にも関わる、重要な職種だ。

広報は、数値化しにくい、投資要素が強い、人間としてのスキルと重複する、概念の話をしがちで他職種にはイメージがつかず理解されにくいなどで、わかりやすいところを拾われ「プロモーション施策をやるプレイヤー仕事」とみられているようだ。一方で当人は、先述した自負を持ち、そういう評価から抜け出し高次な仕事であると、価値を認めて欲しいと思っている。最近ではこれを、実際に認めてもらうための動きも活発になってきた。

しかし何故か、認められているケースはまだまだ少ない。確かに、成長ステージ2以下になると特に、施策の作業担当、現場仕事になるのは否めないが、その後十何年とキャリアを重ねている場合でも、ご自身で起業した以外で経営側に行くケースは決して多くはない。

そのヒントとして、この本には「ブランドはコミュニケーションだけでは作られない」「マーケティングには俯瞰の視座がいる、一つの施策でブランドはできない」との記述がある。これは真実だと感じた。結局のところ、俯瞰の世界である経営と同じくらいの高い視点に立ち、経営に貢献できる広報をしている人は、残念ながらほとんどいないのだ。

広報の施策レベルで、「自分のやっていることは経営に貢献している」と声高に叫ぶだけでは、この本で指摘している通りまさにポジショントークをしているにすぎない。いくらアピールをしたところで、経営者からするとおそらくまだまだ俯瞰が足りず、経営に寄与している感じもないのである。非常に耳が痛いが、広報の役割や価値を広げるなら、この指摘は避けて通れないと思う。

幸い、この本には、経営の感覚がわかる内容がたくさん書かれている。給料がどう決まるかや、CMOレベル以上になるために必要なこと、など。まずはこの本のこういう情報を別途掘り下げるところから、経営を知ってみる必要があるのではないだろうか。


事業会社の人事担当者

広報と同じくらい勧めたいのは人事担当者である。人材紹介会社、採用支援会社など外部から人事業務を支援するは勝手がわからないので、ここには含めない。

この本には、キャリア開発(成長ステージ)の話も書いてある。マーケターのキャリアの話だが、マーケターに限らない話もたくさん含まれていた。労働人口が減っていく今後において、自社での人材開発・教育はおそらく欠かせなくなっていく中で、どう会社としての軸を持ち、人を育てていくかのヒントがあると思う。

もちろん、マーケターを抱える会社であれば、マーケターの職種理解、職種定義にも使えるはずである。

「企業は人なり」と言われることからもわかる通り、人事の仕事も経営として重要性が高いはずだが、広報の欄でも記載したものとほぼ同様の「地位向上」討議が起こっている。メカニズムは広報と全く同じで、結局のところまだまだ経営が求める俯瞰はできていないことが原因のようだ。経営の感覚を知るという意味でも、是非一読した方がよい。


デザイナー

前職や現職、社外のデザイナーとの話や、デザインに関する情報を見ていて、デザイナーもこの本を一読したらいいのではと感じている。

デザイナーは見えるアウトプットがあり、たくさんのものを見てデザインの引き出しを増やすなど、マーケティングとは違う要素がある。そのため全く同じキャリアステップにはならないと思うので、本の内容をまるごと使えることはないかもしれない。
ただ、答えがない、という世界観はマーケティングと非常に似ているし、デザインの前提情報を扱うのに参考になる知識はたくさん書かれているはずである。

なので、少なくとも「ビジネスの成果を出す」ことを目指すデザイナーや、「高次な情報からアウトプットする」ことを目指すデザイナーには一読をお勧めできるのではないかと思った。

デザイナーは、深さが必要な職種に見えて実は、俯瞰「も」必要な職種だと私は考えているのだが、その割に、俯瞰を志向したキャリアを積んでいない印象がある。俯瞰の世界を知るきっかけとして、この本は非常に良いのではないだろうか。


その他同意できたところ

個人的経験で強く同意できるところ、そして学びになったところを一部ピックアップした。
項目立てされているものもあれば、さらっと触れられているものもある。詳細は是非本をご一読いただきたい。

●支援企業の傾向。レベル4以上は無理
●議事録を侮らない
●マーケティングは理想論と現実が乖離しやすい。考え方の先進性で注目を浴びやすい
●特に事業会社はマネタイズ感覚必須
●社内評価について
●経営者にふさわしい部下が残る。マネジメント経験の有無で経営の無駄な試行錯誤が減る


私自身のキャリアの振り返り

私は32歳で、まさにこの本のターゲットであるアラサーだ。キャリアは前述の通りで、マーケティング職ど真ん中というよりはその周りにいて、どうしてもマーケティング的観点が切っても切り離せなかった結果、触れざるを得なかった。
ただし、体系的には学んでいないのが弱点である。この本にもある通り、今がマーケティングの基礎の学び時かもしれない。

これまで、キャリアに対する不安感や、分野に対する好奇心から、積極的に社外へ学びに行った。だが、それでも体得や体現には時間がかかり、高い理想に対して非力を感じるばかり。社会人になって長い期間、ギャップに苦しんだ。でもここ2年ほどで、自分の強みの理解と、「自分が向いている方向がこれで良さそう」という確信が少しずつ得られるようになってから、キャリアを冷静に見られるようになった。

自分のキャリアにおいてまだまだ注意すべきところはあるが、この本にはキャリアのB/S、P/L(投資の発想)など自分が考えていることの一部も記載があって、志向していることについて激しいズレや後の後悔は少なそうとわかってよかった。
事業会社か支援会社かどちらがいいか考えてみるという話も書いてあるが、今いるのは支援会社とはいえ事業サイドにいて、自分に合っていたと思う(むしろ支援会社の世界も知れてラッキーだった)。

隣接した専門領域を学んで分野の違う人をつなぐ、は私も最近志向しはじめたので、尊敬する著者の山口さんが同じ志向で道を切り拓かれていたことに勇気をいただけた。この本に書いてある「一つ上の領域を学ぶ」だと、個人的経験から自覚が作りにくく(本人はわかったつもり、でも周りから見たらできていない、が起こりやすい)結果的に停滞してしまうと思うので、隣からやるのがいいと思っている。マーケティングの隣(私の場合は広報や人事)を学べば嫌でも本質にぶつかり、自然に視野が上がってくるはずであると信じて取り組んでいる。

しかしそろそろ、30代後半のことは考えていかなければと思わされた。私が勤めているのは中小企業なのでブランドはない。30代以降はシグナリング要素が強くなることもだが、職種柄、今の会社のブランドが作られることで自分の成果が出たともみられる。これは頑張らないといけない。
この本のキャリアの捉え方は産休育休などのブランクを前提にしていないようにも感じられるため、ライフイベント等に合わせた休みも含む場合だとまた、違う要素がありそうだ。ここばかりは人によると思うので、もし自分が体験した際は学びをしたためたい。


本質的だからこそ何度もおいしい

自分のマーケティングを考える本であり、そして職種問わず参考にできるところがあるキャリアをの本であり、自社内のキャリアステップや組織作り、職種理解にも使える1冊で何度もおいしい本だった。このように様々な切り口での学びになるのは、内容が本質的で、論理的で、得た知識を多面的に使っていけるからに他ならない。

ありがたい学びをいただけたこの本と、著者の山口さんへのお礼を申し上げたい。ささやかながら、この感想が、どなたかの購入や一読の参考になればと思う。

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