見出し画像

北京ドタバタ旅行(4)

 車から降りて、数10メートルも行かないうちに、父が遅れだしました。母は私の車椅子を押し、さっさと歩きますが、父はそうはいきません。杖をつき、やや足を引き吊りながら歩いてきます。そのスピードは母のおよそ半分です。早く歩けないのです。おまけにつらそうです。

 京都駅ビルというのは案内板も少なく、エレベーターで2度3度と違った階に降りてしまい、その都度引き返さねばなりません。ようやく旅券事務所に到着するなり、父はその場に座り込んでしまいました。距離にして2、300メートルだったでしょうが、それが応えたのです。

 しかし、申請は今からする事がたくさんあります。それに写真も必要です。アベックで撮った写真など受け付けてくれるわけもありません。疲れた父をひっぱって、母が隣接する写真屋に連れていきます。
 
 私はというと、父に代わって申請用紙に必要事項を書かなくてはなりませんが、書く内容はごくごく簡単で、すぐ理解できたのですが、ボールペンをしっかり握る程度の握力もありません。住所を書いている途中から力が入らなくなってきました。なんとか必要事項を書き終えて最後に本人の自署欄が2カ所ありましたので、写真を取り終え疲れ切った父を呼んで書類を見せますが「その欄がどこなのか見えない」などといいます。めがねも持ってきていないと言います。耳の遠い母は補聴器を忘れ、老眼の父はめがねを忘れたのです。
 

北京ドタバタ旅行(5)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?