見出し画像

「エル・ブリの秘密」を観て欲しい

料理通はもちろん、クリエイティブ界隈の人間なら誰もが知っている世界一のレストラン「エル・ブリ」

これは、2011年7月に惜しまれつつ閉店した伝説のレストランのドキュメンタリー映画です。


予告編に料理が登場するので観て欲しいんですが、一目で日頃僕たちが知っている料理とは何もかも違う事がわかります。

「エル・ブリ」の事をよく知らない人は映画を観る前にこれだけは知っておいて欲しいのですが、コースは一つしか無くて、そのコースは毎年45皿とかとにかく料理数が普通じゃ無いんです。

写真を観る限り、ほとんど数口で食べきってしまいそうな少量の皿が、40以上。それは「40数個のアイデアのプレゼンテーション」といった趣です。

一年の半分を休業し、新しい料理を開発するために試行錯誤を繰り返す様子は何かの研究機関やラボの様にも映り、WEBクリエイターの中村勇吾さんが年の半分はモック(試作品)に充てると仰っていたのが重なります。

ぼくは食事している時に、この料理を最初に作ったのは誰なんだろうと思います。例えば茶碗蒸しなんて、どうやって生まれたんだろうと思う。白米ですら思う。稲穂をどうやったら白米にできると思ったんだろうか。どんな目で稲穂を見たんだろう。レシピが存在していない料理を最初にどうやって作るのか見当もつかない。

パスタが存在する時代に、ペペロンチーノとかアラビアータとか生まれていったのはまだ分かる。派生なら想像できる。でも、パスタを最初に作った人は狂人だと思う。

「エル・ブリの秘密」を観ると、それが分かった気がします。結局、トライアンドエラーの繰り返し。一つの食材を蒸してみて焼いてみて真空にしてみて、思いつく限りを尽くして、それを膨大な資料に記録する。その実験の中で「これは変わった事が起きた」という光明を見つけては、追求する。

水を組み合わせるくだりで、間違えて炭酸水を注いでしまうシーンがあるんですが、それを試しに味わったシェフが「おもしろい」と言う。そんな事の連続。これは果たして一般的に美味しいのだろうか何て無粋な事を思いながら観ていると、試食したシェフが「単純にまずい」って言い放つシーンで笑ってしまう。

放送作家の高須さんがラジオで「観たこと無いものをもっと観たい!食べたことがないものをもっと食べて死んでいきたい!」と仰っていたのを思い出しました。エル・ブリの領域は、もうそういった「先端」の世界で、誰も見たことが無い、味わったことの無い料理を知りたい本当のイノベーターの為の店。

そして、その領域の先端の先端にいる料理人達の姿に心を奪われました。

サポートも嬉しいですが、よかったら単行本を買ってください!