ぼくはnoteやツイッターがきっかけで漫画家になれた系ですが、SNSを使って活動する上でこの辺が一番大事なんじゃないかと最近思う事があります。

それは「フォロワーと読者は別物。フォロワーを増やすんじゃなく、読者を増やさないといけない」という事です。

結構前に、ぼくは「もうすぐツイッター辞めます」と一人で勝手に宣言し、結局辞めなかったという、誰に向けての何だったのか一ミリも分からない謎宣言をした事があったんですが（笑）あの頃から考え始めた事でした。乱暴に言ってしまえば「シェアされても・フォロワー増えても、本売れないじゃん」と思ってしまった事が謎宣言の発端でした。だから、安直にツイッターを辞めちゃおうと、空回った覚悟で。

でも、その後に自分の活動がかなりツイッターに依存していた事に改めて気付いて。例えば原作版を連載しているcakesには漫画の連載が少ないため、エレンを読んでる人はかなりの割合でエレンしか読んでいません。そうなると、ぼくがツイッターで発信しないと更新に気が付かない人が出来てしまう、とか。

だから、ツイッターは既存の読者のためには必要なものかも知れないと。だから、とりあえず「ツイッター辞めます」はしれっと無かった事にして、「ツイッターに（期待するの）辞めます」と思うようになりました。あくまで既存読者（ファン）向けであって、新規読者をツイッター経由で集めるのは難しいし、向いてない気がしました。改めて強調させて頂きますが「フォロワーと読者は別物」だと思っている前提です。

で、ツイッター発信でどうして漫画が売れないのかという話ですが、それは以前noteでも書いたこの辺の話です。

ぼく個人は「いくらバズっても紙の本の売上にはそほど影響しない」というのが、今のところの結論です。極論を言うと「バズる程にコンテンツが陳腐化する恐れすらある」とすら思っています。

「読者とフォロワーの何が違うんだ」って話ですけど、ぼくが思うには「読者は作品に付き、フォロワーは作者に付く」ものなんじゃないかと。

昔、どこかの編集者さんが「ツイッターで人気の作家の本を、フォロワーの一割でも買ってくれてたら打ち切りにならんのになぁ」みたいな事言ってたんですが、この辺がちょっと違うんじゃ無いかと。

この話は例外も多いし、あくまで「そういうケースもある」という個人の実例だと思って聞いて頂きたいんですが、「左ききのエレン」読者が何人いるのか計測できませんけど、数十万人はいると思うんですね。で、ぼくのツイッターのフォロワーは2万人も居ないんです。これで良いと、ぼくは思って。

ツイッターでフォローする時、作品はもちろんですけど、何より作者に興味が無いとしないと思うんです。もちろん「作品の更新を知るためにフォローしてる、作者に興味なんて無い」という人が居るのは知ってます。けど、その割合は本当に少ないと思っています。が、ぼくは個人的な趣味としては好きな漫画（映画でも小説でも何でも同じ）の作者の、作品以外のツイートとか興味無いし、どちらかと言うと見たく無いです。大好きな作品の作者の人間らしい部分を見たく無いと言うか。創造主であって欲しいので。だから、本当に好きな作品なら新刊出るの気がつくし、別にフォローはいいやって。

だから、とにかく面白い漫画を描き続けて、読者を増やそうと。集英社の敏腕編集者・エレン初代編集の林さんに「どうしたらエレン売れますか？」と真剣に相談した時「神回を連発すれば売れます」と言われたんですけど、色々考えた結果やっぱり本当にそれしか無かったなと思います。もちろん、エレンはまだまだ売れ始めた段階なので、１００倍売れて欲しいのですが、結果が出始めた事は本当に有難い。

なんか「SNSポリス」って漫画でデビューしたくせに最近SNS下げる事ばかり言ってて申し訳無いのですが、SNSが良い悪いじゃなくて、やっぱりどうしてもSNSについて考える事は避けられないため、真剣に考えている次第です。今思うのは「読者とフォロワーは別物」であり「読者は作品、フォロワーは作者を追っている」という事で、そして

「読者数よりフォロワー数が多いという状況は、つまり作品より作者が目立っている」という事です。その上で「だから何だ、それで良いんだ、それが今時の作家だろ」と思うのも正しいし「作家をやるなら、作品より目立つのは変だ」と思うのも正しいし、何を信じるかは人それぞれだと思うのですが。とにかく、ぼくは「読者を増やしたい」と。

この辺で「じゃあnote書くな！おとなしく漫画描け！」と突っ込まれそうですけど、「読者を増やしたい」と思っているのは、裏を返せば「SNSでデビューした手前、まだまだSNSが無いと活動できない」というのが本音で、別にSNSを更新する事に苦は無いし、どちらかと言えば楽しいと思うので「フォロワーでは無く読者を増やすべし」は、あくまで今後の目標というか、冷蔵庫に貼っておく言葉、くらいに受け取ってもらえると幸いです。

あと、最近思う事がもう一つあります。それは、SNS中心で活動を続けていると、自分自身も作品より自分を大きく見せたい瞬間があります。これは大変お恥ずかしい事ですが、そういうバイアスと言うか、承認欲求やら自己顕示欲やら、何らかのパワーが働いて気が付かない内に「オレすごいでしょ」という気持ちが湧いてきてしまう気がしたんです。

「左ききのエレン」TVドラマ化を発表する時になって、やっと「オレすごいでしょ」という気持ちが出て来ない様になれた気がしました。ドラマ化が決まったのは大分前なんですけど、その時は「やっぱオレって天才〜」とか思ってましたけど（思うな）今のエレンがあるのはnifuniさんのお陰もあるし、ドラマに関して言うと「原作者なんて、原作者に過ぎない」ですから、ドラマが決まったのも自分の手柄では無かったし（企画を通してくれた人達の、集英社の、色々な人のお陰）ドラマが成功したら、ぼくは世界で一番喜ぶ自信がありますが、ぼくの手柄では無い。撮影現場に何度かお邪魔させて頂いて思いました。この現場で働いてくれている人達より、前に立つ事は出来ないと。原作者は、原作者に過ぎない。

長くなったのでこの辺にしますが、とにかくぼくは読者を増やしたくて、そのために漫画を面白くする事に注力しつつ、やらないと困る事が多いのでSNSもやります、という感じです。これもまた、誰に向けての何なのか謎宣言ではありましたが。