【マジメに】これからの漫画家ってどうしたらいいの?という話

ぼくは今「少年ジャンプ+」で「左ききのエレン」という漫画を連載させて頂いているのですが、最近よく「これからの漫画家ってどうしたらいいんだろうか」という事をつらつら考えてて、ちょっと長文になりますが片っ端から書いてみます!

ぼくが好きだった連載も幾つか終わってしまって、ジャンプ+も過渡期に入ったのかもしれないと思っています。

余談ですが、ぼくは連載が完結した漫画を一括りに「打ち切り」と表現するのは良く無いと思ってます。作者が望んで終わらせるケースもたくさんあるので。ぼくもSPA!で「バズマン」という漫画を連載していた時、1年くらいやりましょうって話を2年も引っ張って、やっとの思いで完結させた気持ちだったんですが「好きだったので打ち切り残念です…」って言われた事あって。悪気が無いのが分かっていたので「ちす」とだけ言いましたけど、あの「ちす」はかなり低音だったと思います。

この世界のあらゆる漫画は1巻が一番売れます。1巻を買った人だけが2巻を買うからです。巻数が増える度に多かれ少なかれ読者は減るのが常です。ですので、出版不況と言われて久しい中、メガヒットじゃない限り巻数を増やすのは得策では無いと考える漫画家が増える気がする。今後、5巻以内で完結する漫画ばかりになるんじゃないかと予想しています。

一つの作品が短くなると、一人の作家が生涯で生み出す作品数が多くなるので、ただでさえ爆増しているタイトルが更に増えて、もうリアル書店で欲しい本を探すのが至難になってくるのではとも予想しています。

(今日のブログは、答えの出ていない話題をつらつら書くので、いつも以上に話が散らかるのでご了承下さいね。)リアル書店で本が見つからないという状況は、すでに多発しています。「エレンが近所に売ってない」「何軒も回ったけど見つからない」というツイートを見る度に「ごめんね」って思っているんですが、作者も辛いし、本屋も出版社も辛い状況です。この問題、本屋も出版社も悪いとは言えない話で、詳しくは下記のリンクが分かりやすいです。

で、作者が読者にばかりお願いしなくてはならない状況に陥ってしまっています。「本屋で予約してくれ、取り寄せてくれ」とツイートするしか出来ない。これはガチな叫びではあるのですが、つい数年前まで一読者でしか無かったぼくの感覚では「読者にそこまで求めないで!好きな時に買うわ!5巻くらい出た時とか完結した時とか!」って思ってます。ジレンマです。二重人格です。

これを作者も読者も全員ハッピーな状況で解決する方法は、まだ答えが出ていません。もし答えを知っている人がいたらコッソリ教えて欲しいです。「コアなファンを囲い込む」というのは、一見良さそうですが個人的には厳しいかなと思ってます。声の大きい熱心なファンは、外から見ると信者と揶揄されてしまうし、新規が入りづらい雰囲気を作りかねないです。正直、原作版の「左ききのエレン」は、ちょっとそういう雰囲気があったかも知れないと感じています。ただ、これは作者にコントロールできる話では無くて、コアファンを作るのも、作らないのも、制御不能です。

現状「コアなファンを囲い込む」というのはツイッターとかピクシブとかどこかのプラットフォームでいわゆるフォロワーを作るという事ですが「SNSでバズれば本が売れるのか問題」について、個人的な考えを話します。

ぼく個人は「いくらバズっても紙の本の売上にはそほど影響しない」というのが、今のところの結論です。極論を言うと「バズる程にコンテンツが陳腐化する恐れすらある」とすら思っています。下記のインタビューで詳しく話しました。

あくまで自分の仮説なのですが、接触する場所によってコンテンツがチープ化する可能性があると思っています。コンテンツに1日10回接触するとして、テレビCMとポケットティッシュの10回だとまったく違います。媒体のチープさによってコンテンツの価値が変わってしまうんです。僕にとって、TwitterはテレビCMよりポケットティッシュに近いと分析しています。だから、Twitterでバズっても作品がヒットするとは思っていない。話題になることはもちろん良いことですが、作品をヒットさせるためには当たり前のことだけど面白いマンガを書くしかない。

こういった性質も踏まえて「SNSでコアファンを囲い込む」は厳しい気がしています。

ただこれは、あくまで「紙の本が売れる事」の話であって「漫画家として生活する事」の話の全てではありません。それぞれ別の話題なので、分けて話しますね。

・紙の本が売れる事

「紙の本が売れる事」について、本来漫画家本人ができる努力って「面白い話を描き続ける」しか無くて、漫画家は企業の役職で言えば商品開発室とか工場って感じ。売るのは営業部とか宣伝部が頑張るというのが基本原則です。事実として、出版社と作者の関係ってそんな感じ。

「良い商品を開発する事」と「それをたくさん売る事」は別なので、「紙の本が売れる」という状況のために、いち漫画家に出来る事は極めて少ない。その条件というのが、最近各所でよく言われている「重版出来」というやつです、基本的には。

言わずもがなですが「紙の本が売れる」は「連載継続」と直結します。ジャンプ+などのWEB連載は別の評価軸があると誤解されがちですが、単行本の売上で色々な事が決まる事に変わりはありません。ぼくが聞いた限りでは。

WEB連載に限らず、あらゆるコミックス…もとい、この世界のあらゆるコンテンツは第一弾が売れれば第二弾が出ます。それが資本主義なので。

出版社の方針は様々なので、売れる=重版とは言い切れませんが「一巻の重版」が一つの基準である事は確かだと思います。そして、先に話した「いち漫画家は売れる条件(重版)に対してどうする事もできない」という話ですが、「面白い漫画を描く」は大前提として、この話題はあくまで仕組みの話であると改めて強調させて下さい。

ちょっと誤解している方もいるかも知れませんが、そもそも重版というものは「(刷った分が)売り切れたから重版」では無くて「足りなくなりそうだから重版」になるんです。つまり「売れる勢い」を計測している訳です。漫画家がよくツイッターで「発売一週間の売上が大事」と言っているのは、そのためです。これが「初速」というやつです。初速が期待できると、出版社は重版してみるかと検討に入ります。

この「初速作り」に関しては漫画家が声を発すると効果が期待できますが、「そもそも漫画家はツイッターで影響力を持たなければいけないのか」「それ以前にSNSをやらなきゃいけないのか」と言うと違うと思うので「面白い漫画を描く」という本業とは別の力に左右されてしまっているのが現状です。しかし、ぼくが思うに「初速作り」が成功した所で、重版は「このペースで売れるなら足りない」という期待値で測るので、むりやり作った初速で計り損ねて結果的に売れ残ってしまったら元の木阿弥です。なので、この「SNSを活用した初速作り」というのは、ある種の“ハック”なので賛否があるやり方だとは思っています。賛否というか、長い目で見た時に作家にとっても良いのか?という話です。

しかし、この考え方自体が時代に合っていない可能性もあります。「今時、作者がSNSでアピールするのは普通だろ」という新しい空気。かつて、漫画に限らず作家業は神秘的な存在でした。少なくともぼくにとっては。それが時代の移り変わりで変化している可能性はある。アイドルが恋愛を公言する様に、作家が宣伝するのが当たり前の時代なのかも知れません。この辺は、どうあるべきか論なので思想の話で、「初速ハック」は売り方の話なので、若干別の問題ですが。

では作家がSNSを活用する利点はなんでしょうか。一つは、一方的な宣伝だけでは無く相互でやり取りができる点です。読者の感想を直に聞いたりできる、ハガキのアンケートでは難しい「返事(リアクション)」が来る可能性もある。その環境があるのに、例えば「このまま売れなかったら打ち切りになる」という事を言わずにおくのか、言った方が真摯なのか、これも意見が分かれる所だと思います。

これは、出版社からはなかなか言えない事です。作者もオフィシャルにはなかなか言えない。SNSでポロっと言うくらいしか。少年ジャンプ+は、単行本発売告知で「連載継続のため買って下さい」と、たまに書いているので相当チャレンジングでアヴァンギャルドでクールだと思ってますが。ここまで言ってくれる会社は、そうそう無い。言ってくれた方が、本当は健全。

実際問題どうなったかは別としても、打ち切られた作品に対して「そうと知っていれば買ったのに」という声も少なからず上がります。「左ききのエレン」では、発売前にこうツイートしました。

発売後に言うとそんなに売れてないのって心配されると思ったので「世の中(出版業界)、こういうもんだから」という気持ちで、発売前にツイートしました。で、実際効果があったかと言うと、1巻の重版はまだですが(初版がめっちゃ多いので)、先日4巻と5巻が重版かかりました。お尻から売れてく尻上がりスタイル。本当にありがとうございます。今の所、上手くいっているので心配せずに、これからも応援をお願いします。

前半でも書いた様に「一巻が売れなきゃ二巻が出せません!」は、他のコンテンツも概ねそうだし、どの漫画もそうなんだけれど、そうは思っていない読者が過半数の現状においては漫画家が改めてアテンションしないといけないのかも知れません。言う言わないは、さっきの思想の差だと思っています。作家としてのプライドと美意識を持った方は、SNSでこういう話をしないと思うので、漫画業界の片隅で生きてる身として勝手に代弁させて頂きますが、この世界の全てのコンテンツは、第一弾が売れない限り第二弾が出ません。

美意識という軸以外に、言わない方が良い部分もあります。それは、誰も打ち切りの危機に瀕しているコンテンツにお金を払いたく無いからです。お金を払うという事は、この上ない具体的な応援です。その熱い願いが作者と出版社の都合で消えてしまうのは本当に悲しい事です。そんな悲しい想いを、誰だってしたくない。失う可能性があるなら最初から愛せない…!そんなポエムを言いたくなります。このブログを書く事自体、そういう心配されそうで怖いので強調しますが、ジャンプコミックス版「左ききのエレン」は、現状皆様のお陰で健やかに育っています。安心して愛して下さい。愛して下さいとか言っちゃったけど、本心なので受け止めて下さい(?)

・漫画家として生活する事

先に書いた「本が売れる事」と切り離して考えなくてはならない、もう一つの話題です。正直な所、周りの漫画家友人と話をしていても「重版は幻…」みたいな話になります。「漫画家は年収億越えが最も多い職業」ってどっかで聞いた事があるんですが(ソースが思い出せないので話半分に)それって単純に漫画家の数が少ないからだと思いますが「漫画は自分の力で確率が高まる宝くじ」みたいな感じだと認識してます。

「重版が難しい」という話は、前半で書いた通りですが、漫画家として生活する手段は格段に増えている昨今です。ぼく自身、普通の漫画家の収益源である「連載原稿料」と「単行本印税」以外に、幾つも収益源を作って生活しています。両親から「政治と宗教とお金の話は、人様に言うものでは無い」と教えられたので、お金の話はあんまり言わない様にしていますが、これからの漫画家の選択肢を増やしたいという意味では、そのうち詳細を書くかも知れません。お金の話をするのって、本人にメリットが一つも無いのでなかなか勇気がいりますが…。なんか、そういうテーマでガッツリ講演会とかの依頼があれば話しやすいです。うめさんとか、新しい稼ぎ方を実践している漫画家先輩とかと一緒に…。

ちょっと長くなってしまったので、この辺で終わりますが、ちょっと漫画家仲間と色々話したくなっているので、さっき「アビスレイジ」の成田先生と、「バトンの星」の矢島先生、「さよならハイスクール」の森もり子先生に「会いたい…」ってメッセしました…///

とりあえず、なんの話だかよくわからなくなっちゃいましたが、漫画家って本が売れたら死ぬほど嬉しいので、みんなで漫画読みましょう!そして、良かったらエレンも読んでね!的な。ちす(高音)!



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かっぴー

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コメント4件

個人的に、ツイッターとブログで応援させていただいている者です。

先日は、RTとリプありがとうこざいました😊

第2部楽しみにしております。
大学の経営学部でコンテンツ産業を研究している者です。作家志望の素人小説書き手でもあります。
クリエイター視点、それもかなり知名度の高い方の見解ということで非常に興味深く読ませていただきました。

クリエイターさんって二種類に大別できると考えていて、それは「売る」のが好きな方とそうでない方です。戦略を立てて売るための行動を取ることを、創作とは別の軸で楽しむ方。そして、創作は純粋な創作として不純物を混ぜたくない方。
これらはどちらであれ面白い物書ける能力とは別物で、かつてはどちらでもあまり変わらなかったと思います。現代では、作者の発信力が上がった影響で「売る」ことの強さが増している時期なのかなと。ラノベ畑ではなろう系の躍進があるので、より如実に戦略と流行分析が否応なしに力を発揮しております。「面白い」とは何か?という点すら、ライトノベル界隈では再考される流れもあります。その反動のように、本格派のストーリーが人気を得る流れとの両軸で。
個人的にはニコニコ静画からのアニメ化率などから、SNSあるいはそれに近いWebコンテンツが売り上げに与える影響は少なくないと考えています。ですが、例えばTwitterとニコニコ静画を比較した時にTwitterが「ティッシュ配り」である可能性もあるなと今回の記事を拝見して感じました。

また特に印象に残っている二つの事例があります。
「マンガワン」という小学館のアプリで打ち切り寸前にコメントを発表して単行本購入を読者に頼み、打ち切りを回避した漫画が後にアプリトップクラスの人気作になる。
そして逆に、コメントをせずに打ち切りが決定した漫画が大炎上(罵詈雑言ではない)し、打ち切り後の最終話が膨大な応援コメントで埋め尽くされる。
という二つの事例がありました。前者は純粋な創作による勝負をしなかったという点では問題があったのかもしれません。ですが後者の事例は作者の方も残念がっており、作者も、読者も、出版社も、誰もが悲しんでいました。
クリエイターがただ一言声を挙げれば迎えられる幸せな結末があったというなら、それを放棄するのは悲しいことだというのが、極めて個人的な私の意見です。
すみません、コンテンツ産業におけるクリエイターの立ち位置に関しては研究テーマともかなり近く、心を動かされる記事であったこともあり、ついレポートに書くべき内容をこちらに書き込んでしまいました。
長文コメント失礼致しました。
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