【制作日記】左ききのエレンHYPE 番外編・ライブシーンについて

映画のオーディオコメンタリ的なノリで、HYPEを毎話セルフ解説するシリーズですが、ちょいと順番を飛ばして最新話をいきなりやろうと思います。と言うのも、今回の話はこれまででトップクラスに苦心したので、この苦しみを身体が覚えているうちに書いておこうと…。

と言う事で、今回は最新14話をやります。お付き合いください。

まず前段として、これまで、特に第一部の前半は「描かなくても理解できるシーンはカットする」というスタンスでやってきました。今回のライブシーンも、第一部を描いてる頃だったら間違いなくカットしてましたし、アイドルグループじゃなくピンの歌手にしてたと思います。三人描くの大変だし、歌手なら動き少ないし(笑)

第一部は、カットしたおかげでテンポが良くなった部分も大きかったと自分なりに振り返っているのですが、ぼく自身が他の漫画を読んで感動するのは、そういう部分にあったりするので自分の表現力と画力が追いつかないのが歯がゆい気持ちもありました。(リメイク版は、その辺の描けなかった部分を描く挑戦でもあります。)

それで、最近はちょっとその辺の考え方が変わってきて、そういう描くのが難しいシーンこそ漫画表現をやるなら挑戦しなきゃいけないし、実は表現力と画力は二の次ないんじゃ無いかと。なので「描こう」と思った理由は、実は表現力とか画力が成長したから、とかでは無く、ネームを描く訓練を積ませて頂いたからな気がしています。どういう意味か説明します。

商業誌のネームを2年くらい書き続けているお陰で、ネームは成長したはずです。この辺はマニアックだし漫画に詳しい人なら逆に分かってる話なので簡単に飛ばしますが、WEBの縦読みと紙の本のコマ割りは比較すると単純に、紙の方がコマ割りが細かいです。コマ割りに抑揚がしっかりある、と言った方が適切かも知れません。もう超極端に言うと、cakesでのエレンなんて同じ大きさのコマを縦に並べればなんとか読めるものには出来ます、本当は。でもKindleがあるのでしませんが。紙の本になる想定のリメイク版とかは、そういう意味でいうとコマ割りは大分異なります。

で、それを経験させて頂いた上での、WEB縦読み第二部。相変わらず原作版は背景も少ないし、描かなくていいことは相変わらず避けて描いていますが、別の部分のネーム筋力がついて来たお陰で、平たくいうと「コマ割りがあんまりざっくりしてると気になっちゃう」という変化が起きました。ちゃんと視線誘導とか、そういうのやらないと、また変な癖がつく恐れもあるのでリメイク版と同じように、第二部の方もネームに対する意識が変わりました。

ちょっと話が長くなっちゃうので、箇条書きで簡単に書きますが「コマ数少なくない?単調じゃない?」「原作版でも、コマもっと割ってみようかな」「でも描かなくていい部分を描くのは意味ないな」「本当に描かなきゃいけない部分だけ描くならコマ数そんないらないな」で、

「本当に描かなきゃいけない部分って、もっとあるんじゃない?」

になったと。これ文章で書くとちょっと伝わらないかも知れません。書いてて気づいた。具体的にいうと。

第十五話の歌唱シーン「引き抜いたら」「さらけ出せよ」の箇所、ここは本当は一つの絵でコマを割らずに描こうと思ってました。下書きまでは。でも、まず手元のアップを見せて「歌詞とシンクロした振り付けをしています」と伝えて、そのあとに「それを生き生きとした表情で演じてます」というのを引きで見せたいなと。一枚の絵だと二つを同時に伝えるのが難しいと思ったので、コマを割りました。みたいな感じで、コマの数だけ伝えたい意図があって、伝えたい意図に厚みが増してくるとコマ割りも必然的に増えてくる。と思って。だから、ぼくは未だに背景とかちゃんと描けないんですけど、背景描いた方が意図が伝わるという時は逃げずに頑張って描こうと思うようになりました。

ちょっと、この辺の話は初めて言語化したので回りくどくなっちゃいました。すみません。長い割に内容薄いので、ここまで無料にしておきます…!で、本編を1ページ毎振り返ります。

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