【岐阜市議会】水道民営化に関する質疑

 国会で「水道法 改正案」が成立する前日の2018年12月5日(水)、岐阜市議会 本会議では、水道民営化(コンセッション方式)についての質疑が行われました。

 岐阜市は、厚生労働省から水道事業へのコンセッション方式導入を働きかけられている19自治体の中の1つです。


 質疑の文字起こしを下記に記載します。


■ 須田 眞 岐阜市議会議員(自民岐阜)の質問

えー、次に、今国会に提出され、現在、参議院で審議中の水道法改正に関連して、質問させて頂きます。

水道法を取り巻く状況を全国レベルでいうと、市町村が運営する水道事業の約3割が赤字であり、えー、高度経済成長期に整備した水道管の約15%が法定耐用年数の40年を超えているそうです。
耐震化率も4割弱程度、このままでは、大規模災害時に、断水が長期化することも懸念されております。
これまでも、経営改善や、老朽化対策を進めるため、水道事業の広域連携や、え、官民連携を推進する狙いで、コンセッション方式の導入は可能でしたが、自治体が、えー、事業認可を返上する必要があり、水道事業での導入例はありませんでした。

改正案では、自治体が事業認可を持ったまま、民間に運営、運営権を売却できるとし、民間は、条例の範囲内で、料金を設定できるとしています。
コンセッションほうし、え、コンセッション方式とは、国や自治体が、公共施設の所有権を持ったまま、運営権を民間企業に売却する方法で、国や自治体は、えー、国や自治体に売却益が入り、運営のための財政負担が無くなる、民間企業は、サービスの内容や、えー、施設利用などの設定ま、で、幅広い裁量が認められ、独立採算になるということです。
え、簡単にいうと、え、皆さん、ご存知な施設、映画館の中にある、え、ポップコーンとか、飲み物を売っている、えー、売店と同じ、であります。
えー、施設の運営会社と異なる会社が商品を販売している、そういうことでございます。
えー、その他、水道事業者の、えー、施設の維持、修繕や、台帳の整備や、えー、を、義務付け、収支の見通しを公表することを求めることや、えー、国が、水道基盤強化のための基本方針を策定することや、地方公共団体の責務を規定されております。

諸外国において、水道事業の民営化により、え、水道料金が高騰したり、え、過度な合理化により、水質が悪化したりして、民営化したものを、また、公営化に戻している例も多くあるようで、こういう懸念は、与野党問わず、抱くものと考えます。
しかしながら、自治体によっては、水道事業の経営状態の悪化から、コンセッション方式に切り替えたいと考えるところもあるようで、事情は、自治体によって様々です。

そこで、上下水道事業部長にお願い、えー、お尋ね致します。

えー、1点目、岐阜市の水道事業は、健全に運営されていると聞いておりますが、現在の状況を教えて下さい。

えー、2点目、コンセッション方式についての、お考えをお聞かせ下さい。


■ 川合 正能 岐阜市役所 上下水道事業部長 の回答

本市の水道事業に関する、2点のご質問にお答え致します。

はじめに、岐阜市水道事業の経営状況についてお答え致します。
本市の水道事業について申し上げますと、人口減少や、節水型社会の進展により、水需要は減少傾向にあり、これに伴いまして、水道事業収入の柱である、料金収入は、今後は逓減していく見通しをもっております。
一方で、昭和40年代に敷設された管路など、耐用年数を迎える多くの水道施設の老朽化対策に加え、近年、多発化、劇甚化する自然災害への備えとする、して、実施致します、耐震化、強靭化対策が必要なことから、水道施設にかかる、更新需要が今後、増大することが見込まれており、水道事業を取り巻く経営環境は、厳しさを増していくものと考えております。
このような状況において、本市の水道事業の財政状況は、平成26年10月に、平均改定率9.47%の料金改定を行い、必要な投資を行いながら、効率的な経営に努め、一定規模の純利益を確保しておりますことから、現時点におきましては、財政の健全性は保たれていると考えております。
なお、平成28年度の岐阜市公営企業経営審議会における、水道料金のあり方にかかる審議におきましても、当年度以降、10年間の事業計画および財政計画をお示しした上で2020、2020年度までの4年間は、現行の料金体系を維持することが妥当であるとの答申を頂いております。


続きまして、2点目の水道法の改正案に対する見解についてお答え致します。
議員ご指摘の通り、現在、国におきましては、人口減少に伴う、水需要の減少や、水道施設の老朽化など、水道事業が直面する、様々な課題に対応するため、水道法の改正案が審議されております。
この改正案では、水道の基盤の強化に向けた取り組みの実施を、水道事業者の責務とするとともに、健全な経営の下での安定的な事業運営に向けて、広域連携、水道施設の適切な管理、そして、官民連携の推進などが謳われております。
官民連携の推進において、多用な官民連携の選択肢を広げる観点から、厚生労働大臣の許可を得て、水道事業者が施設の所有権を有したまま、民間事業者が事業を運営する方式、議員ご案内の、いわゆるコンセッション方式につきましても、法制上の整備が行われる予定でございます。

先ほど、お答え致しました通り、本市の水道事業を取り巻く経営環境は、厳しさを増している中、本市におきましても、水道事業の基盤強化に向けた取り組みのひとつとして、県主導の下、昨年度、設置されました、岐阜県水道事業広域連携研究会(※1)に参加し、山県市や、瑞穂市など、9市3町で構成する、岐阜広域水道圏部会(※2)におきまして、広域連携に関する研究を始めたところでございます。
また、民間企業の技術や、経営ノウハウ、人材の活用を図る官民連携につきましても、水道施設等の維持、管理、運営等の向上はもとより、事業を支える人材の確保や、官民双方の技術水準の向上が期待されております。
一方で、水道事業は、日常生活に直結し、市民の生命や、健康を守るために欠くことのできない、極めて重要な事業でありますことから、私共に、私共におきまして、日頃の健全経営の下、サービス水準の維持に留意することはもちろんのこと、災害時等の対応についても充分に考慮し、事業の安定性、安全性、継続性を長きにわたり、確保する必要がございます。

いずれに致しましても(※3)、今後は、法改正の趣旨を踏まえた上で、水道事業の状況を中長期的に勘案し、本市にて、本市に適した官民連携や、広域連携の手法について、研究して参りたいと考えております。


※1 岐阜県水道事業広域連携研究会は、岐阜県庁が平成29年11月に設置。岐阜県内の全市町村の水道担当課長等が構成員。

※2 岐阜市、関市、羽島市、各務原市、山県市、瑞穂市、本巣市、岐南町、笠松町、北方町、美濃市、郡上市の9市3町は、平成29年度に初めて岐阜広域水道圏部会を開催した。

※3 「いずれに致しましても」は結論をはっきり断言しないための官僚の常套句。


 須田 眞 岐阜市議会議員の「コンセッション方式についての、お考えをお聞かせ下さい。」との質問に対し、川合 正能 岐阜市役所 上下水道事業部長は、コンセッション方式を採用するのか、しないのか、明確な回答をせず、「本市に適した官民連携や、広域連携の手法について、研究して参りたい」と回答しました。

 この手のどちらとも解釈できるような官僚答弁は、国会の場合、「本音は推進」という場合が多いので要注意です。


 ちなみに、古田肇 岐阜県知事も、2018年11月28日の記者会見にて、記者から水道法改正案について質問されました。

■ 記者の質問

 国会のほうで議論されている水道法の改正ですが、水道自体は市町村の運営ではありますが、県民の財産、命を守る知事のお立場として、改正に関して、民営化に関して、是非も含めてお考えを聞かせてください。

■ 古田肇 岐阜県知事 の回答

 水道法は、今回の改正は広域連携とか官民連携とかを旗印にして、とりわけ、厚生労働大臣等の許可を得て、運営権を民間事業者に設定できるという、いろいろ議論は行われていますが、私どもは既に去年の11月から、県内全市町村の水道担当課長等を構成員とした岐阜県水道事業広域連携研究会というのを立ち上げておりまして、広域連携の可能性などいろいろと検討を行ってきているところです。
 そういう意味で意見交換、意志疎通はよくしているつもりですが、そういう中で、今回の法律にあるように運営権を民間事業者に渡そうと、渡してもいいんじゃないかと考えている自治体は県内には今のところないと。それから逆に、そういうふうに制度が変わるんであればやってみたいということで手を挙げる事業者も全くいないという状況なので、私どもとしては法改正がどういうふうにどういう議論で進んでいくか、また法律のみならず政省令も含めて、どういう制度設計になるか、丁寧に見ていきたいと思っていますが、こと岐阜県についていえば、現状で特に何か問題があるという意識はありませんので、このまま行けば、まずは、そのまま行くのではないかと。ただ、民間の運営ノウハウといいますか、民間活力を活用することが、より改善につながるというような部分があるかどうかをきちんと議論して、その時点での結論に従ってやったらいいと思いますが、今のところは静観という状況ですかね。

 古田肇 岐阜県知事の回答をそのまま文面通り受け取れば、「今のところ」、岐阜県内には、水道民営化(コンセッション方式)を希望する自治体は存在せず、岐阜県内の自治体の水道事業を運営したい民間事業者も存在せず、現状の公営水道に問題があるという意識は無いということになります。

 しかし、元経済産業省の官僚であり、2018年 第5回 岐阜県議会 定例会で「県有地を民間事業者に無償で貸し、民間事業者に岐阜県警職員宿舎を建設させ、30年間運営させる」というPFIを決定した古田肇 岐阜県知事の回答をそのまま文面通りに受け取って安心するのは危険です。

 なぜなら、既に、厚生労働省は、岐阜市役所に対し、水道事業へのコンセッション方式導入を働きかけていますし、岐阜県の地銀である、(株)十六銀行、(株)大垣共立銀行は、PFI法を根拠法とする「民間資金等活用事業推進機構」の株主であり、(株)十六銀行、(株)十六総合研究所岐阜大学岐阜県庁岐阜市役所岐阜県商工会議所連合会は、2018年11月15日に「平成30年度 第2回ぎふPPP/PFI推進フォーラム」を開催し、ヴェオリア・ジェネッツ(株)の藤原祐 氏を招き、「上下水道事業における官民連携事業のご紹介」と題した講演を依頼しているなど、岐阜県内の財界、官界、学会はPPP/PFIを推進しており、将来、岐阜県庁や岐阜市役所が「民間活力を活用することが、より改善につながる」との研究結果を無理矢理出して、水道民営化に向かって舵を切るということも充分に有り得るからです。


 2018年6月13日に成立した「PFI法 改正案」により、上下水道事業の「水道事業等に係る旧資金運用部資金等の繰上償還に係る補償金の免除」の部分は2018年8月1日から先行施行、2018年10月1日に同法は全面施行となっており、平成30年度から平成33年度までの間にコンセッション方式を導入するための特別な「実施方針条例」を定め、民間事業者に対し、「公共施設等運営権」を設定した自治体に対し、地方債の元本一括繰上償還を認め、補償金の支払を免除するという優遇措置が、ぶら下げられています。


■ 『民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律( PFI 法)の 一部を改正する法律(平成 30 年法律第 60 号)の概要』(内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室))

(3)水道事業等に係る旧資金運用部資金等の繰上償還に係る補償金の免除

政府は、平成30年度から平成33年度までの間に実施方針条例を定めることなどの要件の下で、水道事業・下水道事業に係る公共施設等運営権を設定した地方公共団体に対し、当該地方公共団体に対して貸し付けられた当該事業 に係る旧資金運用部資金の繰上償還を認め、その場合において、繰上償還に係る地方債の元金償還金以外の金銭 (補償金)を受領しないものとする。

(注)なお、地方公共団体金融機構資金についても、同様の措置を講ずるよう政府から要請する。


 財政難の自治体は、上記の優遇措置に飛び付いてしまう可能性がありますので、2018~2021年の間は、市民が徹底して、コンセッション方式を導入するための特別な「実施方針条例」の制定を阻止するための運動をしていく必要があります。


 海外では、水道民営化により、料金高騰水質悪化多国籍企業による水資源の独占的管理料金が払えない家庭への給水停止コレラの流行水をめぐる紛争民間事業者による不透明な経営等の問題が起こり、パリやベルリンをはじめとする多くの自治体で水道再公営化が行われました。

 加えて、新自由主義の旗振り役であった英国の会計検査院は、2018年1月18日発行の報告書「PFI and PF2」の中で、PFIが公的な財政にプラスであるという証拠は乏しいと結論付け、同年10月29日、フィリップ・ハモンド財務大臣は、「今後新規のPFI事業は行わない」と宣言しました。

 海外の事例から、もはや、水道民営化を行う理由は見当たらず、水道民営化やPFIの失敗から学び、再公営化後のパリ市水道局の運営手法についても学ぶべきです。


 岐阜市 上下水道事業部は、2009年1月から、水道メーターの検針から料金の収納にいたる一連の業務を、「ヴェオリア・ジェネッツ 株式会社」に委託しました。

 大垣市 水道部は、水道料金等業務を2010年度から「株式会社 タカダ」に業務委託し、2014年10月1日より業者を「ヴェオリア・ジェネッツ 株式会社」に変更しました。

 既に、岐阜市、大垣市には、世界三大水メジャーの一角を占めるヴェオリアの手が伸びています。

 静岡県 浜松市のように、「気付いたら、下水道事業がコンセッション方式になっていた。上水道事業もコンセッション方式になりそうだ。」となってからでは遅いので、市民は先読みして、常に最悪の状況を想定して、早め早めの運動をしていく必要があります。


 水道民営化を阻止するには、市民が、地方自治体に「水道民営化をしない決議を求める請願」または「水道民営化を禁止する条例制定を求める請願」を提出し、賛同しない地方自治体議会議員を選挙で落選させるべく、選挙では、各立候補者の水道民営化への賛否を可視化し、水道民営化に反対の立候補者のみを当選させる市民運動を展開していくことが有効です。



■ 岐阜市議会 議会中継


■ 岐阜知事 記者会見(2018年11月28日11時)


■ 『Ⅶ 水道事業及び下水道事業の経営改善の提言』(岐阜県庁 / 2017年)


■ 『関市水道事業経営戦略 第2章 将来の事業環境』(関市役所 / 2017年)


■ 『PFI法の改正(平成30年)』(内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室))


■ 『水道法改正案の再上程)』(八ッ場あしたの会 / 2018年3月13日)


■ 『水道法の一部を改正する法律案』(参議院)


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