本日（2018年7月1日（日））、埼玉県の東松山市長選挙が告示となった。

　2010年東松山市長選挙で初当選し、今回、3期目を目指す 森田光一 候補（現職市長 / 政党推薦: 自由民主党、公明党）と、安冨歩 候補（新人 / 東京大学 東洋文化研究所 教授、博士（経済学） / 政党推薦: なし）の一騎打ちの構図である。

　前回の東松山市長選挙と東松山市で行われた直近の選挙の結果は下記の通りである。

2014年　東松山市長選挙

当　森田光一　18,921　自民党・公明党 推薦、2010年初当選

落　松坂喜浩　14,989　民主党 推薦

投票率: 47.56%

2017年 衆院選 埼玉10区 東松山市

当　山口泰明　　16,108　自民党

落　坂本祐之輔　18,329　希望の党

落　柿沼遥輝　　5,755　日本共産党

投票率: 54.81%

2017年 衆院選 比例代表 東松山市

自民 11,302

公明 4,867

維新 1,259

幸福 218


希望 9,943

立憲 8,961

社民 402

共産 3,564


投票率: 54.80%

　埼玉県東松山市は、旧民主党系が強い地域であり、野党票が与党票を大きく上回る。

　今回の東松山市長選挙では、安冨歩候補は政党推薦が無いが、第一声の際、日本共産党の蓮見節 東松山市議会議員が応援に駆けつけた。

　安冨歩候補は、「学校を（全ての暴力から）子供を守る基地にする」、「東松山の文化的・歴史的・生態的資源を活かし、誰もが憧れる、なつかしい未来を拓く」を公約に掲げ、第一声の際、具体的政策の例として「国民健康保険税 年間1万円値下げ」と「給食費無料化、美味しい給食」を挙げた。

　上記の具体的政策は、日本共産党が全国で掲げている政策と似ている。

　東松山市の日本共産党勢力は、公式には推薦や支持を表明しないが、現職と新人の一騎打ちであるし、政策的な一致も一部あるため、自主投票ながら、事実上、支援するということなのだろう。

　また、社会民主党の福島瑞穂 参議院議員も安冨歩候補と友好的な関係にある。

　ちなみに、安冨歩候補と関係が深い国政の政治家は、平智之 元衆議院議員（京都1区 / 民主党→無所属→みんなの党）であり、関係が深い地方自治体の政治家は、江口友子 平塚市議会議員（無所属）である。

　なお、江口友子氏は、今回の東松山市長選挙に積極的に参加している。

　東松山市は、衆院選の埼玉10区の一部であり、2017年衆院選では野党が立候補者を一本化できなかった選挙区である。

　意図したか、意図せざるかは不明だが、安冨歩候補が、どの政党からも公式の推薦や支持を貰わなかったことは、得票数を最大化する戦術としては正しく、さらに、政策や選挙に関する協定を結ぶことが無いことにより、政党や圧力団体に縛られること無く、自由に基本政策と選挙戦術を決定できたため、結果的に良かったといえるだろう。

　選挙事務所を持たず、堅苦しくない服装、街宣車の看板を当日にペイント、学問によって緻密に裏打ちされながらも力を抜いた街頭演説、楽器による表現、そして今後見られるであろう馬との共演。

　型破りな選挙運動だが、自由な発想に基づく「遊び心」がある手法であり、従来の選挙運動では思いが届かなかった人達にまで、立候補者の思想が広がる可能性もある。

　安冨歩候補が、今後、どのような政見放送をするのか、学問、芸術、絵画、音楽、馬の力で思想をどれだけ広げられるか、そして、どのような結果を残し、どの程度、有権者の意識が変わり、社会に影響を与えるのか、予測不可能であり、大変、興味深い。

　森田光一候補は、自公票で約16000票は手堅く得票し、安冨歩候補は、共産党、社民党の支持層の票で最低でも約4000票は得票することが予測できる。

　東松山市長選挙の供託金没収点は「有効得票総数 ÷ 10」なので、立候補者両者共、供託金を没収されることは無いだろう。

　今回の東松山市長選挙では、安冨歩候補が、旧希望の党、立憲民主党の支持層の票、従来、選挙に行かなかった人達の票をどれだけ獲得できるかが選挙システム上での勝負の分かれ目である。

　しかし、本当の勝負の分かれ目は、「東松山市が子供を守れる街になれるかどうか」なのだろう。

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■　安冨歩教授の出馬記者会見（2018年6月21日）

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