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米国インフレに関する、日本の報道に対する疑問点(2022年7月)

ガソリン価格が下降傾向にあると、報じてる?

3年ぶりに帰国していました!長く親不孝をしていましたので、帰った時くらい家族との時間を大切にしたいということもあり、ニュース・デトックスをしていました。が、デトックス中でも、耳に飛び込んでくるニュースがいろいろありました。その1つが、アメリカのインフレ問題。アメリカでインフレが問題になっているのは、事実です。消費者物価指数がどんどん上がっているというのも事実です。とはいえ、この昨年からのインフレ問題、どうも報道が煽り姿勢にあることが気になっています。

例えば、ガソリン価格は下がっているのですが、このことはきちんと報じられているのでしょうか。

GasBuddy

いつも使わせていただいている、GasBuddyのガソリンチャートです。

  • 青:全米平均

  • 赤:テキサス平均

  • 緑:カリフォルニア平均

2022年6月中旬にピークアウトしてから下降傾向にあります。ABCニュースでも、この傾向は続く模様と報じられています。コロナ・パンデミックが始まる前の水準に戻るまでには、まだ2ドルくらい高い(テキサス州基準)のですが、「天井知らずで上がっていく!」という不安は現在、ありません。

GasBuddyによると、全米平均のガソリン価格は2ヶ月ぶりに1ガロン4.50ドルを下回りました。先月、過去最高値を記録して以来、価格は10%以上下がり、今後も下落傾向が続くと予想されています。エネルギーの専門家は、今後数週間のうちに平均的なガソリン価格が1ガロン4ドルに達すると予測。需要の減少がその一因だということです。

https://www.turnto23.com/news/local-news/gasbuddy-national-average-gas-price-dips-below-4-50

ガソリン価格が上昇傾向にある時には、「ガソリン価格は、全ての物価に影響を与える・・・云々」と、この価格の動きが重要だということを強調されることが多かったように思いますが、であるならば、下降傾向にある現在、この点は同様に考慮する必要はないのでしょうか?

ただし、ガソリン価格が下がっても、テキサスでもこの1ヶ月間に物価がさらに上昇した感があるのは事実です。ざっくりと生活者目線で申し上げると、COSTCOのオーガニック牛肉の価格が、オーガニックショップのそれと同じくらいに上がっています。ただ、私が最も価格が安定していると考えている(本当の物価上昇の目安としている)、オーガニックショップの鶏肉価格は、変更(上昇)があった6月と変わっていませんでした。

ニューヨークやカリフォルニアだけでアメリカを語るな

カリフォルニアのガソリン価格は異常

日本のメディアのアメリカ報道を聞く時に、気を付けなればならないのが、アメリカは州によって政策や法律、税率が全く異なるため、物価も異なるという点です。日本の報道では、カリフォルニアやニューヨークの数字が使われる傾向にありますが、その数字はアメリカ全体を表したものではありません。

過去記事でも触れています↓

■インフレを必要以上に煽る理由は?(2022年5月)
❶リベラル州の事象がアメリカの全てではない。
❷統計数字に対する適切だとは思えないコメント
❸インフレの元々の原因を追及していない
テキサン、物価高のカリフォルニアでインフレ問題を考える:インフレの裏に潜んだものは?(2022年6月)

単純に大手メディアの支局がニューヨーク州やカリフォルニア州にあるからだと思いますが、先ほどのGasBuddyのチャートでは、全米平均、テキサス州平均、カリフォルニア州平均の3つのガソリン価格の推移をご紹介しましたが、このグラフを見てもおわかりの通り、カリフォルニア州のガソリン価格は全米平均に比べて異常な高さといえます。

GasBuddy
  • 青:全米平均

  • 赤:テキサス平均

  • 緑:カリフォルニア平均

先ほどのABCの記事でも、カリフォルニア州の平均ガソリン価格が全米で最も高いと報じられています。

エネルギーの専門家は、今後数週間のうちに平均的なガソリン価格が1ガロン4ドルに達すると予測し、需要の減少がその一因と言います。
それでも、GasBuddyによれば、カリフォルニア州の平均ガソリン価格は1ガロン5.85ドルと全米で最も高くなっています。

https://www.turnto23.com/news/local-news/gasbuddy-national-average-gas-price-dips-below-4-50

もう1つ素人の気づきとして付け加えさせて頂くと、テキサス州や全米平均は、パンデミック前の価格と比べ、あと約2ドル高いという水準にまで戻ってきていますが、カリフォルニア州はあと約3ドルくらいの水準です。

テキサス州もカリフォルニア州も、石油産出量が多い州です。何が違うのか?といえば、政治。冒頭で紹介させていただいたコラムでも、シェアさせていただいていますが、全体的にリベラル州の方が保守州よりもガソリン価格が高い傾向にあります。民主党という名の、米国共産党は、化石燃料からグリーンエネルギーに転向することで、エネルギー業界や自動車業界をゲームチェンジさせようとしています。高いガソリン代は、グリーンエネルギー推しにつながりますから、リベラル州でガソリン高騰が目立つのは、当然といえば、当然かもしれません。

いずれにしても、全米平均とは違う動きをしている、カリフォルニア州のガソリン価格でアメリカのガソリン価格を語るのはどうかと思うのです。

物価高を煽る、印象操作になりそうな日本語記事

ハンバーガーと聞いてイメージする食べ物は?

もともとニューヨークは物価が高いことで知られているが、世界情勢を受け、さらにとんでもないことになっているようだ。
「ちょっと(外に)食べに行くとしますよね。ハンバーガーをひとりで食べに行っても、5000円なんです」。

https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/4316870/
(2022年7月12日)

ハンバーガーと聞いて、どんな食べ物を想像しますか?ファーストフード(チェーン店)で売られているハンバーガーでしょうか?だとすれば、この記事は、”ハンバーガー”の説明不足による、誇大表現です。元アナウンサーの方の発言ですので、まず、このハンバーガーはファーストフード(チェーン店)のハンバーガーではないと思います。

例えば、下記のステーキハウス、Taste of Texasは、同僚におすすめステーキハウスを聞いた時によく名前が出てくるお店の1つですが、ここでもハンバーガーが提供されています。このレストランの価格帯は、トリップアドバイザーでの評価が$が4つと、”お値段お高めレストラン”に分類されています。

トリップアドバイザー

この$4つのステーキハウスでの、ハンバーガー(ベーコンゴールドバーガー)は16ドル(1ドル110円で1,760円、130円だと2,080円)です。

メニューに書かれている、ベーコンゴールドバーガーの紹介文は以下のとおりです:
当店がオリジナルブレンドし、店内で手作業で成形したジューシーで味わい深いハンバーガー。ベーコン、チェダーチーズ、レタス、トマト、ピクルスをトッピングしたハーフパウンドバーガーは、グルメトーストされたバンズにステーキフライ(ハンバーグのことだと思います)を添えて提供されます。

トリップアドバイザー

私はステーキハウスに行ったのであれば、ステーキを食べたいと思うので、私自身はステーキハウスのハンバーガーを食べたことはありませんが、一緒に行った同僚が食べているものを見ると、お肉がとてもジューシーで美味しそうです。ポイントは、ステーキを食べている人の隣でも食べられるハンバーガーであるということです。

ハンバーガーの写真がないかなと探していたら、ファミレス的な感覚のレストラン、BJ's Restaurant & Brewhouse(トリップアドバイザーの価格評価は$3つ)に下記のような写真がありました。

アメリカのハンバーガーは、日本で一般的にイメージされる”ハンバーガー”というよりは、”ハンバーグセット”のような感じではないかと思います。
記事中では「4人だとハンバーガー食べに行っただけで豪華ディナーになっちゃう」というご発言が掲載されていますが、ハンバーガーが豪華ディナーになるというのは、物価高関係なく、アメリカと日本の食習慣(食文化?)の違いでは?と思います。元アナウンサーの方が指摘されたハンバーガーとは、最低でも上記のハンバーガー以上のクオリティのものではないかと思いますし、そうであるならば、実際にそれは、豪華ディナーなのだと思います。

ここで、アメリカのハンバーガーについて補足すると、間に挟むハンバーグ(肉)の作り方が日本とは違います。日本のハンバーグのようによく捏ねることはなく、”肉肉しさ”を残した感じで調理。そのためか、軽食としてのハンバーガーでも、人気店のものは、肉のジューシーさが違います。
先に、”ステーキハウスでハンバーガーを食べる同僚のケース”を紹介しましたが、ステーキよりも安いからハンバーガーを頼むのかといえば、必ずしもそうだとはいえません。例えば、経費で全額落とせるような出張先でのディナーでも、ステーキハウスでハンバーガーをオーダーする人はいます。と言うことは、ステーキハウスのハンバーガーが食べたくて、食べているわけです。

それでは「アメリカでハンバーガーは必ず豪華な食事か?」といえば、数としてはファーストフード店のような軽食的なバーガーの方が売れていると思いますし、「昨日の夕食はまたマクドナルドだった。だって、息子が好きなんだもん」というママ友もいます。

ハンバーガーはアメリカの国民食(たぶん)。”回る”と”回らない”とでは、価格が全然違うというお寿司の世界や、キツネうどんと鍋焼きうどんでは、同じうどんでも夕食としての評価(栄養価)が違う・・・というようなことと同じではないかと思います。それだけに・・・どういうバーガーについて語っているのかもう少し説明がないと、某チェーン店のハンバーガーを思い浮かべながら、「ハンバーガーが5000円!?」と思う方も出てしまうのではないかと思います。

ニューヨークで起こっていることがアメリカの全てではない

アメリカ人の間で、”南部の田舎者”のイメージがあるテキサスですが、私の住むヒューストンは、人口ベースでは全米第4の都市。とはいえ、大都会か?と言われたら、高層ビル群のあるような大都会の部分はキュッと一部に集約されていて、それ以外のエリアは「広い土地があるっていいな」と思う風景が広がっているため、都会?と言う気もします。

そんなヒューストンの、$4つのステーキハウスのハンバーガーでも16ドルくらいです。”20ドル超えバーガー”もありますが、それでもどんなに高くてもおそらくニューヨークの半分くらいの価格帯だと思います。実際、夫に5000円ハンバーガー の話をすると、「円にするときの計算ミスじゃない?」(5000円するハンバーガーなんてあり得ない)という反応でした。

ただ、私自身は、全くあり得ない話でもないとも思えたのは、ニューヨークがアメリカの中で最も物価高な都市の1つであったから。下記は、ニューヨークを100とした時の、各都市の物価比較で、2021年の数字ですが、一番右の「レストラン価格指数」ではニューヨークを100とした時に、ヒューストンは66.05。

NUMBEO 2021 MidーYear

今回のインフレは、テキサス州でももちろん悪影響を受けているのですが、州によってダメージの大きさは違うような印象があります。元々の物価格差に加え、インフレの影響の大きさの違いがあれば、ニューヨークに、テキサス価格の2倍のハンバーガーが存在するのも、不思議なことではありません。
ただし、この場合、”5000円バーガーは、必ずしもアメリカの全体を表したものではない”ということは、説明を加えるべきだったと思います。

そして・・・余談ですが、こういう数字を見ると、ニューヨークという土地に縛られる理由が全くない、例の夫婦が、ニューヨーク生活に固執する理由が全くわかりません。自分たりの稼ぎで全てやりくりできているなら、大きなお世話という話ですが・・・。

アメリカの物価高とは関係のない円安による物価高効果

もう1つ、この”5000円”という金額ですが、現在のあり得ない円安のレートで計算したものではないか?という気もします。

https://finance.yahoo.co.jp/quote/USDJPY=X/chart?trm=5y&styl=cndl&frm=w&scl=stndrd&evnts=&addIndctr=&ovrIndctr=sma,mma,lma

先ほどの16ドルのハンバーガーは、日本円に換算する時に、1ドル110円計算で1,760円、130円だと2,080円。139円だった時には、アメリカ国内での価格は同じにもかかわらず、2,224円にも!これでは、日本円に換算する時の円安効果により、物価高とは関係のないところで、464円も高い印象を作ってしまうことになります。
もちろん、アメリカでの販売価格をドルのまま表示するよりも、円換算してくれていた方が読者(視聴者)には親切ですが、アメリカのインフレについて語る時に、日本の円安は関係ないことですから、この点には考慮するべきです。”気”に左右される景気のニュースなのですから、もう少し丁寧に報じる必要があるのではないでしょうか?

発言された方は、生活する中で彼女が体験した事実を発言されたにすぎないわけですから、この点は、彼女の発言を記事とする際に、編集者がフォローすべきだったのではないでしょうか。

インフレの煽り報道と、グリーン政策の世界的導入の怪

「物価上昇が大変なことになっている」「モノ(食料品、生活必需品)が足りない!」と大騒ぎするメディア。アメリカで、インフレの悪影響が出ていること自体は事実ですが、インフレの問題が出てきた昨年から、気になるのが必要以上の煽りです。”モノがない””価格がどんどん上昇している”と、散々煽りを受けているのですから、買い占めしようと思う人が出てくるのは当然のこと。必要以上の買い占めが起これば、物不足や物価上昇がより進みます。

インフレの原因は色々あるかと思います。メディアによる分析、コロナパンデミック後の経済再開、露によるウ国危機も確かにその一因だとは思いますが、メディアの煽りもインフレ問題を加速させている原因の1つには違いないと思っています。”不安が煽られると消費行動につながる”という研究もあるようですから、そういうこともあるのかな・・・と、思わず邪推もしてしまいます。

ここで、そのような邪推は、一旦横に置いておくこととします。メディアは不要な煽りをしているわけではなく、本当に世界的な危機が訪れているのだ、と。であるならば、メディアはなぜ政府批判をしないのでしょうか? 

2017年以降、世界の産油国の中でトップだったアメリカ。そんなアメリカで、ガソリン価格の上昇が止まらなくなったのは、現政権がトランプ大統領時代の政策を全て白紙にしたのが第一の原因です。実際、アメリカのガソリン価格が高騰し始めたのは、現大統領の当選が決まった2020年11月からです。

インフレを必要以上に煽る理由は?:❸インフレの元々の原因を追及していない

掘れば石油が出るアメリカと、他国からの輸入に頼らなければならない日本とでは、事情が異なります。中東に増産のお願いに行くパフォーマンスをするくらいだったら、凍結したプロジェクトを再開すれば?という疑問しかありません。

アメリカだけでなく、世界的に導入されつつあるグリーン政策により、農地や家畜を減らそうという動きがあります。食糧不足を懸念しているメディアは、なぜこれらの政策を批判しないのでしょうか?
グリーン政策の是非は別としても、少なくとも、「導入するタイミングは今ですか?」という批判はあって然るべきではないでしょうか?

メディアは、「困った!困った!どうしよう??」と煽ってはいますが、本来とるべき、そして、実行できる解決策を行わず、問題が悪化するような政策ばかりを導入している政権、もしくは政策そのものを批判しないのは何故なのでしょうか?

極端なリベラル主張に含まれた矛盾

”人口削減”というと、陰謀論のど真ん中をいくような言葉ですが、現在のアメリカの、極端なリベラル教育の中には、自然や野生動物を守るために、罪深き人間の数を減らすべきという考えも含まれているようです。一般的には、あり得ない考え方だと思います。しかし、黒人差別の歴史を踏まえ、”白人に生まれただけで罪人”と、何の罪もない白人の子どもに罪の意識を受けつけようとする人たちですから、”罪深き人間”も同じロジックなのでしょう。

ここでも、”自然や野生動物を守るために、現在の人間の数は多すぎる”という極端なリベラル派の主張について、ここではその是非を問わず、横に置いておき、インフレや食糧不足の問題を煽り続けるメディアーーその多くはリベラル思想ーーが報じていることに戻ります。世界的なインフレ、食糧不足を受け、現在、ヨーロッパで懸念されているのが、食べ物を求めた大量の移民がアフリカ大陸から押し寄せてくることなのだそうです。

つまり、今の政策を(状況が)続ければ(続けば)、真っ先に悪影響を受ける(ている)のは、リベラル派が守りたいとする弱者ーー貧困層であり、黒人ーーという問題意識をメディア自身が持っていることになります。にもかかわらず、この状況を悪化させるグリーン政策について批判しないのは、何故なのでしょうか。

矛盾に気がつかない、リベラル・エリート

超リベラルの主張は、その1つひとつは、それなりの論理があるように見せかけることができているかもしれませんが、全体として見た時に、様々な矛盾を含んでいます。しかし、多くのリベラル・エリートはこのことに気がついていません。と言うのも、過酷な競争社会の中、彼らはとっても忙しいからです。冗談のようですが、間違った仮説ではないと思っています。

アップルの故・スティーブ・ジョブスや、Facebookのマーク・ザッカーバーグは、毎日着る洋服を決めていることで、”その日に着る洋服を選ぶ時間もエネルギーも惜しんで、経営に没頭している”と言われています。そして、このような考え方を崇拝するリベラル・エリートは、少なくありません。
ここでこの考え方が正しいとか、間違っているとか、評価するつもりはありません。ただ、この考え方に異論を唱えようものなら、「成功者の考え方は、凡人には理解できない」で、片付けられてしまうことになることは容易に想像がつきます。だとすれば、それに対しては思うことがあります。ーー”多様性”を連呼している人たちが、色々な考え方があることすら受け入れられていないというのは、なんとも残念・・・っと。そして、これが極端なリベラル教育の”結果”なのだと思います。

では、その目的は?といえば、思考を停止させる教育の先にあるのは、共産化だと思います。第二次世界大戦前にアメリカや日本で共産党員が暗躍していたことは、ヴェノナ文書(アメリカとイギリスの情報機関が戦後、長い時間をかけて、旧ソ連の暗号を解読しようとしたプロジェクト)等を読めば明らかで、現在の状況は当時の状況に酷似しています。しかし、残念ながら、これらの事実は、日米ともに広く知られていません。それは戦後も共産党員が暗躍していたからです。この辺は長くなりますので、別コラムで改めて・・・と思います。

何はともあれ、今のメディア報道は様々な部分で、大きな政府への後押しをしているような気持ち悪さがあります。そうでないと言うのならば、インフレや食糧危機を必要以上に煽る一方で、それらの問題を悪化させているグリーン政策を批判しない理由が知りたいと思います。

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