名古屋から広島まで行った話3(一年目、岡山でDNF) 岡山でリタイア

二日目の朝。
だいたい6時間程度の睡眠をとって、重い身体をブートさせる。酷使を続けた筋肉が張り、固まり、鉛のような感触が全身を襲う。カーテンを開けると、どんよりした曇天。天気予報によると午後は雨、膝のり調子も……よくはなさそうな感じ。
前日にセブンで買ったパンを食べ、おなじくセブンで買った肌着類をゴミ箱に放り込む。着替えなんていらない。実家で過ごすための荷物はとっくに送ってあるしね。
早々にウエアを着てチェックアウト。なんやかんやで確か7時くらい。ゆっくりとまたがり、ビンディングを固定する。

相生から走りはじめた国道250号。赤穂から先は、ゆるやかなアップダウンがつづく海ちかくの道のり。ふだんなら、どうってことない道だ。だけど今日のおれには地獄のような坂道だった。
踏めば、痛む。
昨日痛めた右膝は、治ってなどいなかった。当たり前の話だ。一度痛めた関節が、すぐに治るわけがない。このまま走っても、悪くなることはあれど良くなることはない。

おれは、ここで完走することを諦めることにした。
そうと決めればあっさりとしたものだ。再びやってきた坂道で、おれはとっととインナーローにギアを落とす。
ゆっくりと行こう、もう膝は壊れているから。
悔しかったと思う。当時の気持ちなんてさすがに憶えていないけど悔しかったんだろうなと。だけど、だからと言って自転車を降りる気はなかった。
いまの250号もたいしたアップダウンはないし、国道2号線まで合流すれば、あとは平坦だけ。せめて岡山までは行こう。
おれはそう決めた。完走ができないなら、せめて次回につながる何かを得よう。あと輪行しながら乗り換えるのはたいぎい。

そこからはもうサイクリングだ。ぼんやりと、生まれて初めて訪れた地を走る。
国道250号は軽い丘を越え、海沿いの町と町をつなげる道。カキオコってやつが名物らしい。牡蠣入りお好み焼きってやつだ、至る所で看板を見た。
国道2号線は大きなバイパス道。そこから再び国道250号に分岐し、岡山駅方面へ。岡山県の国道2号線はバイパス区間が多く、自転車は走れない。もともと想定していた道だ。しかし岡山県やたら平坦だな。なんで山と海しかない広島の方がハッテンしたんだろうな。

岡山県庁方面で旭川をわたり、岡山城を見に行った。真っ黒な姿をバシバシ写真を撮っていたら、空の雲行きが怪しくなったので、岡山駅まで退散。サクッと荷造りして、新幹線に乗り込んだ。
年末だというのにこだまの自由席は空いていた。
おれは自転車を固定すると、座席でひとり、祝杯をあげた。走りきれなかった悔しさは、酔いによってあっさり達成感に変わった。
二日間で350キロオーバー。いままで走ったことのない場所をだ。
いままで不安でしかなかったチャレンジだが、ここまできて努力を積めば達成できるという確信に変わった。じゃあ次はどうすればいいか、明確なルートが見えてきた。
だけど、とりあえず今日は新幹線のなかで酔っ払うことにした。
疲れと、達成感と、嬉しさとなんかもういろんな気持ちが混ざって、おれはあっさりと酔いつぶれたのだった。

#自転車 #じてんしゃ

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noraosamu

いいから早く預金を下ろして自転車を買え

当面はムチャクチャな乗り方ができないけど忘備録を兼ねてとりあえずなんか書く
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