名古屋から広島まで行った話(一年目、岡山でDNF) 1.始めた経緯と準備

ファストランって言葉がある。
ロングライド、ようするにじてんしゃで遠くに行くアレの中の種類の一つだと思ってほしい。
遠いところをゴールに定めて、一定の時間で走りきるってじてんしゃの乗り方だ。
遠くに行くと言っても、キャンプ装備を抱えて走るのはツーリングになるのかな。ああいう、旅するためのじてんしゃの乗り方とは違うんだ。
目標までひらすら走り、時間までにゴールを目指す。ブルベとかキャノンボールとか、ちょっとじてんしゃが好きな人だったら知ってるんじゃないかな。アレだよアレ。

ありゃあ、じてんしゃに乗るようになって二年目だったろうか。
それまでに近所の峠道をひたすら登り、知多半島や渥美半島を周り、琵琶湖を一周したりした。
アホみたいに仕事が忙しいなかでも、休みの日は必ずと言っていいほどじてんしゃに乗っていた。
年末がさし迫り、忙しい仕事がさらに忙しくなる。業務に追われストレスが積もる毎日。だが、ひとつ希望があった。その年の年末年始、フルで休めそうだ。おれは風呂も入らず布団に潜り、年末年始の予定を考えていた。
年末年始は例年、実家に帰ってぐだぐだしていた。アイツやソイツに連絡をとってアホみたいな話をしよう。さいこうに無駄で、さいこうにたのしい時間を過ごすんだ。
酒の回った身体が重たくなる。あしたも仕事だ、ぼちぼちとやろう。意識がぼんやりとしだした。週末にはすこし時間ができるから、たまにはじてんしゃに乗ろう。そう思いながら意識が途切れるせつな、ふとある事が頭の中に思い浮かんだ。

おれ、じてんしゃで実家でかえれるんじゃないか?

キャノンボールって言葉がある 。
(https://www29.atwiki.jp/cannonball/sp/pages/11.html)
大阪〜東京(約550km)を24時間以内に走りきるという、アホみたいな挑戦だ。
おれもこういうのをやってみたかったが、残念ながらコレを走りきるだけの体力はおれにはなかった(結局その体力を作ることすらできなかったけど)。だけど、せっかくじてんしゃに乗っているんだから、やれるところまでやってみようと思った。
そう思うといてもたってもいられなくなる。しごとをこなしがてら何日かかけ、おれは準備を整えた。

まずはコースルートの選択。ルートラボ(http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/)というルート作成サイトでざっくりとルートを作る。
国道一号線、二号線経由でだいたい550km……キャノンボールと同じ距離だ。まあ200km走った経験はある。1日は無理にしても、2日もあれば走りきれるだろう。
だがルートが決まっても、それがほんとうに走れるかどうかわからないのがじてんしゃだ。軽車両進入禁止の国道はごまんとある。某掲示板のキャノンボールスレで情報を集めた。国道一号の情報があるが二号線の情報は皆無。
各県スレで情報収集を続ける。岡山の二号線がおおむね自動車専用道になっているみたいで、旧道沿いにルートを変更。
問題は県境ごえ。具体的に言うと三重の県境と姫路〜岡山間。
三重は国道一号から滋賀に行く鈴鹿越えルートと、国道25号の旧道で奈良に行く名阪国道ルートがある。距離的には奈良ルートが早いが、悪名高き名阪国道のすぐ近くを走ることと、一度も走ったことがないことから、走行経験のある鈴鹿越えのルートに決定。
姫路は国道二号からそのまま県境を越えるルートと、相生から南に向かい、赤穂を経由して再び二号線に向かうルートがある。ここはかなり迷ったけど、並走する車両のスピードが高いであろうとマップの線形から判断し、二号線ルートを除外。赤穂経由ルートを選択した。

装備も選定しないといけない。1日300km走ることを考えると、16時間は走り続けなければならない。また鈴鹿峠を凍結の可能性が低くなる8時台に登り始めるとなると、朝の3〜4時くらいに出発しなければならない。
年末の3〜4時だ。どう考えてもクッソ寒い。
ウインタージャージだけじゃあ足りないだろう。オーバータイツとハラマキ、バラクラバは必須。あと何より対策すべきは末端の冷え。グローブは厳寒仕様、シューズカバーの下にカイロを挟む(これは気分レベルの効果だったけど)。
その他の衣服は持たない事にした。ホテルで着る肌着はコンビニで買い、出るときに捨てる。残りは財布携帯と手ぬぐいと工具類、そして輪行袋だけ。なるべく軽く、そして走ってダメだったらスパッと諦める。どうせ実家に帰るんだ、疲れたら電車に乗って帰ればいいやと、無理をしない事に決める。

合間あいまの休みを使い、走り込みも繰り返す。鈴鹿峠の県境までを走り込み、全体のコースマップを頭に叩き込む(ガーミンというマップ付きサイコンもあるけど、値段的に高いのと駆動時間が読めないことから買わなかった)。0時くらいに走って装備の確認をしたり、アミノ酸や薄皮あんぱんを買ったりと着々と準備をすすめる。
あえてホテルは取らなかった。脚の具合を鑑みて、280km地点の姫路で泊まるか、320km地点の赤穂で泊まるかその時に決めることにした。

そして仕事納め。納会もほどほどに帰宅し、布団に潜り込む。
明日からは戦いだ。はやる気を抑え、深く掛け布団をかぶる。ほとんど行ったことがない所を走る。無事に着くだろうか、そしてどんな景色が待っているだろうか。不安と期待がないまぜなまま、おれは眠りについた。

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noraosamu

いいから早く預金を下ろして自転車を買え

当面はムチャクチャな乗り方ができないけど忘備録を兼ねてとりあえずなんか書く
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