イクスプロール・イクスプレス

「話って……なに?」
 きみは振りむきざま、ぼくに尋ねた。
 卒業式を終え、帰り道。あかねに染まるまっすぐな道。いつもの帰り道も今日で最後。ぼくときみが同じジャケットを着ていられる、さいごの日。
「…………えと、うん。なんでさ……出ようと、思ったの?」
 たっぷりと1分。悩みになやんで、ようやく声が出た。クラスの誰もがしたような陳腐な言葉。だけどぼくは、きみから答えを聴きたかった。
 きみが答えに悩む間、ぼくはきみの姿を網膜に焼き付けた。華奢ですらりとした腕も、困ったような形をした眉も、どこもかしこも影色に染まり、その表情ははっきりとわからない。いつも緑碧に輝く髪だけが、夕陽に照らされ、きらきらと金緑に輝く。
 そう、きみは明日この星を出ていく。「寝台列車」に乗って、「超空洞」を超え、はるかかなた銀河の先へ。海と山しかないこの星を出てきみは行く。すべての中心——————「神都」へ。

続く
#逆噴射プラクティス

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