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カミテリアさんのブランド継続に寄せて

先日、文具ブランド「kamiterior(カミテリア)」を運営されていたぺーパリー株式会社の吉澤光彦代表が急逝されました。

それを受け、同社が破産手続きに入ったという帝国データバンクの報道がありました。11月10日のことでした。


kamiterior はその名のごとく「紙を使ったインテリアのような文具」を標ぼうしたブランドです。

トレーシングペーパーでできた「tef-tef」や、クルっとまるめる伝言メモ「ku-ru-ru」シリーズなど、かわいくてユーモラスなアイテムがとても人気だったと伺っています。




そんな kamiterior ブランドがこの世から消えてしまうのは残念すぎる。

そう思っていた矢先、なんと「継続される」というニュースが今日になって飛び込んできました。当のぺーパリーさんは閉業されたというのに。


そう、日めくり付箋カレンダー「himekuri」で知られる株式会社ケープランニングさんが吉澤代表の意志を継ぎ、 kamiterior ブランドを継続して運営すると発表されたのです。

いやあ、こんなことってあるんですね。うれしいニュースです。



ここからは個人的なお話になりますが、ぺーパリーの吉澤代表にはたいへんお世話になりました。敬意を込めて「吉澤社長」とお呼びしていたのですが、とにかくお世話になりっぱなしでした。

たとえばあるときは取引先をご紹介くださったことがありました。

曲がりなりにも弊社ハイモジモジとは同じ文具を扱う競合同士のはずですが、「ハイモジさんを紹介したいから(得意先に)声かけてもいいかな」なんておっしゃって。それもリップサービスではなく、実際に取引につなげていただきました。

また、販売イベントや展示会場でもよくお顔を拝見する機会があったのですが、フランクな世間話の中にも業界に対する展望など、ためになるお言葉をたくさんいただいたことが昨日のことのように思い出されます。

最近ではメーカー有志で立ち上げた「FRAT」という合同展示会の幹部スタッフとしてもご一緒させていただいたのですが、とにかく展示会の成功とメーカー仲間の発展をめざして力を尽くされていた姿が印象的でした。




あるとき、吉澤社長はこんなことをおっしゃってました。

「kamiterior を始めたころ、ハイモジモジさんを意識してましたよ」

弊社の商品が東急ハンズさんやロフトさんで取り扱われるようになった創業当時、kamiterior の方はというと全国にある美術館のミュージアムショップで商品がたくさん取り扱われていました。

ウェブサイトに載っていた販売先のリストを眺めては、こちらはこちらで「どうやったらこんなに拡販できるのかなあ」とうらやましく思っていたものです。お互いに「隣の畑」が青く見えていたようです。

それにしても吉澤社長からすれば、僕は競合相手の若造。にも関わらず「意識していたよ」なんて包み隠さず告白されるあたり、そのお人柄がうかがえます。



2010年にハイモジモジを創業してから10年とすこし。文具界隈と関わってきて感じるのは「メーカー各社にライバル意識がほとんどない」ということです。

いや、実際には意識があるのかもしれませんが、そういう素振りはどなたも微塵も見せない。むしろ相手をアシストするような「得意先の紹介」だったり「有益な情報の共有」だったりを率先して行うようなひとたちばかりです。

どちらかといえば競合というより同志といった感じで、相手のことを気遣える温かいひとがとても多い印象です。

その象徴が吉澤社長だったと、今でも個人的に思っています。



そんな吉澤社長には食事をご馳走していただいたこともありました。神楽坂でいただいた海老の天ぷら、本当に美味しかったです。

また、台湾の販売イベントにお互い出展するとなったとき、羽田空港から台北までずっとふたりで行動したこともありました。

台北松山空港に着いてから、地下鉄に乗るためのICカードやスマホのSIMを一緒に窓口で購入し、空港内のフードコートで一緒にサンドイッチを食べ、勝手のよく分からない地下鉄に戸惑いながら一緒に乗りこみ、会場についてからも付近のレストランで昼食をご一緒しながら、とにかくずっと楽しくお話させてもらいました。

あの時間は今でも格別な思い出です。いつの間にか支払ってくださっていたお昼のパスタ代、いつお返しすればよいのですか。


あるときは幼いわが子と遊んでくださったこともありました。

とある仕事でぺーパリーさんのショールームをお借りした際、たまたま連れてきていたわが子のお相手をずっとしてくださったのです。場所を貸してくださった時点ですでにありがたいのに、競合相手の子守まで。

そうそう、帰り際には kamiterior の商品をたくさんわが子にプレゼントしてくださいましたっけ。


本当に、本当にやさしい方でした。

そんな吉澤社長の思いやお人柄がつまった  kamiterior の商品たちがこれからも販売され続けること、とてもうれしく思ってます。

心よりご冥福をお祈りいたします。


【松岡厚志 PROFILE】

ハイモジモジ代表。書類収納の決定版「WORKERS'BOX」ほか、思わず膝を打つアイデア・プロダクトを発信している。フリーライター、ネーム・デザイナー(ネーミングの専門家)、モノづくりするラジオ局「Quest FM」のDJ Atsushi、御茶の水美術専門学校非常勤講師(-2020)などの顔を持つ。

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