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文房具の無人販売は成り立つのか

以前、試験的に「文房具の無人販売」を行ったことがあります。今日はそのお話をしたいと思います。


治安のよさに裏づけられた日本の無人販売


缶ジュースの自動販売機ビジネスは「日本でしか成り立たない」と聞いたことがあります。

たしかに海外だったら、治安の悪い国によっては自販機を破壊して中のお金を取り出したり、自販機ごとトラックの荷台に乗せて持ち運んでしまう不届き者もいるかもしれません。

日本もまったくないとは言いませんが、治安のよさを背景に「無人で行われる商売」はあらゆる分野で成立しています。

自販機で言えばドリンク以外におやつが買えるところもありますし、むかしはムフフな本や明るい家族計画を推進するものも売っていました(今もあるのかな)。お湯が注がれてカップラーメンが出来上がるものもありましたね。

思えばガチャガチャだって自販機ですし、モノに限らずサービスに範囲を広げれば、コインロッカーやコインパーキング、ATMや駅の券売機も無人です。そもそも「駅員がいない駅」もあります。

そして「無人販売」と聞いて思い出すのが、野菜の無人販売。

畑のそばで人参やミカンなどが並べられていて、畑のそばで売られていたりしますよね。

ほしいものがあったらお代を置いて持ち帰る、単純明快なスタイル。店員さんはもちろん、どこにも見当たりません。


野菜で成り立つなら文房具でも


そこで僕は思いました。

「野菜で成立するのなら、文房具も無人販売できるんじゃないか」と。

そこで実際に試してみたことがあります。2013年の冬のことです。



腕に巻けるメモ「LIST-IT」(現在は廃番)や指輪になる付箋「RING-IT」、キーボードに立てる伝言メモ「Deng On」といったハイモジモジのオリジナル製品を小さなカゴに入れて、事務所の前にポツンと置いてみました。


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▲ガーランドをつけて目立たせてみたり


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▲立て看板とお代金を入れる箱を用意したり


すると、けっして人通りが多いエリアではないのですが、駅前通りに面していることもあり、目に留めてくれる人が結構いたんですね。

そうしたら、さっそく売れたんです。あれは嬉しかったなあ。


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▲貴重な売上金をネコにネコババされる瞬間


これに気をよくして、いろいろ工夫を重ねました。

クリスマスに合わせてカゴにリースをつけてみたり、「今日の文房具」と題して品ぞろえを日替わりにしてみたり。

什器もカゴから有孔ボードに進化させて、商品をカゴに入れた状態からフックで引っかけて手に取りやすくしたり。

この経緯はTwitterやFacebookでも発信していたので「もっとこうしてみたら?」といろんなアドバイスが寄せられて、みんなで実験している感じがありましたね。


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そうやって何日か続けていると、売上も少しずつ増えていきました。

小銭じゃなくて、お札が折りたたまれて入っている日もありました。


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面白い現象も起きました。

商品が売れるだけじゃなく、誰だかわからない人から差し入れが届くようになったんです。


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▲なぜか添えられていたリンゴ(美味しくいただきました)


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▲うれしいお手紙をいただいたことも


これは「商売を通じた会話」なのだと思いました。モノとお金を交換することだけに留まらない、温かい心の交流が生まれたわけです。

もしかしたら「無人」だからこそ、かえって差し入れや手紙という形で、心を乗せてくれたのかなと思いますね。


商品は盗られず、お金は支払われた


そんなわけで、大雪で中断した期間を挟んだトータル3週間ほどの実験は一旦おしまいになりました。

ずっと続けてもよかったのですが、実はこの実験、建物の管理会社にナイショで実施してたんです。

だってほら、いきなり「文房具の無人販売をしたいのでカゴを置いていいですか」なんて許可をとりに行っても、意味が分からなすぎて断られるのが関の山じゃないですか。

だったらゲリラ的に始めちゃって、叱られたらその時点で止めよう、と。

実際、叱られたわけじゃないのですが、建物の共用部分をお掃除をしてくださってる方にゴミと間違えられて、ゴミ置き場に持っていかれることが何度かありまして(笑)。「ここらで潮時かな」と、自ら幕を引きました。

ともあれ短い期間ではありましたが、結果は出ました。

文房具の無人販売は成り立ちます。いや、成り立ちました。

商品を盗られたことは一度もなかったですし、お代金も価格通りにきちんと支払われていたのがその証拠です。


SNSと無人販売は相性がいい


ただしこの実験は「無人販売というよりTwitter販売だったのではないか」というモヤモヤは残りました。

もちろん通りすがりの方も買ってくださっていました。運送会社のドライバーさんも「買いましたよ」と仰ってましたしね。

でも、Twitterでの反響が大きかったので、そこからの流入が多く、真の無人販売とは呼べないような気がしました。

とはいえ、逆に言えば「SNSと無人販売のかけ算は成立する」ことの証明でもあります。

SNSを通じてフォロワーと交流を重ね、売り手としての信用を積めば、あとは投稿を通じて販売所まで足を運んでもらって、その場で決済してもらうだけ。

うん、貴金属など換金可能なものを除けば、十分成立しそうです。


無人販売は空き家対策になるかもしれない


そして、このやり方が受け入れられるなら、「無人販売は空き家対策になる」かもしれません。

たとえば放置されている空き家を行政が買い取る(?)などして、いくばくの賃料を払って「無人販売所」として利用できれば、店員を配置することなく、モノを置くだけで実店舗の営業が可能になります。

空き家の放置は治安の悪化にもつながると聞きますから、販売者が定期的に商品の陳列に訪れれば、そうした点にも効果があるでしょう。

空室の目立つテナントだって利用できます。

ビルの1Fを路面店にするには賃料が高くて見合わないといった場合でも、上層階の空いているフロアを借りて、ショールームを兼ねた無人販売所にできるといいですよね。

そもそもお客さんは通りすがりではなくSNS経由なのですから、必ずしも1Fの路面店にしなくてもいいはずです。


信用を元にしたお店があってもいい


アメリカではAIを駆使した無人ストア「Amazon Go」がすでに始まっています。

店内に無数のカメラが設置され、誰がどの商品をカゴに入れ、どの商品を棚に戻したかまで計測されて、支払いはレジにかざさずゲートをくぐるだけ。そんな未来がもう現実になっています。

でも、そこまでじゃなくても、売り手と買い手に相互の信頼関係があれば、AIやカメラがなくても「無人販売」は成立するはずです。

そんな「信用を元にしたお店」があっても面白いなあと、個人的に思ってます。

もし将来、ハイモジモジ(HI MOJIMOJI)がそんなお店をオープンできたら、名前は「HI MUJIN MUJIN」にしようかな。


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【さいごに】

ある意味「半無人販売」とも言えるのが、オンラインショップです。ハイモジモジにも「HI MOJIMOJI STORE」という直販サイトがあります。

よかったら覗いてみてくださいね。店主の僕が寝ていても、深夜でも注文できちゃいますよ。


ありがとうございます。励みになります。