芸歴とカリスマ性との深い関係(その1)。早熟の千原ジュニア、千鳥、そして麒麟・川島明

 海外サッカーの試合を鑑賞する際、手元に欠かせないのは選手名鑑だ。どんな強豪クラブや代表チームにも、あまり知らない、馴染みのない選手は必ず何人かいる。年齢や国籍などがパッと見では判別しづらい、そうした選手が目につけば、選手名鑑やネットなどで経歴や特徴(プレースタイル)をその都度調べるのが個人的な習慣になっている。

 お笑い芸人で言えば年齢と芸歴、そして所属事務所。芸人の所属事務所をあえてサッカー選手に当てはめれば、国籍に近い感じだ。コンビやピンにかかわらず、どんな芸人にもその所属する事務所の雰囲気や色(カラー)を少なからず感じることはできる。全くの無味無臭という芸人はほぼいない。

 海外のサッカー選手(特に欧州)には、異なる複数の国の国籍を持つという選手が数多くいる。ユース時代とフル代表ではそれぞれ異なる国の代表としてプレーした、という選手もザラだ。
 お笑い芸人に置き換えるならば、デビュー時や養成所時代に所属していた事務所と、いま現在所属している事務所が異なるという芸人になる。こうした芸人は思いの外、最近多い気がする。実は意外に長い芸歴の持ち主だったのかと、初見ではわからなかったときなど、思わず気に留めてしまう場合が多々ある。

 最近で言えば、ヤーレンズがまさにそれだった。現在はケイダッシュステージに所属する彼らだが、その出身がNSC(吉本総合芸能学院)であることを知ったときは少々意外だった。それも東京校ではなく大阪校。ボケ担当・楢原真樹がNSC大阪校28期で、ツッコミ担当・出井隼之介がその1期下のNSC大阪校29期。バリバリの大阪吉本出身である。これほど関西色を感じさせないコンビも珍しいとは率直な印象だ。

 年齢は両者ともに現在37歳の同い年だが、芸歴では楢原の方が1年先輩になる。養成所時代の同期はすゑひろがりず、稲田直樹(アインシュタイン)。その他ではハライチ、チョコレートプラネット、シソンヌ、向井慧(パンサー)などが芸歴では同期にあたる。一方の出井と養成所時代の同期、その出世頭は見取り図だ。その他ではジャングルポケット、ジェラードン、ランジャタイといった人気者たちと同じ芸歴になる。

 昨年末のM-1グランプリでの活躍によっていままさにブレイクの兆しを見せているヤーレンズだが、その芸歴や同期にあたる芸人たちの名前を眺めると、彼らの実力に思わず納得する自分がいる。なんというか、ネタやトークに独特の深みや味わいがある。
 あのニューヨーク(2010年デビュー)よりも3〜4年、先輩にあたるわけだ。最近売れた芸人の割には、あえてどちらかと言えばベテランの部類に入る。いわゆる第七世代では全くない。いきなり露出が増えたばかりにもかかわらず地に足がしっかりついているように見えるのも、実は長いその芸歴と深い関わりがあるとは筆者の見立てだ。

 売れるまでに時間を要したヤーレンズだが、ここから先は、そこまで時間はかからないのではないか。そんな気がする。繰り返すが、2人とも芸歴はそれなりに長い。近年売れた同年代の芸人たちのなかでも先輩のほうだ。先ほど名前を挙げた見取り図やニューヨークの世代、そして霜降り明星や令和ロマンを筆頭とする若手の世代に対しても、上から目線ではないが、それなりの先輩顔ができるわけだ。(ヤーレンズより)先に売れた見取り図やトム・ブラウンらと対等に絡むその姿を見ていると、芸人特有の頼もしさを感じずにはいられなかった。

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