キングオブコント2023準決勝直前。気になるグループ目白押し、今年のダークホースは誰だ

 9月20日、21日に行われるキングオブコント2023準決勝。ここまでの戦いは順当だっのか、それとも波乱が多かったのか。準々決勝までの予選の模様に目を通していないので準決勝に出場する顔ぶれだけを見てもなんとも言えないが、ハッキリと言えることは、ここまで残ったことにまず大きな価値があることだ。調べたところ今回のエントリー組数は過去最多を更新する3036組だという。そのなかでこの準決勝まで残ることができたのは僅か35組。この数字だけ見てもその凄さは伝わるが、準決勝のひとつ前、準々決勝に出場したグループの名前を見ても、準決勝に勝ち上がることの難しさやその価値は十分把握することができる。

 今回準決勝に勝ち上がれなかった(準々決勝で落選した)グループ。現在公式サイトにあがっている準々決勝の結果に目をやれば、そこには過去のファイナリストやテレビで活躍が目立つ売れっ子芸人がゴロゴロいる。

 昨年ファイナリストのネルソンズ、いぬ。一昨年ファイナリストのジェラードン、マヂカルラブリー。過去に2回以上の決勝進出経験があるGAG、しずる、だーりんず、わらふぢなるお、ゾフィー、バンビーノ、アキナ、モンスターエンジン。その他にも売れっ子の3時のヒロイン、EXIT、ラランド、ぼる塾や、数年前から決勝進出が期待されていたトンツカタン、金の国など、多くの有力者が落選の憂き目に遭っている。この落選者の顔ぶれを見るだけでも、今回の準決勝進出グループが輝いて見えてくる。

 そうした落選者の中でも個人的に意外というか、その名前を見つけて少々驚かされたのは、マヂカルラブリーと3時のヒロインの2組。両者ともすでに賞レースでの優勝経験を持つ言わずと知れた売れっ子芸人だ。いわば特段キングオブコントに出場しなくても大丈夫なランクの芸人。にもかかわらず、コントの猛者が集うこの大会に参加するその姿に格好良さを感じるのは僕だけだろうか。2年前の決勝進出を含め、M-1グランプリとの2冠を目指したマヂカルラブリー(野田クリスタルはR-1ぐらんぷりを含む3冠)。そして、女性グループでは初の決勝進出を目指した3時のヒロイン。この2組が決勝に進出する日ははたして今後訪れるのか、期待したい次第だ。

 話を今回の準決勝に戻そう。ここまで勝ち残った35組のなかでまず触れておきたいのは、いわゆる今大会の有力者、優勝候補と見られるのは誰なのか、だ。もちろんお笑いに関することなので人によって意見は異なるだろうし、自分の見解と世間との感覚に大きな隔たりがある場合もあるが、この欄では筆者独自の視点でその候補者を選んでみることにしたい。なお繰り返すが、これから以下で述べることは、ここまでの予選の模様などには一切目を通していないなかでの、筆者独自の見解である。

 今大会の優勝候補と目されているのははたして誰か。準決勝進出者の顔ぶれを見てまず目に止まったのは、前回大会の準優勝コンビ、コットンだ。昨年行われたキングオブコント2022。優勝を飾ったのはビスケットブラザーズだったが、大会後に最も飛躍を果たしたグループはと言われれば、間違いなくこのコットンになる。それまで実力はありながらも大きな賞レースではなかなか結果が出なかったコンビだが、前回の準優勝によりその魅力が一気に開花。なんなら優勝したビスケットブラザーズよりもむしろ売れてしまった。今年4月からはヒルナンデス!のレギュラーに抜擢されるなど、現在もなお飛ぶ鳥を落とす勢いにある大本命の実力派コンビだ。
 こうしたコンビの場合、前評判の高さが仇になるという場合も少なくないが、コットンの場合こうした心配は少なそうに見える。何よりネタが安定している。ややオーソドックスであるが、細部にエッジが効いていて思いの外ネタに新鮮味がある。現在の勢いも含め、優勝候補の筆頭と見ていいだろう。

 前回大会でそんなコットンに次ぐ3位という成績を収めたのは、SMA所属の苦労人トリオ・や団だ。2位・コットンとの差は僅かに1点だったにもかかわらず、この両者のその後のブレイク度合いにはそれこそ天と地の差がついた。一気に売れっ子への階段を駆け上がったコットンと、地味な露出に止まってしまったや団。とはいえ、前回や団が決勝で披露したネタは2本とも審査員が絶賛するそれこそ文句なしの出来栄えだった。過去の大会であれば優勝に値するネタだったとは前回大会後にこの欄で記したが、その良いイメージは今もまだ残っている。前回級のネタを2本用意できれば、今回も好結果を狙えると見る。もう一度決勝で見てみたいグループの1組だ。

 その他で有力に見えるのも、やはり直近のファイナリスト組だろう。蛙亭、かが屋、ザ・マミィ、男性ブランコ、ニッポンの社長、ロングコートダディ……。ここ最近のファイナリストでなおかつ知名度が高そうなのはこの6組。この中から少なくとも2組くらいは決勝に進出しそうな気がするが、どのコンビもいまのところそこまで絶対的なムードは特段感じない。だが強いて挙げるとするならば、ザ・マミィだろうか。2年前の準優勝コンビだが、前回は準決勝敗退。とはいえ、芸人としての勢い、そのパワーは決して衰えてはいない。むしろ次の機会に備えて力を蓄えてるような感じさえする。令和の新たなリアクション芸人でもある酒井のキャラもいまやいい感じで世間に浸透している。こうした上昇気流にある芸人を擁するコンビには、どことなく良いムードを感じる。再び決勝での爆発を期待したいコンビだ。

 また男性ブランコもそう悪くなさそうな、どことなく良さそうなムードにある気がする。前回大会はまさかの準々決勝敗退。それにより2年前の準優勝(ザ・マミィと同率)という結果も一気に吹っ飛びそうな気もしたが、その直後に行われたM-1で決勝進出を果たしたことにより、好調をキープすることに成功。結果は惜しくも4位ながら「音符運び」というネタで独特な存在感を見せたことは記憶に新しい。いまや例の「音符運び」のネタが彼らの代表作的な感じだが、元々男性ブランコはどちらかと言えばコントが得意なコント師だ。狙っているのはおそらくM-1よりもこのキングオブコントのほうだろう。ここ2年の活躍で、おそらくそれ相応の自信をつけたと見る。優勝の匂いが少なからず漂うコンビの1組だ。

 では前回ファイナリストのニッポンの社長、ロングコートダディはどうかと言えば、今回は上位進出がやや難しいのではないかとは筆者の見解だ。両者ともに実績十分の実力派だが、最近増えているその露出の多さが逆に足枷になりそうな気がしてならないのだ。賞レースでの活躍が続いているが故に新鮮味に不足している。期限切れというわけではないが、今回はタイミングが悪そうな気がする。実力的にどちらも優勝候補だけに、準決勝でのその仕上がり具合にとくと目を凝らしたい。

 前々回ファイナリストの蛙亭、そして前回ファイナリストのかが屋も、個人的には優勝しそうな匂いは感じない。その実力は認めるが、これまでの彼らのネタを見て思うのは、なんというか、スタイル的にこうした大きな賞レースにはあまり合っていない気がするのだ。ネタが少し小難しいというか、大衆向きではないというか、少なくともキングオブコントの優勝向きではない。個人的にはそんな気がする。

 では直近のファイナリストのなかで今回期待したいのは誰か。個人的に真っ先に挙げたくなるのは前回決勝でトップバッターを務めたクロコップになる。そのネタの感想は昨年の大会直後にこの欄でも詳しく述べているのであえて割愛するが、もう一度決勝で見たいコンビを挙げろと言われれば、筆者は迷わずこのコンビを推す。前回のネタをさらに超えるような面白いネタを期待したくなる。
 また前々回のファイナリスト、そいつどいつも個人的には余力がありそうに見えるコンビになる。2年前の決勝進出によって大会後多少なりとも露出は増えたが、先述のクロコップ同様、その後は特段目立った活躍はできずにいる。だが逆に言えば、まだあまり消費されていないフレッシュな状態をキープすることができているので、うまくハマれば爆発する可能性は高い。注目しておきたいコンビの1組である。

 と、ここまでは決勝進出経験のある有力候補について述べてきたが、そのなかでも最も有名なグループについて触れないわけにはいかない。準決勝を戦う35組のなかで芸人として売れている期間が最も長いグループ、ジャングルポケットは優勝候補に入らないのか。知名度だけでいえばもちろんダントツだろうが、少なくとも筆者の予想する優勝候補の中に彼らは入っていない。理由は先述のニッポンの社長やロングコートダディと似ている。
 有名すぎること。その正体があまりにも世間にバレすぎていること。あえて厳しく言えば、優勝を狙うにはすでに賞味期限切れだと僕は思う。100点ではなく120点のネタでなければ現在のジャングルポケットに優勝は不可能、とは筆者の意見だ。
 とはいえ、だ。決勝でいまの彼らと審査員たちとの絡みを見てみたいのもたしか。仮に今回もしジャングルポケットが決勝に進出したら、たぶん松本さんが斉藤のスキャンダルに触れるに違いない(THE SECONDでテンダラー浜本をイジったみたいに)。個人的にはその模様を拝んでみたい気がする。

 その他のファイナリスト経験組のなかで目を凝らしたいのは、ななまがりと滝音。どちらもこの辺りでそろそろ爆発してもおかしくない実力派。両者のうちのどちらかはそろそろ決勝で見てみたい。それとあともう1組、ラブレターズも不気味な存在に見える。仲の良いウエストランドの活躍に触発されたとしたら、気合いを入れて再び決勝に進出してくる可能性はありそうだ。

 とまあ、ここまではファイナリスト経験のあるグループについて述べてきたが、ここからはまだ決勝に進出したことのないグループのなかで個人的に期待したいグループについて述べていきたい。

 まず挙げたくなるのは天才ピアニストだ。昨年のTHE Wで優勝を果たした女性コンビ随一の正統派。大会史上初の女性グループの決勝進出に最も近いコンビとはこちらの見立てだ。THE Wの優勝は正直なところ周りのライバルが弱かったという面がなきにしもあらずだったが、キングオブコントのファイナリストとなれば文句は言えなくなる。その実力が本物であることのなによりの証になるだろう。

 また、同じく実力を証明したがっているコンビに見えるのは、女装コントでお馴染みのレインボーだ。テレビの活躍は現在それなりに目立っているが、大きな賞レースでのファイナリストの経験はいまだ無し。この辺りでそろそろ結果が出てもおかさくなさそうに見える。

 目に見える結果を欲しがっていそうなグループはまだいる。この準決勝進出者の一覧を最初に見た時、目に止まった名前はダウ90000になる。筆者が彼らの存在を初めて知ったのは2年前のM-1の予選なのだが、それ以降ジワジワとその存在感が増している点は見逃せない。「ついにここまできたか」とは、準決勝進出者のなかに彼らの名前を見た瞬間抱いたこちらの感想。最終的に何人ネタに登場するのかはまだわからないが、もし決勝に進出を果たせば間違いなく過去最多人数のグループになるだろう。芸人全盛のキングオブコントの歴史に風穴を開けることはできるのか。準決勝では目の離せないグループの1組に違いない。

 その他で異色なグループと言えるのが、即席ユニットでもある5人組、連合稽古だ。公式サイトでこの名前を見たときはてっきり正体不明のダークホースだと思っていたが、その正体は個人的には意外なタイミングで判明した。先月放送された『”日本でいちばん明るい賞レース”耳心地いい-1グランプリ』を見ていたら、そのファイナリストしてこのユニットが画面に現れたからだ。ユニット名の通りメンバーは皆、相撲に縁のある芸人で固められている。先述の番組でもいわゆる相撲に関するネタを披露していたが、このキングオブコントでもおそらく同じスタイルだろう。王道ではなく、俗にいう色物的な扱いにはなるだろうが、それでも準決勝進出が立派な成績であることに変わりはない。そしてできれば決勝でもその姿を見てみたい。
 メンバーの顔ぶれ的にこのユニットの頭脳と言えるのは、おそらくキンボシの西田ではないか。芸人界ナンバーワンの相撲マニアとも呼ばれる西田たが、個人的にキンボシ・西田で思い出すのは、2017年に放送されたアメトーークの「相撲大好き芸人」になる。筆者が彼の存在を初めて知ったのもこの時になるが、そこでキレのあるトークを見せていた西田の姿は今もこちらの記憶に鮮明に残っている。その喋りを見れば芸人としてそれなりに力がありそうなことは見て取れたが、形はどうあれ、ようやくここまで辿りていたという感じだ。また、水曜日のダウンタウンでもお馴染みの相撲芸人・あかつがキングオブコントファイナリストとしてダウンタウンの目の前に現れるのも面白いと言えば面白い。ダウ90000同様、今大会のダークホースになるのかどうか、目を凝らしたくなるユニットの1組だ。

 さすがに35組全て詳しく述べることは難しいのである程度は割愛させていただくが、最後に触れておきたいのは、こちらがその正体を全く知らないグループについて。以下はそのグループ名になる。

 えびしゃ、シティホテル3号室、伝書鳩、都トム

 「どなたですか?」とは名前を見た時の率直な感想だ。これまでの予選の模様を見ていないのでなおさらにその正体は不明。筆者にとってはいずれもこの準決勝でその姿を見るのが初めてのグループになる。ダウ90000や連合稽古とは同じダークホースでも意味が違う。こちらの方がそのダークホース度は明らかに上だ。もし上記の4組のなかから1組でも決勝進出を果たせば、それはまさに番狂わせ以外のなにものでもない。

 個人的には大人数のダウ90000か、もしくは即席ユニットの連合稽古が決勝に進出すれば面白いと思うが、はたして波乱は起きるのか。準決勝が楽しみだ。

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